軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

164話:水底探査4

封印図書館に潜って三日、僕は通いだけど、テスタたちは封印図書館から夕方追い出してそのまま島に宿泊していた。

十人分も寝具なんてないのにテント持ち込んだりでそのまま。

そして三日目に帰ると、屋敷に国王からの伝言があった。

「やはり専門的なところとなるとどうも怪しく、直接説明を聞きたいもので。…………申し訳ない」

僕を呼んだルキウサリア国王がまず謝るけど、これはたぶん別の意味もある。

セフィラの存在が露見した日は仕切り直しのため即座に撤収。

翌日には、事情を知るノイアンとネーグに説教されたテスタが平身低頭謝り、事情を知らない部下たちもテスタが僕を怒らせたらしいと知って全員で頭を下げていた。

テスタは一人封印図書館出禁にしたけど、一度は振った手漕ぎ馬車の改良はノイアンとネーグを筆頭に続けさせてる。

ルキウサリア国王の様子から、王城の学者であるネーグ辺りから報告を受けていたんじゃないかな。

それで僕を怒らせたことを重く見た上で、対応を決めて今日呼ばれたわけだ。

僕も引き受けたからには、投げ出すなんて大人げない真似はしない。

けど、信頼に値しない相手に親身になる気もないことは、テスタたちに言ってある。

まぁ、僕にルキウサリア王国の人間を罰する権限なんてないんだけどね。

「今後は城から専用の連絡員を配置する。そして日誌の提出を義務付けることとする。その日誌の内容の精査を、第一皇子殿下にもお願いしたい。殿下自身が習得された錬金術については詮索をしないが、その旨記載していただければこちらも対処ができる」

「それがいいでしょう。承りました」

人を増やすという最初の忠告を重んじるからこその確認。

そして報告内容は僕に任せるということから、セフィラのことは知ってるのか知らないのか。

セフィラのことを問題にして困るのは、実は僕なんだよね。

存在だけでもう痛くもない腹を探られること間違いなし。

だから個人で活用する以外にしてなかったのに、本当にテスタはやってくれたよ。

父にも知らせてないから、絶妙に表ざたにしにくいところを突いて来てる。

「それでは本題をよろしいですか?」

僕としては封印図書館のことはついでで、本題は、ルキウサリアを目指す旅の中で起きた誘拐未遂事件についてだ。

ルキウサリア側からも受験者が襲われたということで、調査員が派遣され、戻ったと言われている。

「…………うむ、ではまずはこれを」

まだ何か聞きたそうだけど、ルキウサリア国王は合図した。

すると一枚の報告書を持ってレーヴァンが現われる。

封印図書館行きたくないってこっちで働いてるのは知ってたけど。

目を通すと僕たちが発った後の進展と、帝都から派遣された調査員の同行、そして持ち帰った裏事情が記載されていた。

「誘拐未遂の犯人も、誘拐されて脅されてた?」

「そのようだ。すでに亡骸は埋葬されたと報告がある」

ルキウサリア国王は調査員から詳細に報告を受けたそうだ。

それでわかったのは、実行犯の夫妻の娘が誘拐されていたこと。

数日前に、娘と一部使用人がいなくなっていたらしい。

身内同然の上級使用人一人だけが夫妻から事情を聞かされていた。

聞き取ったところ、使用人として紛れ込んだ犯罪者による息女の誘拐が起こり、命と引き換えに脅されて見も知らない令嬢を誘拐しようとしたという。

「結果は、第一皇子殿下のご存じのとおりだが」

娘の代わりに見ず知らずの令嬢を攫うというその重圧に耐えかねて、妻は自決。

捕まった夫は、娘の命を人質に取られていて助けを求めることもできず殺された。

そして夫妻が失敗したことで捕まっていた娘も始末されていたそうだ。

「ファーキン組…………。嫌な名前だね」

夫妻を脅した犯人と目された犯罪組織の名前には見覚えがあった。

「三年前で懲りずにいたわけだ」

「殿下、言っておきますけどそれあくまで予測なんで、サイポール組のようなことしないでくださいよ。無理ですからね。本当やめてください」

サイポール組の時いなかったのにレーヴァンがうるさい。

何か気づいたような顔したルキウサリア国王が、僕をすごい目で見てるしやめてよ。

(まぁ、また帝都でやらかす気みたいだし潰すけどね。犯罪者ギルド作った犯罪組織なんて碌なもんじゃない)

(封印図書館にある破壊兵器の試用を推奨)

僕はセフィラの爆弾発言で、冷水を浴びせられたように冷静になれた。

(却下。よく考えよう)

(軍に匹敵する戦力であると推薦)

(推薦しないで。駄目です。秘密なんだから)

(全ての口を閉じさせれば)

(無理だから! その提案は禁止)

いくらスマホやネットがない世界でもミサイルを放てば目撃者と爆心地ができる。

どう言い訳するのか、いや、いっそ丸無視で知らぬ存ぜぬのつもりなの?

ともかくセフィラは巻き込まれる人のことなんて考えていなさそうだから全却下。

これ以上言わせないようルキウサリア国王に水を向けた。

「ファーキン組の本拠地は帝都から遠く、北西のはず。あの領地は遠い。支部か何かあるのでしょうか?」

「犯罪者ギルド作った組については調べてるらしいんで」

僕が聞くとレーヴァンがルキウサリア国王に補足して前置きはいらないと教える。

「ファーキン組は犯罪の都度構成員を組ませて人を送り込む形で悪事を行う。今回も人員だけ送り込んだものと思われるそうだ」

「あぁ、一連の事件でも起こす犯罪ごとに人員別けるってそういう」

犯罪者ギルドを作った四つの組の一つ、ファーキン組。

帝国国内に本拠地を持っていたサイポール組は今、帝国軍に包囲されてる。

他三つは帝都から手を引いて本拠地のある帝国国外へ消えたはずだった。

だから手を出せなかったんだけど、どうやら帝国内部で犯罪を犯すつもりらしい。

関与確定じゃないからこれ以上は無理ってレーヴァンは言うけど、死人が出ているんだからこのままで済ますなんて納得できない。

それでも実行犯の顔を知ってるのは、当主が犯罪を目論んでの死んだ家の使用人のみ。

誰が調べるかってなった時、音頭を取るべき者がいない。

未遂で良かった、警戒を厳にしよう、それで今回の件は終わらせるようだ。

「…………何を目論んでたかまでは知らないんですよね?」

「誘拐されたことのみとなる」

夫妻から事情を聞いていた上級使用人も、何故令嬢を狙うかは聞かされておらず、きっと夫妻も知らないだろうと。

帝都からの調査員は、狙われた令嬢の親のほうにあたって調査を継続するそうだ。

「ルキウサリアとしては?」

「ご令嬢は受験合格している。このまま国内で春を迎えて入学を勧める予定を聞き取った」

「それが安全でしょうね」

一行の中には合格したら、そのまま滞在して入学準備をする者もいる。

僕やソティリオスのように、すでにルキウサリア国内に屋敷を持っていて、独自に馬車を用意できるところは春にもう一度来る予定だ。

令嬢は戻る組だった。

家が上流だと、帰って合格記念パーティとかするんだって。

道中も合格者は知り合いの貴族がいると挨拶回りするんだとか。

そのために僕はテリーと日程の調整をするという役割もある。

もちろん基本は守る側の兵たちが立案して、それを確認して裁可するという形。

だからそこまで手間ではないけど、偉い人はこういう作業が積み重なるんだと思うと大変そう。

「ご令嬢についての安全は?」

「もちろん、学園入学決定なら準学生という待遇でこちらが責任を持って」

学園から発展した街は壁に覆われている。

というのも山から魔物が現われることもあるためらしい。

これによって外部からの侵入経路は限られる。

その上学園関係者がほとんどを占める中によそ者が滞在すると目立つ。

さらには街の出入りも学園か学生の関係者のみで、何処で何をするか、どれくらい滞在するかなど街に入る時点でもろもろ記録される。

人員を派遣する形のファーキン組とは相性が悪い場所と言えるだろう。

「となると、やっぱり主眼は帝都か」

夫妻は令嬢を誘拐するためだけに巻き込まれた。

そしてやり方から令嬢を誘拐した上でその親である外交官を動かす算段だろう。

外交官は今帝都にいる。

だから狙いは本国ではなく帝都にいることに利点のあること。

それで言えば帝都は出入りが激しく、各国から常に人が送り込まれる。

ルキウサリアの学園ほど難しくはないのに、娘を誘拐してまで何を狙うのか。

「外交官は帝国の調査員があたります。今のところ殿下にやることはないですからね」

レーヴァンが何やら釘を刺して来た。

それを聞いてルキウサリア国王も頷く。

その上でこちらを窺うように愛想笑いを浮かべた。

「第一皇子殿下、急いで帝都に戻る理由もないようであれば、どうだろう? 春まで滞在をしていただくことを検討されては?」

「それ、テスタをどうにかしないと根本的にはなんの解決にもならないでしょうね」

僕も愛想笑いで返すと、ルキウサリア国王はレーヴァンを窺う。

当のレーヴァンは、テスタがやらかしたことを聞いてるのか、ルキウサリア国王に向かって首を横に振ってみせた。

「珍しく怒ってます」

人員制限言い出したのは僕だけど、テスタ指名したのはそっちなんだから、そっちでも手綱は握ってほしいだけなんだけど。

まぁ、やらかしを知った上でどう対処するかはお国の事情だ。

「…………対処を必要とする者は、テスタ老、とその第一助手、そしてエーシス子爵で間違いないだろうか?」

あ、これって口封じ込みかな?

「何もなかったと言うならそれでいいです」

「…………承った」

なんだかすごく重々しく返されたけど、もう面倒だから裏は考えないことにした。