軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#518 妖精の母と娘、そして発見。

鉄鋼国ガンディリスの国王陛下に電話をして、個人的に鋼材を売ってくれないかと頼むと快く承諾してくれた。その代わりといったらなんだが、ちょっと相談に乗って欲しいと言われたが。鉄鋼王が僕に相談? なんだろ……?

「ま、行ってみればわかるか」

「話はついたの?」

「ああ。王宮で待ってるってさ」

リーンにそう答えて早速【ゲート】を開く。

待ってましたと言わんばかりにクーンが真っ先に【ゲート】の中へと飛び込む。そんなに急がんでも。

「まったくもう……落ち着きのない。誰に似たのかしら?」

「おっと、僕と言いたいんだろうけど、バビロンの『図書館』を探してた時のリーンもあんなだったからな」

「私はもうちょっと落ち着いてたわよ」

おいおい。足下にいるポーラが『そだっけ?」と首を傾げているぞ。

「まあ、親子なんだから似てて当然か」

「そうね」

二人で顔を見合わせて笑う。すると【ゲート】の向こうからにょきっとジト目のクーンが首だけ出してきた。

「仲がいいのは結構ですけれど、早く行きませんか? ガンディリスの国王陛下を待たせるのは失礼だと思うんですけど」

「あ、や、うん。わかった」

「そ、そうね。行きましょう」

なんとなく照れ臭くなった僕らは慌てて【ゲート】をくぐった。

◇ ◇ ◇

「あ、お父様、そちらのハイミスリルも買っておきましょう」

「はいはい、これね」

僕はクーンの言う通り、白銀に輝くハイミスリルの塊を【ストレージ】へと放り込む。

ガンディリスの国王陛下と挨拶をしたあと、すぐに鋼材や資源置き場となっている城下の大倉庫へと案内された。

いろんな鋼石や合金がそこらに山のように積まれ、精錬して鋼材となった商品も置かれている。

ものすごい数だな……。さすがは鉄鋼国と言ったところか。

鉄鋼国ガンディリスは様々な鉱山に囲まれた山岳国である。

豊富な地下資源と高度な精錬技術により、西方大陸のほとんどの国がこの国から鋼材を買っている。

そのため、過去には何度か侵略も受けたりしたが、天険の土地柄と剛健なゴレムたちによってそれを退けてきた。

あらゆる鉱物が手に入るため、ドワーフたちが多く住み、武器防具の類いも一流品が多い。フレイを連れてこなくてよかったな……。

「うちの国にも鉱山とかあればなあ」

「無い物ねだりしたって仕方ないでしょう」

リーンにぴしゃりと返される。そうだけどさあ。

当たり前だが、僕には鉱石の微妙な違いなんか見てもわからない。当然【サーチ】なんかでは、よほどわかりやすい化石とか魔石じゃないと引っかからないのだ。

ミスリルゴーレムとかオリハルコンゴーレムみたいにわかりやすい形なら引っかかるんだけど。

オリハルコンゴーレムはスゥのオルトリンデ・オーバーロードを作る時にちょっと狩り過ぎたんだよな……。絶滅危惧種になってしまいそうな勢いで。

それを話したらさすがに他の王様たちから怒られた。まあ、貴重な資源を他国から奪っているようなものだからね。

すでに狩って迷惑をかけた国には、ミスリルゴーレムとかダイヤモンドゴーレムとかの生息場所をいくつか教えてなんとか許してもらったけど。

「それにしてもずいぶん買うなあ。オーバーギア一機作るのにこんなにいるか?」

「必要です! 詳しくは言えませんけど」

「本当でしょうね? 貴女、しれっと自分の分まで買ってないわよね?」

「お母様、娘を疑うのはどうかと思いますわ。あ、これも使えますわね。お父様、これもひとつ」

リーンの疑いの目を躱しつつ、クーンは鋼材を指定していく。

いや本当に多いな……。もともと『工房』の方にある鋼材と足してもかなりの量だと思うんだが。

オーバーギアはフレームギアより大きいし、ある程度は覚悟してたけど……。お、お金間に合うかな? 安く買うためにここにきたのに、結果高くなっては本末転倒だぞ。

一抹の不安を感じながら、母娘の後を歩いていく僕であった。

◇ ◇ ◇

「これはかなりの量だな……。こんなに何に使うのか気になるところだが、まあ詮索はよしておこう」

鉄鋼王は僕が【ストレージ】に収納した物のリストを見て驚いていた。僕も驚いてる。予想していた量の倍以上だ。本当にこんなにいるのか? 何機作るつもりなんだ。

オーバーギアだけじゃなく、水中専用フレームギアも何機か作る気なんだろうか。

クーンはにこにこしているだけで教えてくれないし。博士もそうだが、この手の人種は秘密主義が過ぎる。こっちはスポンサーだぞ?

「それで支払い金額だが……」

「お、おいくらで?」

鉄鋼王の言葉にごくりと唾を飲む。彼はさらさらと手にした紙にペンを走らせると、その金額を書かれた紙を僕に渡した。

おろ? あれ、思ったより安い? いいの? この金額で?

「あの、これかなり安くしてもらっているようですけど……」

「うむ。実は電話で話した相談に関わることなのだが……。それをどうにかしてもらえるならこの金額からさらに半額値引きしよう」

おっとやっぱりうまい話にゃ裏がある。なにをしろとおっしゃる?

「この地図を見てくれ」

応接室のテーブルの上にガンディリス周辺の地図が広げられた。これって僕が渡したスマホのマップから作られたものだな。中心にガンディリスの王都がある。

「ここがこの国で一番大きな鉱山がある都市、メルクリウムだ。で、ガンドラ山脈を挟んで王都がある。王都へ鋼材を輸送するには飛行艇でガンドラ山脈を越えるか、南にあるこっちの町を経由してぐるりと迂回するしかない」

うーむ、飛行艇で鋼材を運ぶってのは無理がないかね? あんな重い物、飛行艇にはそんなに積めないだろ。飛べなくなる。

迂回する南ルートもなあ。これかなりの距離あるよね? ははあ。鉄鋼王がなにを言いたいのかなんとなくわかってきたぞ。

「なんですか? つまりはここにトンネルを掘れ、と?」

僕は王都とメルクリウムの間にそびえ立つ山脈を、指でトントンと叩いた。鉄鋼王も我が意を得たりとニヤリと笑う。

「まあ、ぶっちゃければそういうことだ。昔からここにトンネルを掘る計画はあったのだが、地盤が脆いところがいくつかあってね。無理に掘っても崩れるので危なくてできなかった。しかし東方大陸から魔法が伝わって、土魔法ならできるのではないかと思っている」

なるほど。確かに土魔法なら崩れそうなところを固めながら掘り進むことができる。シールド工法と同じ要領だ。

「だけどこれ、結構距離があるな……」

魔導列車のレールを引くときにベルファスト王国とリーフリース皇国に跨る山脈にトンネルを掘ったが、アレより二倍近くの長さがある。つまり百キロ近くあるのだ。まあ掘れないことはないけれども、あまり時間もかけたくもないしな……。一気にやってしまうか。

「わかりました。やりましょう」

「おお! 引き受けてもらえるか!」

「で、掘るとしたらどこからどこまで?」

「うむ、できれば王都とメルクリウムを最短距離でつなぎたいのだ」

僕と鉄鋼王が地図を相手に話し合いを続けている横で、優雅にリーンはガンディリスの王妃様たちとお茶を飲んでいた。リーンも公国公妃である。国の恥にならぬよう、努めて公妃らしい振る舞いで対処していた。

問題は……。

「へぇ、駆動系にまでエーテルラインを引いてますのね……。ああ! なるほど、非常時にはこちらの補助動力に切り替わるようになって……面白いですわ」

問題は部屋の隅でガンディリス王宮に配備されている近衛ゴレムに取り付き、関節の隙間から中を覗く公国公女がいることだ。いや、鉄鋼国の皆さんは公女ではなく、僕の親戚の子と認識しているだろうけど。

この部屋の警備を任されている近衛ゴレムは、張り付くクーンに微動だにせず、まるで置物のように直立不動を保っていた。

「なんか……すみません」

「ああ、いや。我が国のゴレムに興味を持ってもらえて光栄だ」

僕が謝ると鉄鋼王が苦笑いをしつつ返してくれる。呆れてるんだろうなあ。

「さすが王宮のゴレム、潤滑油も最高級の物を使ってますわね。あら? こっちの配線は……」

おーい、そろそろやめた方がいいぞー。あっちでにこやかにお茶を飲んでいるお母さんのこめかみに青筋が浮かび始めているから。あ、もう遅い。

リーンは『ごめんあそばせ』と王妃様たちに断り、そのまま離席すると、真っ直ぐにクーンの下へつかつかと早足で向かった。うわ、もうあかん。

それに気づかずゴレムに夢中になっているクーンに、リーンの両拳が背後から左右のこめかみを襲った。

「うーん、こっちのままだと摩擦係数が……いだだだだ!? お、お母様!? 痛いですわ!?」

「ク〜ン〜? 貴女、いい加減にしなさいよ? 私に恥をかかす気?」

ぐりぐりぐりぐりとリーンのぐりぐり攻撃が炸裂する。それを見てポーラが『おそろしや……!』と小刻みに震えていた。

「なんか……すみません」

「ああ、いや……」

鉄鋼王はもはや引きつった笑いを隠そうともしなかった。

とりあえずトンネルを掘る場所を確認し、方角と距離をスマホで撮影しておく。掘る際のトンネルの大きさなども確認しておく。後々、ここに魔導列車が通ればさらに輸送が楽になるからな。

「ダーリン、トンネルを掘るなら私たちも手伝うわよ」

「え、お母様? 私もですか?」

「貴女にも責任の一端はあるのだから、手伝いなさい」

「は〜い……」

ぐりぐり攻撃から解放されたクーンが力なく返事をする。断ればまたぐりぐり攻撃が再開されると思ったのかもしれない。

クーンもリーンと同じく、闇属性以外の魔法を全て使える。二人とも土魔法を使えるから、手伝ってもらえるならだいぶ楽に掘り進むことができるな。

そんじゃ、親子の共同作業を始めますか。

◇ ◇ ◇

「【土よ 穿(うが) て、螺旋の掘削、ディグスパイラル】」

「「【土よ来たれ、土塁の防壁、アースウォール】」」

僕が空けた直径十メートルほどの横穴に、左右に陣取ったリーンとクーンが【アースウォール】を施して崩れないように固定していく。掘った土は【アースウォール】で圧縮し、ドーム状の壁面と平らな地面へと変化させる。

固定し終えたら掘った先へと【テレポート】して再び穴を掘る。一気に十キロくらい掘れるので、十回もやれば向こうへと辿り着くだろう。

「これ、完成した後に結界張らないと、魔獣なんかが入り込んじゃうな」

そうなってしまったら単なる直線のダンジョンである。しかも逃げ場がない。さすがにガンディリスもそれは困るだろう。

「途中で休める休憩所も必要だと思いますわ」

「換気できる仕掛けもね」

ゴレム馬車の速度が大体時速二十キロから三十キロ。四、五時間もトンネルの中で過ごすのだから確かに休憩所などは必要か。

半分ほど掘ったら広いスペースを作って、換気のための小さな縦穴も掘っておこう。

「しかしずっと穴の中にいると、モグラにでもなったような気になってくるな……」

「あらダーリン、ドワーフなんかはだいたいこんな生活をしてるのよ? もっとも彼らは鉱石目当てで潜っているのだけれど」

「鉱脈に当たったらいいですわね。さらに鋼材費を安くしてくれるかもしれませんわ」

そんなことを呟いていると、固める前の地面がボコっと隆起し、そこから鋭く大きな 鉤爪(かぎづめ) を持った、巨大なモグラが顔を覗かせた。ビビったポーラがリーンの足に縋り付く。

「あら珍しい。ジャイアントモールね。こっちにもいるのね」

「お父様が変なこと言うから」

「え、僕のせいか?」

モグラは掘削する音に引き寄せられてやってきたのだろう。決して僕らの会話が聞こえたから来たのではない……と思う。

『グファァァ……!』

ジャイアントモールは穴から這い出して、両爪をこちらに向けて威嚇してきた。うーむ、やっぱり僕らの声を聞いてやって来たのかもしれないな。エサを見つけたと勘違いして。

さて、どうするか。

「【水よ来たれ、清冽なる刀刃、アクアカッター】」

「あ」

『グギョアッ!?』

僕があれこれ考えるより先にクーンの魔法がジャイアントモールに炸裂した。五、六メートルはある巨大なモグラが見るも無残に唐竹割りに真っ二つになってしまっている。うわぁ……。

「まったく……。お馬鹿さん、使う魔法を考えなさいな」

「え? 火魔法はまずいですし、この場合水魔法が一番なのでは?」

「それは間違いないけれど、倒し方を考えなさいって話よ。ダーリンの【ストレージ】で回収しても、地面に染み付いた血の臭いは消えないわよ?」

リーンの言う通り、トンネル内には倒したジャイアントモールの血の臭いが漂っていた。けっこう、いやかなり血生臭い……。

すぐさま僕は死んだジャイアントモールを【ストレージ】に回収し、風魔法を使って汚れた空気を外の方へと押しやった。

「水魔法なら窒息させる、あるいは氷魔法で全身を凍らせて封じ込めた方がよかったわね」

「むう……。次からはそうしますわ」

少し拗ねるクーンの頭をリーンが撫でる。つい反射的に手が出てしまったって感じかな。クーンは頭がいいから少し考えればわかったはずだ。

その後も何匹が同じような巨大モグラや巨大ミミズが出てきたが、クーンが全て氷漬けにした。

けっこう土中にもいるもんだ。こりゃ完成したら結界と補強魔法をかけて、トンネル内に入ってこれないようにしないといけないな。

そんなことを考えながら、何回目かの【ディグスパイラル】を発動させたとき、今までとは違う手応えを感じた。魔法が空振りしたというか貫いたというか。

あれ? 突き抜けた? いや、まだ向こう側にはだいぶあるよな?

「なんか空洞みたいなものがある……?」

「あら。鍾乳洞にでもぶつかったのかしら?」

トンネル内は暗いので、リーンが生み出した【ライト】が僕らの頭上には浮かんでいる。その光さえもポッカリと空いた先の穴には届かず、中は見えなかった。

クーンが新たに【ライト】の明かりを生み出し、崩れた穴の先へと駆け寄って行った。あ、こら! なにがあるかわからないんだから危ないぞ!

「これは……! お父様! お母様! 見て下さい!」

「なんだなんだ? なんかあったのか?」

声を張り上げるクーンに、僕とリーンも慌てて穴の先へと向かう。

「っ、これは……!」

そこにはクーンが飛ばした【ライト】の光とは別にヒカリゴケのようなぼんやりとした光が存在していた。

僕たちの目に飛び込んできたもの。それは眼下に広がる大きな都市であった。

うすぼんやりと道に建物、遠くには塔やピラミッド状のなにかまで見える。完全に地下都市だ。

いや、正確には都市というより都市跡、だろうか。残念ながら建物や塔は一部崩れており、廃墟と言った方がいいだろう。

おそらく古代都市の一つなんだろうが……。まさかトンネルを掘っていて、こんなものにぶち当たるとは。

「すごいですわ! 未来の世界でもこんなところはまだ発見されてません! 大発見です!」

「とんでもないものを掘り当てたわね。ひょっとしたら鋼材をタダでもらえるかもしれないわよ?」

「そりゃいいなあ。夕飯は豪勢にいくか」

興奮するクーンとは違い、僕もリーンは軽口を叩き合う。まあ正直、面倒なものを見つけてしまった感が強いのは否めない。

しかし未来でも発見されていない? ということは未来が変わってきているのか? あるいは未来のガンディリスはこの地下都市を隠匿している? どういうことだろう。

とりあえず鉄鋼王に電話で連絡を入れると、向こうもクーンと同じく興奮した様子で、すぐにそちらへ向かう! と告げられてブツリと通話が切れた。

いや、すぐにって飛行艇で来てもここまでそれなりにかかるぞ……。こっちから迎えに行こうかとも思ったのだが、まあ来るというなら待つか。長くても一、二時間だろうし。

「お父様お父様! 調査! 調査をしましょう! 危険がないか調査を!」

そうなると困った。鉄鋼王が到着するまで、興奮しまくったこの娘さんを抑えておく自信が僕にはないのだが。

確かに安全性を確認するのは必要だと思う。さっきのジャイアントモールや大ミミズのような地中でも活動する魔獣の巣になっているかもしれないし。

僕らはクーンの意見に従い、貫いた穴から下へと降りることにした。外壁をぶち破ったらしく、下は切り立った崖のようだったが、【フライ】を使って開けた場所へと無事に降り立った。

中央広場のようなそこは、石畳はひび割れ、建物は一部崩れた様子を見せている。やっぱり廃都、か。

「こっちの大陸は保護魔法が一般的じゃないから損傷が酷いわね。ゴレムなんかは長期間保存できるようになっているのに」

「僕らの魔法みたいに都全部を保護するのは難しかったんじゃないかな」

博士の話だと古代魔法文明では建物を作るとき、大抵は土魔法で強化したり、保護魔法をかけて清潔さを保ったりしていたんだそうだ。

こっちにはそういった技術があるにはあったが、広く一般的に使われていたわけではないのだろう。保護するのは価値のあるものに限られていたようだ。

逆に言えば、保護化されたなにかお宝のようなものがあるかもしれないというわけで。

いかん、クーンじゃないが、ちょっとワクワクしてきたな。

そんな僕の心に水をさすかのように、廃都の中でガシャン、という物音が響いた。

「……なんだ今のは? なにかいるのか?」

闇の中に浮かぶ廃都から、さらに物音が響く。僕らは辺りを警戒し、いつでも動けるように体勢を整えた。

ガシャン、ガシャンと金属音のようなものはだんだんと多くなり、やがてぼんやりとした薄闇の中から一体のゴレムが現れた。

身長は人間と同じくらい。真鍮のような鎧を身に纏った騎士のようにも見える。しかし顔に当たる部分はカメラレンズのような単眼が左右にチキチキと動いているので、中身はやはり機械だ。

背中からは四本の筒のようなものが飛び出しており、そこからキラキラとした蒸気のようなものを吹き出している。身体の関節からもその蒸気は漏れており、まるで壊れる寸前という感じだ。

その真鍮ゴレムが一体ではなく何体も町のあちこちから現れ、こちらへとやってくる。手に武器などは持っていないが、ジリジリとにじり寄るその雰囲気は、まるでゾンビ映画のゾンビのようだった。

「まさかゴレムの住む地下都市とはね……」

「ダーリン、どうする? 広範囲魔法で全部ぶっ飛ばす?」

「はあっ!? なんてことを!? お母様、アレは貴重な 古代機体(レガシィ) です! 壊したらもう元に戻せないかもしれないんですよ!?」

「……我が娘ながら本当に面倒くさいわね、この子」

がっしとしがみつくクーンにリーンは心底呆れたように声を漏らした。貴重なゴレムというのはわかるんだが、襲ってくるなら容赦はしない。

でもまあクーンのお願いだから機能停止させるだけでやめておくか。

氷漬けにしてしまえば壊さずにすむだろ。

僕が封氷魔法【エターナルコフィン】を発動させようとしたとき、突然女の人の声が地下都市に響き渡った。

『皆、下がりなさい。その人たちに危害を加えることは許しません』

突然の声に僕たちが驚いていると、真鍮ゴレムがゆっくりと左右に控えていき、まるでモーゼの十戒のように道を作った。

その先に現れたのは、古代ローマ人が着ていたトーガと呼ばれるゆったりとした白い一枚布の上着を着た女性であった。銀色に輝く髪は長く、瞳は金色に輝いている。薄闇の中、その美貌だけが妖しく揺らめいていた。

「ようこそ機人都市アガルタへ。地上の人たちよ」

地下都市で出会った銀髪のトーガの女性はそう言って僕らに笑いかけたのである。