軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79話

「え~、来ないの~!?」

男3人で歩いていると娼館街から黄色い声援が来た。2人は竜だが、人化の魔法を使うとものすごく筋肉質なイケメンになる。お陰でなぜか仲間入りをしたような気分。

涙をのんで娼館の誘いを断りながら、高台の教会跡地に向かう。

「おーい! 神様ーいますかー?」

ほとんど崩れている教会は、前に来た時のままだった。

バキバキ、ボコボコバキ……。

崩れたレンガの下からにゅっと手が突き出て、神が這い上がってきた。

「あれ? コムロ氏、今日は見知らぬ二人を連れているね。んん? 君たちは竜か」

神がそういった時には何故か竜の二人は片膝をついて、頭を垂れていた。崇拝でもしてんのかな。

「何してんの、二人とも?」

「神の御前だ」

「我輩たちには、これ以上近づけぬ」

目をつぶったまま、二人は微動だにしない。

「まぁ、人それぞれで僕の見え方は違うからね」

神は慣れているようだ。八百万の神々がいる国から来た俺には普通の青年に見えている。

「そうなの? まぁ、いいか。で、先に報告しておきますけど、土の精霊は真っ黒でしたよ」

「あ、本当?」

「うん、どういう管理をしているのか知らないけど、このまま放っておいたら、世紀の大環境破壊になってますね。説明すると……」

俺は前の世界の『アラル海』の話を含め、地図を見せながら神に説明した。

神も星の縮小版を手の上に浮かばせて、事実を確認。同時刻の地球儀って便利だな。南半球はやはり緑がほとんどない。

「で、農園の土に使ってる魔石の粉で、村人がグール化したりしてるし、さすがに言い逃れは無理じゃないかなぁと思います。一応、湖の水位に関しては、うちの社員がウラ取りに行ってます」

「うんうん。ありがと、ありがと。よくわかった。じゃ、すぐにでもクビにしよう」

「あ、ちょっとそれ待ってください。精霊の加護が無くなった後の勇者のことなんですけど……」

「お、考えてくれてるのかい?」

「そりゃあ、ねぇ。確認なんですけど、土の勇者から加護が無くなっても土魔法は使えるんですよね?」

「もちろんだ。勇者ではなくなるから魔法の威力は落ちるかもしれないが、努力に見合ったスキルは残しておくつもりだよ」

「それを聞いて、安心しました。実は、いくつか案があるんですけど、いいですか?」

俺は考えていた事後処理について神に詳しく説明した。無理ではない範囲で、なるべく実現可能なもの。そして元土の勇者が活躍できる仕事だ。

「なるほど、やはり異世界者ってのは面白いな。僕としては初めの案が良いんじゃないかと思う」

セスとメルモが賛成していた案だ。

「ただ、後々大変なことになるかもしれないですけど、良いんですか?」

「うん、それも面白いからいいんじゃない?」

「じゃ、いろんな人に会って、計画を進める必要があるんだよなぁ……、神様、ちょっと瞬間移動の方法とか教えてもらえませんか?」

「あ~、今、空間と時間司ってる精霊どもが赤道にバリア張ってるせいで、難しいんだよね」

「ええっ!?」

「まぁ、いいじゃない、友達の背中に乗せてもらえば。そのくらい、いいだろ?」

神が未だ片膝立ちの黒竜達に聞くと、黒竜が「御意」と短く答えた。

「なんだったら、一時的に僕の加護とか与えちゃおうか?」

「神の加護ですか? あ、そういや俺に称号付かないのなんでですかね?」

「そりゃ、精霊に見つかると面倒だからだよ。コムロ氏に称号与えてたら、それだけでいちいち大変だし、精霊とか悪魔に目つけられて大変だよぉ」

心底めんどくさそうに神は言う。

「そうなんですか。なら、加護はいらないです。これまでも称号なしでやってきたんで。必要なときは言うんでください。というかですね、連絡方法ってここの教会来るしかないんですか?」

「いや、どこの教会でも大丈夫だよ」

神の衝撃的一言に「この野郎」と思ってしまった。

「そういうの大事だから、早めに言ってもらっていいですか?」

「ああ、言ってなかったかぁ。悪い悪い」

「なんだったら、この通信袋渡しておくんで、必要なときは連絡しますから」

「おぉっ? なんだこれ」

「こう、ほら魔力を込めると遠いところでも連絡できるんですよ」

「おおっ! 魔法陣を使った魔道具かぁ。邪神にも教えてやろ」

「ああ、そういや、向こうどうなってます? 南半球は」

「ハイパーぬるぬる相撲を開催してたよ。あのバカ、スライム増やしすぎてさぁ……」

その後、神は10分ほど、邪神を小馬鹿にしたトークを展開させた。

邪神は南半球の大陸をスライムだらけにしたらしく、世界樹やダンジョンについては手を付けていないらしい。

「あ~ぁ。邪神はバカだなぁ。でも、精霊クビにしたら悪魔になるかもしれないんだよなぁ……。邪神に頼るか?」

「え、ちょ、どういうことですか?」

「いや、だから、精霊をクビにするじゃん。僕に対して怒るじゃん。悪魔になるじゃん」

「そうなんですか?」

「なるよー、恨まれちゃうなぁ~。……やっぱり邪神に引き取ってもらおう。よし、じゃあ、コムロ氏、良きタイミングで連絡してね。土の精霊、クビにするから」

そう言って、神は「ぬるぬるバカー」と言いながら空へと消えていった。

なんだかんだで、仲いいんじゃないかな。あの神たち。

とりあえず、神への報告は終わった。

あとは、これからだ。

やることが山積みだ。

あぁ、誰か代わってくれないだろうか。

周りを見回すと、竜たちが相変わらず片膝で頭を垂れていた。

「いつまでやってんだ!」

黒竜とレッドドラゴンは

「はっ! 神様は?」

「もう行きましたよ。俺たちも町に帰りますよ! これから偉い人にあいますから」

俺はとっとと坂を下りた。

「ちょっと待ってくれ~」

「人に会うなら、我輩たちの名前をどうする? 黒竜とレッドドラゴンじゃ、すぐに竜とバレてしまうではないか?」

「ナオキ~、我たちの名前をつけてくれ」

「かっこいいのにしてくれ」

知らねーよ、めんどくさい。勝手に自分でつければいいのに。でもまぁ……、そうだなぁ。

「じゃあ、レッドドラゴンはレッド・C・アードで、黒龍さんはクロー・Z・オクダケね」

「なんだそれは?」

適当だよ。そんなもん!

「ミドルネームがあるんだ。かっこいいだろ?」

「「うむ、かっこいいなぁ」」

二人とも満足しているようでなにより。

一発退場のカードと防臭剤っぽい名前が由来とは言わなかった。だいたい、黒竜さんの方はトイレのやつっぽくなったし。ま、雰囲気だ。雰囲気。

「そんなことより、早く町に行きますよー」

「おう、今行くゴッドファーザー」

名付け親って意味か。

「今の黒竜さんが言うと、マフィア感出ちゃうと思うのは僕だけですか?」

「お主だけだ」

「マフィアってなんだ?」

全く意味のない会話をしながら、役所に向かった。

役所に入ると、職員たちが歓迎してくれた。

「砂漠の英雄」「港町の明るい酔っ払い」などと冷やかしが飛んで来る。

レッドドラゴンは「お主、良い二つ名を持っているな」と言ってきた。

もう名前の話は止せ!

「ナオキさん、今日はどうしました?」

受付の職員のお姉さんが聞いてくれた。

「リドルさんはいらっしゃいますか?」

「いますよ。面会の予約は……、してませんよね。ま、ナオキさんならすぐお会いになるかと」

お姉さんは同僚にリドルの居場所を聞き、こちらに向き直った。

「リドルさんは地下にいるそうなので、直接行ってください」

「ああ、わかりました」

俺は地下室に向かった。「お主、仕事ができそうな顔をしているな。うちの島に来ないか」などと職員を口説いている黒竜さんは、付き合いきれないので放っておいた。そのうちレッドドラゴンが止めるだろう。

地下室では、背の小さいリドルが机に向かい、何かを羊皮紙に書いていた。

「こんちは」

「おおっ! ナオキ殿。報酬の件か? ……いや、この前、アイル殿が話していたことか」

頭のいい人は話が早くて助かる。

「ええ、ちょっと勇者について、相談が。すみません、執筆中に」

「いや、なに。この前のローカストホッパー駆除について、少しでも後世に伝えられればと思ってな」

さすが、偉い人は違うな。ぬるぬる相撲とかしないんだろうなぁ。

「アイルから聞いているかもしれませんが、もう一度、説明させてください」

そう言って、俺は地図を広げ、本日二度目の説明をした。

ただ神からの依頼を受けていることと、精霊をクビにする話はしなかった。

「なるほど。つまり農園を潰す気なのじゃな?」

「そうです」

リドルさんは深く椅子に座り直し、顎に手を当てて考え始めた。

「今のヒルレイクは、勇者の農園で潤っているようなものじゃ……、それを潰すとなると……」

「混乱必至でしょうね」

「商人も王家も大損じゃ。何より国境に面している北方の国に伝わると…不味いかもしれんなぁ」

戦争を考えているような国が急激に弱体化すれば、そのタイミングで叩こうとするのが普通だろう。

「ええ、ですから、なるべく情報は出さないようにするつもりですが……、人の口に戸は立てられませんから。数日でいいので、情報統制を行い、その間に手を打とうと考えています」

「そうだろうな。農園を潰す以外の方法はないんだな?」

「ええ、すでに村人にも被害が出ていますから。ただ、土の勇者と、その周りの者、もちろん村人も含めてですが、その人たちについては助けたい、と考えています」

「何か、すでに案は考えているようだな?」

「ええ。説明する前にお聞きしたいんですが、連合国の中央政府というようなものはありますか?」

「無論、ある。2年に一度、連合国に参加している国の代表が集まる場所がな」

リドルさんは広げている地図の一点を指差した。

フロウラから北東に位置し、ノームフィールドからは真南に当たる場所で、距離も近かった。

ちょうどルージニア連合国の中心とも思える位置にあり、各国の代表も集まりやすいのだとか。これならいけるかな?

俺は、リドルさんに案を話した。

「それはまた随分と、しかし……」「ええ、それについては……」と、リドルが俺の案の弱点を突き、その対応策を俺が説明するという話し合いが続いた。

「しかしこれは、連合国全土を巻き込む大事業だぞ」

「ええ、わかってます」

「利権争いも始まるだろうな。秘匿とするところは、絶対に漏らしてはならん。しかし、中央政府から許可が出る可能性は高い。んん、全くどういう脳みそをしているんだ、ナオキ殿は?」

リドルさんは薄くなった自分の頭をくしゃくしゃと掻いた。

「普通ですよ」

「普通なもんか。酔っ払って楽しげな踊りを町中で披露したかと思えば、中央政府を巻き込む事業を持ってくる。はぁ……、しかし、お主のような者が時代を変えるんだろうな」

やっぱり、あの夜、俺は踊っていたのか。思わぬ真相に辿り着いた。

「そして、運も味方につけているのか」

「運?」

「ああ、実はな。今このフロウラには中央政府に非常に縁ある人物が滞在しているんじゃ。ついて来い」

受付で職員から、「お出かけですか?」と聞かれていた。

「うん。マーガレットさんに会ってくる」

マーガレットさんが誰だかしらないが、職員たちに緊張が走ったところを見ると、随分と偉い人のようだ。

粘っていた黒竜さんとレッドドラゴンを引っ張ってくると、リドルから「新しい社員か?」と聞かれた。

「契約社員です。腕は確かですから」

「うむ、精悍な顔をしている」

褒められた二人は「見る目がある小人族じゃな」などと言っている。

リドルに連れられて、町を歩く。

町行く人は、リドルさんや俺に気さくに挨拶をしてくるし、自慢の野菜や捕れたての魚をくれようとする。食い意地が張った竜たちが涎を拭きながら見ていた。

「貰ってもいいですかね?」

「ああ、構わん」

リドルさんは笑っていた。カッコいい見た目とは違い、情けない腹ペコの姿を気に入ってくれたらしい。やはりギャップは大事だ。

しばらく歩いていると、どこかで見たことがある屋敷に辿り着いた。

フロウラの町で一番大きな屋敷。会社を設立した頃、倉庫を掃除したところだった。

ということは、あの金持ちの婆さんが偉い人なのか?

門を開け、扉をノックすると、いつぞや風邪を引いていたばぁやが出てきた。

「おや、ブラックス卿に……、清掃会社の方? ああ、そうだ! この前はありがとう。おかげで良くなったのよ」

ばぁやは胸を何度か叩いていた。

「いえいえ、そんな」

「なんだ? 知り合いか?」

「ええ、ちょっと倉庫を掃除しに来たことがあって」

俺がリドルに説明していると、奥から屋敷の主人が現れた。

「なぁに? ばぁや。お客さん?」

「はい。マーガレット様。ブラックス卿と、この前の清掃会社の方がお見えです」

「あら? いらっしゃい。グッドタイミングね。良いお茶を頂いて、飲もうと思ってたところなの?さ、入って」

マーガレットさんは快く中に案内してくれた。

食材を抱えた竜たちが入ろうとしたら、止められていた。

「あら? それはお土産? それともお腹が減っているのかしら? ばぁや、食材を台所に持って行って、この方たちに料理を作ってあげて」

マーガレットが指示していた。

「かしこまりました。……ああ、ちょっと重そうだわね。こっちに持ってきてくれるかしら?」

「うむ、料理を作ってくれるなら、どこへなりとも持っていく」

「お嬢さん。我輩はムニエルという物が食べたいのだが、できるかな?」

「あら? お嬢さんだなんて……。イヒヒヒ」

黒竜さんにとっては、ヒューマン族は皆、年下なのだから、女性は誰でも「お嬢さん」だ。

ばぁやと竜たちが台所に向かい、俺とリドルはマーガレットにテラスの方に案内された。

「お久しぶりね。ブラックス卿」

マーガレットさんはリドルさんにニッコリ微笑んだ。

「お久しぶりです。マーガレット様」

「様は止して。この前はありがとう、おかげでばぁやも良くなりました」

マーガレットさんがこちらに向き直り、お礼を言ってきた。

「いえいえ、仕事ですから」

「顔見知りのようじゃが、改めて自己紹介をしておいたほうがいいな」

「あ、そうですね。ナオキ・コムロです。よろしくお願いします」

俺は、思わずおじぎで挨拶をしてしまった。

「マーガレット・フロウラです」

「フロウラ!?」

この町の名前じゃないか!?

「ハハハ。この町の名前は彼女の功績に肖ってつけられたんだ」

リドルさんが説明してくれた。

「嫌ですわ。ただ前の町の名前が縁起悪かったから、国王が変えただけです」

「彼女はな。ルージニア連合国の中央政府が出来る際、唯一その会議に参加した女性だ。そして、今いる中央政府の役員のほとんどは彼女の教え子だ」

「っ!! ……マジかよ」

「マジよ、フフフ。教え子がたまたま優秀だったってだけよ」

ただの金持ちの婆さんどころじゃなかった。