軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#521 撃破、そして火事場泥棒。

超巨大なゴレムから分離し、数機の巨大なゴレムに分かれたギガンテス。

頭部は戦闘不能らしいので、胴体上、胴体下、上腕部×2、前腕部×2、大腿部×2、下腿部×2の計十機のゴレムとなった。

まさかオーバーロードと同じ合体ゴレムだったとは。

分離して小さくなったから戦いやすくなったかと思えばそうでもない。分かれた十機の機体はフレームギアよりもかなり大きい。一機一機がオーバーロードと同じくらいだ。

その中でも胴体上と胴体下は大きい。高さはそこまででもないが、横に太いというか。

これ全部の機体に動力源があり、頭脳であるQクリスタルがそれぞれあるわけか。それを統率していたのがあの頭部パーツで、それを壊されてしまったから分離せざるを得なくなったのかな?

『向こうも十機、こちらも十機。ちょうどいいかもしれんでござるな』

八重の楽しそうな声がスピーカーから聞こえてくる。え、 一対一(タイマン) でやるってこと?

『ならあの一番でっかいのはボクがやるよ! いいよね?』

オーバーロードに乗ったアリスが両拳を合わせてゴンゴンと叩く。一番デカいのとは胴体上、胸部ゴレムのことだろう。大丈夫か? さっき必殺の【キャノンナックル】をアレに防がれたばかりだろ。

しかしあれはこちら側で一番大きなオーバーロードが相手をするのが得策だと言える。打撃は通りにくいかもしれないが、オーバーロードの武器は【キャノンナックル】だけじゃないし、たぶん大丈夫……と思いたい。

『まずは弱そうな一機を多数で倒しましょう。そしてそのあとに分散し、何人かで一機ずつ確実に仕留めていった方が楽かと』

ユミナの言いたいことはわかる。一機ずつ確実に減らし、数の点で有利にしようってんだな?

少年漫画なんかだと五対五なんかで戦うとき、一対一でバラバラにそれぞれ対戦、なんて展開があるが、乱戦なら五対一で一人を狙って確実に潰し、五対四にした方が確実だ。もちろん相手もそれを狙ってきたりするので、いち早く相手側の一番弱いやつを見極める必要がある。

そして狙うべき相手の機体は左右大腿部の二機。あいつらだけ他の機体に比べると、かなりスリムなんだよね。

元のギガンテスが足が短い感じだったし、わからないでもないのだが。巨体を支えていた部分の一つだから意外と硬いのかもしれないけど。

『とりあえず先手必勝ですね』

ユミナのブリュンヒルデが、ジャキッとスナイパーライフルを大腿部ゴレムの一機に向けて構える。

『相手の射程範囲外からこちらの攻撃を一方的に与えるってわけね』

リーンのグリムゲルデの肩、脚、胸の装甲が開き、多連装ミサイルポッドと二連バルカン砲が現れる。右腕のアームガトリング砲と左手全指の五連バルカン砲をユミナと同じ大腿部ゴレムへと向けて、 一斉射撃(フルバースト) の体勢をとった。

『ならば一気に決めてしまいましょう』

ルーの乗るヴァルトラウテが大型キャノン砲を装備したCユニットへと換装し、その大砲を前の二人と同じく大腿部ゴレムへ向けたまま、ロックオンする。

『『『 発射(ファイア) 』』』

一斉に何百発もの銃弾が発射され、大腿部ゴレムの片方が蜂の巣になる。胸部ほどの装甲を持たないらしい大腿部は、装甲がバラバラに吹っ飛んでその場に後ろ向きに倒れた。

それに反応し、残りの九機がすかさず動き出す。大きく分けて防御姿勢をとる機体と、移動して動き続ける機体、そして反撃してくる機体だ。

上腕部の二機は遠距離攻撃を持っているようで、ギガンテスの時に肩であったパーツからミサイルポッドをこちらへと向けて撃ち出してきた。

ユミナたちもこれに反応して散開し、ミサイルの雨を避けていく。

その間に集中砲火を浴びた大腿部ゴレムが立ち上がったが、装甲が剥がれ落ち、体の各部からもくもくと煙とも蒸気とも思えるものを吹き出している。あれだけの弾を受けてまだ機能停止していないのか。なかなかにしぶとい──。

『【キャノンナックル】!』

な、と思った次の瞬間、アリスの乗るオーバーロードから放たれたロケットパンチを浴びて、大腿部ゴレムは無残にもバラバラに砕け散った。

さすがにあそこまで破壊されては再生などできまい。

これで残り九機か。

『もう一機も潰しましょう』

ユミナの言葉に再び遠距離攻撃の三人組がもう一機の大腿部ゴレムに集中砲火を浴びせる。トドメに今度は上空からリンゼのヘルムヴィーゲが飛び込んできて、その翼に仕込まれている晶材のブレードで、細い大腿部ゴレムをすれ違いざまに上下真っ二つに切り裂いた。

これで残り八機。

上腕部の二機が上空を旋回するヘルムヴィーゲへ向けてミサイルを発射する。

その弾幕の雨の中を、リンゼのヘルムヴィーゲはひらりひらりと全て紙一重で躱して飛び続けた。いつの間にあんな操縦技術を……。どこかのエースパイロットかよ。

そういえば新婚旅行で地球に行ったとき、アミューズメント施設でシューティング系の体感ゲームを簡単にクリアしていたっけ。

『あのミサイルを撃つ奴はヒルダ殿と拙者でお相手いたそう』

『そうですね。適材適所かと』

八重のシュヴェルトライテとヒルダのジークルーネが上腕部の二機へと向けて駆けていく。

上腕部の二機はミサイルポッドを背負い、腰にガトリング砲、肩の両サイドに大きな盾と、見るからに遠距離支援型なのがわかる。一応槍のようなものを持ってはいるが。

懐にさえ飛び込んでしまえば白兵戦に強い八重たちの方が有利だろう。普通なら弾幕をどうにかするのは無理っぽいところだが、二人なら可能だと思う。飛んでくる弾を打ち落とすくらいだからさ……。

『前腕の二機はどうします?』

『動きは鈍そう。でも硬そう』

ユミナに答えた桜の言う通り、前腕部の二機は両拳のパーツだけあってなかなかにゴツい印象を受ける。ずんぐりとしていて、装甲が厚そうだ。

『あたしやる! 二機ともエルゼおかーさんのパイルバンカーで砕くよ! いいよね、おかーさん!』

『いいけど……。桜ちゃん、サポート頼める?』

『ん。わかった。リンネを守る。断言する』

どうやら前腕部の二機はリンネのゲルヒルデと桜のロスヴァイセが相手をするようだ。

確かに桜のロスヴァイセならシンフォニックホーンから繰り出す共振攻撃であの分厚い装甲を脆くすることができるかもしれない。

そんなリンネを見て触発されたのか、アリスがビシッと胸部ゴレムを指差した。

『ボクはあのでっかいのをやる!』

「ならエンデは二番目に大きいのだな」

『ちょっと!? なに勝手に決めてんのさ!?』

僕の言葉に反応し、スピーカーからエンデの反論の声が上がってきた。うるさい。お前もロスヴァイセと同じく共振攻撃ができるのは知ってるんだからな。面倒くさそうな機体に割り振るのは当然だろ。

「アリスだってお父さんがかっこよく敵を倒すところを見たいよなぁ?」

『うん! 見たい!』

『そ、そお? ならお父さん、頑張っちゃおうかな〜』

チョロい。デレデレとしたエンデの声を聞いて心底親馬鹿は使いやすいと思った。えっ? 人のこと言えるのかって? ははは、あんなのと一緒にしないでくれたまえ。

さて、そうなると残りのユミナ、リンゼ、ルー、リーンで下腿部の二機を相手にするわけか。

下腿部の二機は見るからに白兵戦用といった形で、両腕に反り身の大剣を装備していた。剣を持っているのではない。両腕が剣なのだ。

機体の大きさはオーバーロードほどではないが、フレームギアの機体よりは大きい。

二対四だとはいえ、ユミナたちの方はほとんどが遠距離支援型だ。相手を近づかせないように、自分たちとの距離をしっかり保つことが戦いの鍵となるだろう。

『いくよーっ!』

さっそくとばかりにリンネのゲルヒルデが前腕部ゴレムの片方へ向けて駆け出した。

追いかけるように桜のロスヴァイセから歌唱魔法が放たれる。

…………え、なんでこの曲?

有名なアメリカのロックバンドの曲だが、これ確か歌詞の内容は、高校の時に憧れた女の子が男性誌のピンナップページに載っていてショックを受けた、ってやつなんだけど……。

桜も世界神様からもらった結婚指輪をしているから、歌詞の英語も理解できていると思うんだけどな……。

ロスヴァイセから放たれた共振攻撃の衝撃は凄まじく、前腕部ゴレムの装甲に細かな亀裂を生み出した。

『ひっさーつ! パイル、バンカー!』

前腕部ゴレムの懐に飛び込んだリンネのゲルヒルデが晶材装甲の右拳を放った。間髪入れずに腕に仕込まれたパイルバンカーが打ち出され、ひび割れた敵の装甲を穿つ。

一撃でガラガラと機体前面の装甲が剥がれ落ち、薄い内部装甲が丸見えとなる。

『もう一発っ!』

今度はゲルヒルデの左の拳が唸る。ドン! ガァン! と立て続けにパイルバンカーが打ち込まれ、薄い内部装甲を貫いた。前腕部ゴレムがガクガクとまるで痙攣するかのような動きをし、前のめりに倒れる。

サッと避けたゲルヒルデの前に倒れた前腕部ゴレムはそのまま動きを停止した。一撃かよ。いや、二撃か。

『もう一機!』

ゲルヒルデがもう一機の前腕部ゴレムに向かおうとすると、そいつは背中に装備(?)されていたギガンテスの左手をロケットのように射出してきた。

『わっ!?』

慌てて避けようとしたリンネだったが、わずかに遅く、巨大なその左手に捕まってしまう。

むっ、ヤバいか!? 助けに行かないと……! と、僕が前のめりになった時、桜のロスヴァイセからダガー型の 飛操剣(フラガラッハ) が四本撃ち出され、リンネが捕まっている左手の親指付け根部分に集中して突き刺さった。

グラリと左手の親指が緩んだ瞬間に、ゲルヒルデがその手の中から脱出する。

『あぶなかったぁ……!』

『一機めが簡単だったからって油断した。さっきのは不意打ちに近かったからで、もっと注意して動くべき』

『はぁい……』

桜に窘められ、少し落ち込んだリンネの声がする。まあ確かに一機めが綺麗に決まったからなあ。こりゃ余裕、と思っても仕方ない気もするんだけど。

ふと横を見ると、アリスのオーバーロードとギガンテスの胸部が変形した大型ゴレムが両手を組み合わせ、まるで力比べをするかのように押し合いを始めていた。

『はぁぁぁぁぁぁっ!』

オーバーロードの基本的な出力はこのレギンレイヴよりも上、全フレームギア最大である。

背中のブースターが唸りを上げて、オーバーロードを前へ前へと押し進ませていく。

やがて堪えられなくなったのか、胸部ゴレムは頭の横に装備してあったバルカン砲のようなものをオーバーロードの顔面へと向ける。

『させないよっ!』

次の瞬間、アリスがそんな叫びと共に、勢いよく胸部ゴレムの顔に頭突きをかました。突然の打撃に胸部ゴレムが仰け反り、地響きを立てて倒れる。

なんだろう……。まるでプロレスを観ているかのような。

倒れた胸部ゴレムはすぐに立ち上がり、その大きな拳をオーバーロードへ向けて繰り出してきた。それをアリスは左腕で受け、反撃とばかりに逆に右拳を叩き込む。

まともにボディに入ったはずだが、胸部ゴレムは微動だにしない。やはりあいつの装甲はダメージを吸収してしまうのか。

先ほどのヘッドバットでのダメージは単にバランスを崩しただけか? 逆三角形に近い機体だしな。

防御に自信があるのか、守りを固めずに胸部ゴレムは 乱打(ラッシュ) を続ける。オーバーロードの方は防戦一方だ。

『このおっ!』

オーバーロードの脚部につけられている巨大ドリルが分離し、右腕に装着される。 乱打(ラッシュ) を続ける胸部ゴレムの隙を突いて、ドリルを装備したオーバーロードの右腕が敵のボディに突き刺さる。

しかし突き刺さったのはわずかに先だけで、やはりゴムのような装甲に防がれていた。

『ここからっ!』

アリスの叫びと共にドリルが高速回転を始める。ギュギュギュギュギュ、と回転したドリルが少しずつではあるがゴム装甲の中に入り込んでいく。

『【 薔薇晶棘(プリズマローズ) 】!』

バキッ! と、ゴム装甲に亀裂が入る。胸部ゴレムの装甲の内側から水晶の棘蔓か飛び出してきて相手を絡めとっていく。やがて胸部ゴレムは幾つもの棘蔓に地面に縫い付けられ、その動きを止めた。

ドリルでこじ開けた装甲の内側で【 薔薇晶棘(プリズマローズ) 】を発動させたのか。

溢れ出した水晶の蔓薔薇が内側から胸部ゴレムを破壊したというわけだ。

しかしこれでは中身はバラバラだろうなぁ……。クーンがモニターの前で絶叫してそう……。

『やったよ、お父さん!』

アリスが呼びかけたエンデの方はというと、腹部ゴレムとの戦闘を繰り返していた。

腹部ゴレムは太く短い足に細く長い手を持つゴレムで、動きは遅いがその両腕にはガトリング砲が装備されていた。

撃ちまくられる弾幕の雨を、右へ左へとその機動力で躱しまくるエンデの 竜騎士(ドラグーン) 。

スピード重視のその機体に、腹部ゴレムは一発も当てられない。

『アリスの方も片付いたようだし、こっちも決めるとするかな』

竜騎士(ドラグーン) が腰から二本の小太刀を抜き放ち、両手に構える。

両足の高速ローラーを加速して、すれ違いざまに細い腕を斬り落とす。急ターンしてまたすれ違いざまに残りの腕を斬り落とす。

縦横無尽に大地を駆け抜けて、 竜騎士(ドラグーン) が腹部ゴレムを斬り刻んでいく。その素早さの前に相手はなす術がない。

『これで終わりっと』

竜騎士(ドラグーン) の小太刀が腹部ゴレムの胸部(ややこしい)を貫くと、ボシュッ! とキラキラとした魔素の煙を上げて相手は動きを停止した。

一方的な戦いだったな。まあ、相性が悪かった……いや、エンデとしたらよかったんだろうけど。

『どうだい、アリス! お父さんもなかなか、アッレェ!?』

アリスの方を振り返るエンデだったが、すでにそこに愛娘の姿は無かった。

自分の戦いを終えたアリスは父親を置いてさっさと他のみんなの加勢へと向かったのである。

「不憫な……!」

くっ、目頭が熱い……。頑張ったのになあ、お父さん。その気持ち、今なら僕にもわかるぞ。

ユミナたちの方へと向かったアリスのオーバーロードを追って、エンデも 竜騎士(ドラグーン) を走らせていく。

ふと見ると、リンネも二機めの前腕部ゴレムを片付けたところだった。

ミサイルポッドを持つ上腕部ゴレムと戦っていた八重とヒルダもその戦いを終えたようだ。もちろん無傷である。

後はユミナたちが押さえている下腿部の二機だけか。もはや二対十。こりゃ勝ったな。それほど強くはなかった気がする。

いや、合体したギガンテス状態があいつの真骨頂だったのだ。分離したことにより、その実力を発揮できないまま敗北した、というところか。

そう考えると、分離する原因となった頭部ゴレムへの一撃はまさにギガンテスにとって、痛恨の一撃だったのかもしれない。

これはリンネがMVPだな。さすがは我が娘。うむ。

◇ ◇ ◇

「あらあら、なんかうるさいと思ったらずいぶんと面白いことになっているじゃないの」

「あれは決戦兵器ですね。いったいどこに眠っていたのか……」

冬夜たちが戦っているアイゼンブルクからかなり離れた場所で、その戦いを眺める影が二つ。

一人は鉄製のドミノマスクをつけた赤毛の女。

もう一人は潜水ヘルメットのような兜をかぶった男。

女はオレンジの 戦棍(メイス) を、男は深青の 手斧(ハチェット) を持っていた。

『邪神の使徒』と呼ばれるタンジェリンとインディゴはこの辺りを監視させていたゴレムからの報告を受けて、インディゴの 手斧(ハチェット) 『ディープブルー』の持つ転移魔法でここまで来ていた。

冬夜が事前に【サーチ】を周辺にかけていたのだが、監視していたのは『悪魔ゴレム』ではなく普通のゴレムだったので見逃したのである。

「あれはブリュンヒルドの巨大ゴレムですね……。初めて見ますがかなりの性能のようだ。スカーレットの言う通り、 我(・) 々(・) の(・) 作(・) っ(・) て(・) い(・) る(・) も(・) の(・) ではまだ太刀打ちできない」

「はっ。そんなんで本当に私たちの悲願は果たせるのかしらね?」

小馬鹿にしたようにタンジェリンが吐き捨てる。彼女は敗北宣言ともとれるインディゴの言葉に少し腹を立てていた。

「 ま(・) だ(・) 、と言いました。スカーレットがいずれはあれを凌駕する機体を作ってくれますよ。そのために世界を回り、『 方舟(アーク) 』を手に入れたのですから。クロム・ランシェスの残せし遺産があればそれも不可能ではない。それが新しき神の降臨の礎となるでしょう」

「ふん、すごい自信だねえ。その敬虔さは元神父だからかね? 私はこの世界がぶっ壊れさえすればそれで満足だから、そうなるように神に祈っておいてやるよ」

つまらなそうにタンジェリンはオレンジ色の 戦棍(メイス) 『ハロウィン』を肩に担ぎ直した。彼女たちは『邪神の使徒』と自称しているが、全員が全員敬虔な信徒というわけではない。

「しかしこのまま戻るのも癪ですね。少しばかりスカーレットにお土産を用意しましょうか」

そう言って潜水ヘルメットの中で、インディゴは不敵な笑みを浮かべた。

◇ ◇ ◇

『【キャノンナックル】!』

アリスのオーバーロードが最後の一機、下腿部ゴレムの上半身を粉々に吹き飛ばす。あーあ、これもクーンや博士らから文句を言われるぞ。

『やった! 全部倒した!』

ゲルヒルデに乗るリンネから嬉しそうな声が聞こえてくる。これで全部片付けたか。思っていたよりは簡単に終わったな。

というか、僕結局、本当になにもしなかったな……。

よく考えてみたらこれってモニターの向こうで観ている人たちに、ものすごく印象悪くない……?

嫁さんばかりに戦わせて自分は高みの見物って最低の旦那だろ……。

マズいな、最後くらいはちゃんと働かないと。とりあえず壊れたギガンテスのパーツも全部回収して────と、僕が【ストレージ】を開こうとしたその時、ゴボゴボとギガンテスの頭部ゴレムと胸部ゴレムの周辺に青い泡が波打ち、とぷん、とまるで水の中に落ちるように消えてしまった。

「なっ……!?」

『冬夜さん! 三時の方向、崖の上に誰かいます!』

ユミナの声にレギンレイヴのカメラを向けると、崖の上にいた二つの影が、先程のゴレムらと同じようにとぷんと沈んで消えた。

一瞬しか見えなかったが、赤毛の女と潜水服を着たようなやつがいた。まさか……邪神の使徒か!?

「検索! 『邪神の使徒』!」

『検索しまス。…………検索終了。該当者ナシ』

くっ、やっぱり結界で阻害されているか! ギガンテスのパーツで検索してみたがそっちでも見つからなかった。単なる転移魔法じゃないのか? まさか『異空間転移』じゃないよな……?

「ちっ、まんまと火事場泥棒をされたってわけだ……」

『 方舟(アーク) 』の時と同じか。向こうにも転移魔法を使える奴がいる。やっぱり厄介だな……。

さらに盗まれる前にさっさと残りのギガンテスのパーツを【ストレージ】に収納した。頭部と胸部のパーツだけ盗られたのか。二つしか盗んでいかなかったのは転移させるものに限界があるのか、それともその二つ以外はいらなかったのか。

やってくれるじゃないか……。完全にこれは宣戦布告ってことかな?

僕がレギンレイヴのコックピットで沈思していると、目の前にセットされたスマホから着信音が鳴った。

うぐっ。クーンからだ。たぶん、というか絶対モニターで一部始終を観ていたんだろうなァ……。

しかしこれは不可抗力というか、事前に知らなければ対処しようがなかったというか……。僕のせいかね?

言い訳してないで早く出ろ! と言わんばかりに着信音が鬼のように鳴り続けているが、なかなか通話ボタンを押せない僕がそこにいた。はぁ……。