軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07話 ダメだと分かっていても止められぬこの想い

どれだけ口が達者でも喋らなければ意味が無いし、強力な力も隠していては無いのと同じだ。

手に入れた力を軽率に使わずにおくのと同じぐらい、手に入れた力を躊躇なく使うのも重要だろう。

というわけで力を手に入れたポーラが実際に人助けをできるか試験する事にした。

ポーラはけっこう念入りにそして急激に訓練を進めているから、場合によってはあっという間に都市半壊レベルまで育つ事だろう。そうなってから人助け試験をしたのでは遅い。それほどの力の持ち主を試すのはそれだけで大事になる。

まだ力が育ちきっていない今ならちょっとした小規模イベントでポーラを試す事ができる。

さて。

ポーラが通っている高校では自称超能力クラブによる公開処刑的イジメが発生している。イジメというか普通に法に照らせば真っ黒な犯罪なのだが、半ば公然の犯罪行為が残念ながら看過されるのはよくある事だ。特に怪我や金銭の授受が絡まなければ。

俺達は掃除人のフリをしたり学校に圧力をかけたりして超能力訓練のために最近急いで帰宅していたポーラを足止め誘導し、自称超能力クラブ――――ダーレス校超能力探求会のイジメの現場にタイミングよく遭遇させた。

先生に頼まれ備品室にモップを取りに来たポーラは、まさにそのモップで袋叩きに遭っている少年、ハンク・スナートの姿を目の当たりにして持っていたバケツを取り落とした。

ハンクは少し前に超能力探求会の標的になっていた生徒だ。最近は飽きられ別の標的に代わっているが、一度殴ってもいい奴だと認識されると以降は気軽に殴られるようになる。時々「痛覚刺激による超能力の覚醒補助」とかいう片腹痛いガバ理屈で思い出したように痛めつけられていた。痛覚刺激で超能力目覚めるなら俺はもう数万種類の超能力使えるようになってるぞ。

痩身で背が低くて地味な黒縁眼鏡をかけたハンクを三人で囲んでモップで殴りド突いているのは不良の皆さんだ。雨の中で捨て猫を助けるタイプではなく面白半分で煙草を押し付けるタイプの。

毎日暇があれば誰か弱そうな奴をいたぶっているのである意味誘導は楽だった。

そんなよくある陰湿な集団暴行の現場を見てバケツを取り落としたポーラは、落ちたバケツが床に触れる前にドッペルゲンガーを出して三人の顔面ド真ん中に立て続けにストレートパンチを叩き込んだ。

「なんおげぼぇ!?」

「こいつべぶぅ!」

「きゃいん!」

三人とも無様に悲鳴を上げ床に倒れ込む。

ちょっとびっくりした。なんやかや暴力沙汰にならないと収まらないだろうなとは思っていたがすげーな。判断が早いどころかもうほとんど脊髄反射だったぞ。手が早い。

もうちょっと、こう、話し合いによる解決を試みるぐらいはしても良かったんじゃないすかね。

突然出てきた ピン(ド) ク巻(ッ) き毛(ペ) のセ(ル) ーラ(ゲ) ー服(ン) 美少(ガ) 女(ー) に殴り倒されるなんてもう交通事故だ。

ポーラはハンクを急いで助け起こし手を引き、精一杯の鈍足でもたもた備品室を逃げ出した。不良達が驚きから覚め我に返って立ち上がる頃には二人は空き教室に飛び込んで鍵をかけていた。

ドッペルゲンガーは見た目が変わっても体重は変わらない。不良達が喰らったのは超高精度アニメコスプレのような美少女の細腕からは想像もつかないほど体重が乗ったパンチだったのだ。不意打ちと合わさり鈍足の二人がひとまず逃げ切るのに十分な程度のダメージは与えられる。

息を整え、息を潜め、二人は教室の廊下側の壁に張り付いてしばらく待ったが不良達が追って来る様子はない。

すると深く息を吐いて落ち着いたハンクが急に怒り出した。

「なんで助けた? 反撃したら報復される。報復されたら勝てっこない。だから飽きて関わって来なくなるまで耐えてたのに!」

「それは――――」

「それにあのピンク髪の子誰だよ、急に出てきて急に消えたように見えたけどちゃんと逃げ切れたのか?」

「いや、あれは――――」

「まさかあいつらに捕まってるんじゃないだろうな、お前の余計なお世話で俺一人の危険が三人の危」

「黙れッッッ!!!!」

ヒートアップするハンクの声を塗りつぶす声量と気迫でポーラが怒声を上げた。

ハンクの胸倉を掴み、至近距離でまくし立てる。

「私だって報復されるんだよ絶対目つけられたから! まだ最後まで助け抜く準備終わってないのに助けちゃったんだよ、そう、なんで私に助けさせた? なんで私の目の前で不幸になった? ふざけるなよ! 耐えられなくなるだろ耐えられなくなるに決まってる! あんなの見たら助けるさ! 本当にふざけるなよこうなるの分かってたから早帰してたのに! もう耐えられない! ハンクのせいだ! ハンクのせいでハンクは私に助けられるんだ! ハンクが助けないでくれって泣き喚いても助けるからな! 学校で下を向いて歩かなくていいように、家族に友達がいるって嘘つかなくていいように、どこにも救いなんてないと思わなくていいように!」

逆ギレをかましたポーラは息を荒げハンクから手を離した。

ハンクは呆気に取られていたが、すぐに頭を掻いて気まずそうに言った。

「あー、その、悪かった。助けてくれてありがとう」

「……どういたしまして!」

「俺も、えー、頑張るよ。何か。俺なりに」

礼を言われてポーラは少し落ち着いたらしい。気まずそうに足元を見て目を逸らし壁に貼られた掲示物を指先で弄っていたが、やがてどちらともなく廊下の外の様子を窺い、二人揃ってこそこそ下校していった。

この日まで二人共ずっと一人で登下校していたが、理由はどうあれ今日は二人。

そして二人共ほんの一時間前とは全く違う。事態の一時解決が事態を更に悪化させてしまったのかも知れないが、それでも二人は晴れ晴れとした表情を浮かべていた。

……で、このそこはかとない友情シーンの最中に叩きのめされた三人が超能力探求会上層部に超能力者の発見を報告してるんだよな。

今回のポーラの対処は勇敢で善良だったが、本人の自覚通り訓練がまだ足りなかったがゆえ、正義感を抑えきれなかったがゆえに事態は解決どころか悪化に傾いた。

これから荒れそうだ。