軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40話

日中学校に行き、夕方には占いの館に勤める。

そんな生活を続けて日が過ぎていき、土曜日。

満景の土日は、いままでと同じように、占いの館の出入口での受付仕事だ。

受付机を出したりで準備を行っていると、ソコノ住職がスクーターでやってきた。

満景とソコノ住職が雑談を始め、その雑談中の話題の一つとして、熊野高等専修学校の悪霊退治の話題がでた。

「んで、来週からは悪霊退治が始まるんだろ。満景のA組から離脱者はでたのかよ?」

「でなかったよ。まあ、A組は元からある程度の経験者が集められていたみたいだから。悪霊退治をする覚悟は持っていたんじゃないかな」

A組は三十五人のまま、来週の悪霊退治の実習を行うことが決定した。

その事実に、ソコノ住職は納得した様子の後で、急に別の話題を振ってきた。

「そんじゃあ、これからしばらくは、占いの館でも悪霊退治が盛んになるかもしれねえな」

「そういえば四月五月は、その手のお客さんが来ることが、他の月に比べて多いよね。これも、学校の悪霊退治と関係があったりしたり?」

「関係、大ありよ。そういえば、ちゃんと理由を話してなかったっけな」

「理由って、四月五月に悪霊付きや霊障を受けているお客さんが多く来る理由ってこと?」

そんな理由があるのかと、満景は首を傾げる。

ソコノ住職は、理由はあるのだと、説法をするお坊さんのような態度を取る。

「いいか。霊ってのは、生者の感情に集まったり逃げたりする性質がある。喜びに満ちた生者が多い場所では、悪霊怨霊の類は逃げてしまう。逆に悪感情を生者が抱いている場所では、悪霊怨霊が住みやすいからと集まってくる」

「心霊スポットでは、見に来た人が『怖いものを見たい』って邪な感情を抱くから、霊が集まってくるって話ですよね。神社でも、敬虔に神に祈る場所では神聖な空気になるけど、良い目を見たいって願う人ばかりの場所だと穢れた空気になるっていう」

「その通り。そして四月五月は、学生や社会人にとって、新しい環境が始まる時期である。新環境に人が置かれると、多かれ少なかれ、苦労を感じることになる。その苦労が疲れとなり、そして不安感を抱くようになる。その不安感が世間に満ちれば、悪霊怨霊にとって住み心地のよい空間となる」

「東京は大都市で、人の数が多い。人が多い分だけ、不安感の量も多くなるから、悪霊たちが東京にやって来やすいってことですか?」

「悪霊怨霊ってのは、人がいない場所では、存在が薄らいでいくものだ。自分の存在が消えないよう、より住み心地の良い場所を求めて移動するのも、また悪霊怨霊の性質というわけだな」

つまり昔から四月五月は、悪霊と怨霊が東京に大量に流入してくる時期であるらしい。

そのため、悪霊付きになった人や、霊障を受ける人が多くなるらしい。

「あれ。でも東京には、神社仏閣を利用した大結界が張られているんじゃ?」

熊野高等専修学校の悪霊退治も、結界の綻びにあたる場所で戦うことが想定されていたはずだ。

そんな満景の疑問にも、ソコノ住職は答えを持ち合わせていた。

「満景が学校の実習で行く場所は、あらかじめ大結界に設けている、結界の穴の一つだ。大多数の悪霊や怨霊は、その穴を目指して移動をする。例えば、大豪邸の玄関が開いているのに、裏口に回って戸口が空いてないかを調べる者はいないのと同じにな」

しかし、人に性格の違いがあるように、悪霊怨霊にも変わり者はいるらしい。

「結界にわざと空いてある穴への道を外れて、他の小さな綻びから結界の中に入ろうとする悪霊や怨霊もいる。ほとんどの場合は結界に弾かれて、わざとの穴に戻ってる結果に終わる。だが稀に本当に結界の穴を見つけて中に入ってしまうヤツもいるのだ。そして東京は大都市ゆえに、集ってくる悪霊怨霊の数が多い。そして数が多ければ多いほど、稀な確立を引き当てるヤツの数も多くなるのだ」

「そうやって結界をすり抜けてきた悪霊や怨霊が、出会った人に憑くんですね」

「そうなってしまった人が、占い師や祓い師を頼って客になるという寸法だ」

霊能者界隈における東京での常識を教えられて、満景は新たな疑問を抱いた。

「あらかじめ開けてある穴って、とても重要ですよね。だって、そこに集まる悪霊や怨霊を祓わないと、東京は悪霊や怨霊の巣になっちゃうんですから。ということは、その場所には霊能者が常駐しているんですか?」

「しておるぞ。公務員扱いで、国に雇われている者がいる。熊野高等専修学校の就職先にも、その仕事場があったはず」

「ずっと悪霊と戦う公務員か……」

満景は、自分の将来の仕事先の一つとして、どんな毎日になるかを想像してみた。

東京に迫る悪霊たちの波を、お札と呪力でもって、バッタバッタと退散させていく。まるでヒーロー映画の登場人物のようにだ。

そう想像してみて、やりがいはありそうだとは感じるものの、あまり自分が成れるという実感が湧かなかった。

(僕の腕前だと、バッタバッタと祓うなんて真似はできないからなあ。もっと腕前が上がって、悪霊怨霊を楽に退散させられるようになったら、また考えるべきだよな)

自分自身では想像つかないものの、同級生のギヤマンだと想像しやすかった。

あの梵字の真言が書かれた特殊警棒で、悪霊怨霊を叩いて除霊して大暴れ。

実にしっくりと来る想像だった。