軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

77話

セスの実家にはすでにメルモが帰ってきていて、セスの母親の手伝いをしていた。

「おかえりなさい」

野菜を洗っていたメルモが顔を上げる。なんだかすでにセスの家の人のようだ。

「セス、もう一度言うけど、社内恋愛は自由だし、社内結婚だって推奨してるぞ」

俺は後ろから小声でセスに言っておいた。

「た、ただいま!」

セスの顔は引きつっている。

「僕は笑いながら、魔物を撲殺する女性は苦手です」

セスの言葉には妙な重みがあった。

「バカなこと言ってないで早く中に入れよ」

後ろのベルサが文句を言いながら、家の中に入っていった。

「なんですかぁ?」

メルモがベルサを見た。

「男どもがろくでもないことを話してるんだよ」

「もう、セクハラで訴えますよ!」

メルモが野菜を振り上げると胸が強調され、男として、どうしても目が引き寄せられる。

「おう、勝てる気がしねぇ!」

夕飯の手伝いをしながら、アイルを待つ。

ただ、飯時を過ぎても、アイルは戻らなかった。セスの妹や弟もいるので、先に食べておくことにした。

野菜炒めや、魚の出汁のスープ、焼き魚、セーラの母親からもらった魚の蒸し焼きもテーブルに並び、豪盛だった。アイルの分だけ残し、一気に平らげてしまう。

セスの妹や弟も喜んでいたので、良かった。

食後のハーブティーを飲みながら、ただアイルを待っているのもなんなので、回復薬を補充することにした。

乾いた薬草を村のお店で買ってきて、井戸の側で、作ってしまう。スキルに頼りきってはいるが、徐々に用意するものや、薬研で潰しておいた方がいいのかなどがわかってくる。いつかスキルを越えることはできるのだろうか。

メルモとセスは、食器の片付けや土産話を聞かせていた。ベルサはセスの母親とハーブの育て方なんかについて話しているようだ。マリナポートの家で実験を繰り返していたからな。

回復薬を瓶に12本、樽に1樽、補充できた頃、山の方からすごいスピードでやってくる者がいた。探知スキルでは青い光。アイルだった。

「悪い。遅くなった」

そういったアイルの姿は砂漠を走ったせいか、薄汚れていた。

クリーナップをかけたが、髪がゴワゴワしているらしく。「少し水浴びしてから、行く」と井戸から水を汲んだ。

俺は、セスの家に戻り、アイルの帰還を皆に伝えた。セスの妹と弟はすでに眠たそうにしている。

「どうぞ。寝ていいよ」

姉弟は母親と一緒に寝室へと向かった。

料理を軽く温めなおしているうちに、アイルが髪を布で拭きながら家へと入ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさい」

メルモが剣や荷物を受け取っている。

「よし、じゃあ、アイルは食べながらでいいから、会議を始めよう」

テーブルを囲んで、それぞれの報告を聞く。

「メルモから」

「はい、運河の予定地として湖の南側に2箇所看板を見つけました。工事は始まってませんでしたが、人足の小屋を建てるためか、木こりが木を倒してました」

「そうか、わかった。アイルは後にして、セス」

「はい、水量が減った川の調査をして、社長の指示で川を遡ったところ、水路がありました」

「水路?」

料理を食べながらアイルが聞く。

「人工的な川だな」

俺の言葉に、頷きながら口を動かすアイル。

「水路を下って行くと、村に出て社長たちと合流し、グールに遭遇しました」

「グール!?」

アイルは眉を寄せて俺を見た。

「ここから、俺が説明しよう。結論から言うと、土の勇者の広大な農園では綿を栽培していて、それによって、湖の水量が減ったのだと考えられるんだ」

「どういうことだ?」

焼き魚にかぶりつきながら、アイルが聞く。

「綿には大量の水が必要で、土の勇者は水路を作って自分の農園に水を引っ張った。その結果、湖に流れ込む水量が減り、湖の水量も減ったんだと思う。これについては、明日にでも新人たちに湖周辺を回ってもらって、ウラを取ってきてもらいたい」

「「はい」」

「で、勇者の農園の土には魔石の粉が多く含まれてたんだよな」

俺はベルサに振る。

「そう。あそこの土には通常よりも遥かに多い魔石の粉が含まれていた。たぶん、魔法陣を描いて、綿を守っているんだろうと思うけど、どういう魔法陣かまではわかってない。ただ、その魔石を多く含んだ土が風に舞って、人が吸い込むと肺に魔石の粉が溜まるらしい。肺に溜まった魔石は、宿主の魔力を吸いながら、結合していって、最終的に拳大の魔石の塊になる」

「それで、グールになるのか?」

「なってました」

アイルの問いにセスが答える。

「昼間にあった老婆が、夜にはグールになって屋根を飛び移ってたよ」

見た人間たちが言うのだから信じる他ない、とアイルは頷いた。

「対応策と治療法については、勇者の村にマスクを広めることと、吸魔草を使おうと思ってる」

「吸魔剤を使って、肺の中の魔石を割って、粉を体内から排除しようと思うんだ。ほら、ちょうどローカストホッパーみたいに。ただ、今は吸魔剤切れちゃってるから、一緒に明日採りに行こう」

俺の説明をベルサが補足する。

「わかった」

「実験やなんかはこれからだ。うまくいくかどうかはわからない。勇者への説得はちょっと失敗した」

「なにやってんだよ……」

苦笑いをしながら、アイルは脂のついた指を舐めた。

「もう一回チャンスくれ」

「まぁ、急に来た奴が農園潰してくれなんて言ったって無理だろ」

「そらそうだな。しかもナオキだろ。ザ・不審人物だから、しょうがないか」

アイルとベルサはこちらを見て、盛大に溜息を吐いた。

「ひでぇ! でも、ちょっと当てがあってさ。フロウラの町に勇者の村出身の奴隷がいるんだ。ちょっと、その娘に手伝ってもらおうと思って。だから、後でお金頂戴。必要経費だよ?」

「変なことさせるなよ!」

「俺が、そんなことさせると思うか?」

「「思う!」」

俺には全然、信用がないようだ。

新人たちも俺をじっと見ている。

ちっ! またしても娼館が遠のいた。

「まぁ、その件は後で。アイルは?」

「リドルさんに説明してきた。よくはわかってなかったみたいだ。フロウラに行くならナオキから説明してくれ。ただ、このヒルレイクって国は最近、かなり儲かっているって言ってた。主な輸出品は布や綿って言ってたから、たぶん、その勇者の村で採れた綿花のおかげじゃないか?」

アデル湖と勇者の村・ノームフィールドを含む国の名前をヒルレイクというらしい。

「連合国の中でも、ここ数年、発言力も増してきていて、北部の国との戦争も提案してきているんだそうだ。それを止めるのが大変だってぼやいてたよ。あとは、ローカストホッパーの駆除についてお礼を言われた」

やっぱり戦争やる気になっちゃってるかぁ。めんどくさいなぁ。

「諸々了解した。えーっと、まずはこの状況を黙って見過ごしていた土の精霊については、クビで間違いないと思う。神のほうにも報告しておくとして……勇者が勇者じゃなくなった後についてなんだけど…」

「なんか案があるのか?」

「ああ、いくつかあるんだけど、たぶんこれがベストなんじゃないかなぁ、と思うんだよなぁ……」

そう言って、俺は思いついていた計画を話してみた。

「そんなこと、できるのか?」

アイルが顎に手を当てて、考える。

「できると思うんだよね。ただ、相当利権が絡むと思うけど」

「確かに、商人たちには喜ばれるだろうなぁ。連合国としても、推奨せざるを得ないのか……?」

ベルサも天井を見ながら、想像しているようだ。

「ただ、この案は俺が勇者の村の方に行って思いついただけだから。皆も事後処理について考えといてくれ。全く違う事態になるかも知れないし、カードは多いほうがいい」

「でも、ルージニア連合国出身の人間としては、社長の案に賛成です」

「僕もです」

セスとメルモは賛成してくれた。

その後、明日について打ち合わせをして、就寝。

翌日は朝から、全員で簡単な朝食を摂り、各々出発する。

セスとメルモは湖周辺の水源の調査。釣り人から漁師、村で遊ぶ子供にまで、聞き取りをしていき、夜、俺に報告することになっている。

俺とアイルとベルサは山を抜け、砂漠に行って、吸魔草を採取。正直、見つけるのが大変だったが、昼前になんとか群生地を見つけた。

アイルとベルサはその群生地の吸魔草を持って、猫族の村に帰り、吸魔剤を作る。

出来たら、そのまま、勇者の村に行ってもらう。一応、俺への報告も忘れないよう伝えている。

俺は、吸魔草を持って、フロウラへ。勇者の村出身の奴隷の娘・シンシアの買い取りと治療が目的だ。

それから、リドルさんと農園の話をして、事後処理についても、話さなくちゃだな。

出来れば、瞬間移動とかしたいんだけど……、神に時空魔法でも使えるように頼むか?

あ、神にも報告しなくちゃ。

クソぅ! 自分が、あと何人か欲しい。

社員増やすかぁ……。

考えながら走っていたら、なかなかピッタリのヤツを思い出した。

早速連絡してみよう。通信袋に魔力を込め、呼び出してみる。

「元気か? レッドドラゴン」

『……おおっ! ナオキか?』

「人化の魔法は完璧か?」

『ハハ、それがなかなか難しいんだ。それよりどうした?』

「忙しくてさ。悪いんだけど、ちょっと仕事手伝ってくれないか?」

『ふむ。たまには人里に行くのも悪くない。構わんぞ』

「ありがとう。助かるよ」

『あ、黒竜さん。え?黒竜さんも行くんですか?』

通信袋の向こうで、レッドドラゴンが慌てている。

「え!?」

急に通信が一瞬切れた。

『なぁに、我輩の人化の魔法は完璧だ。ナオキ殿には世話になった。我輩も手伝うぞ』

通信袋から黒竜の声がした。

「ちょっと戦力が多めだけど、まぁ、いっか」

黒竜にフロウラの町の位置を教え、そこで合流することにした。

「あいつら肉食うよな」

竜たちの助けはありがたいが、飯の用意が大変そうだ。

新人たちに魔物の肉の確保も伝えておいた。

「よし、肉で釣って、働いてもらおう」