軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

正月明けから仕事をしているコムロカンパニー4話

傭兵の国がダンジョン村を誘致したのは、元ゴーレムの里の廃墟だった。

建物は倒壊し、木々も倒されたまま。広場の噴水から水は出ていないが、そこがそのまま鎮魂の祈りの場となっていて、枯れた花束が大量に置かれている。

花束を置いた本人が、今日も来ていた。

「ドーゴエくん、この村がダンジョン村になることを国が決定した。聞いているかい?」

「ええ。俺たちに気遣うことなくやっちまってください。お久しぶりです。コムロさん」

「こうして話すのは久しぶりだな。コウジの世話をしてくれてありがとな」

「コムロさんの息子と聞いていたから、どんな奴かと思っていたらとんでもなかった。どうやったらあんな風に育つんです?」

「勝手に育ったんだ。あんまり手がかからなかったから、こっちも戸惑っているところだ」

「まだ、あいつを総合学院にいさせてあげてください。人間の磁場みたいなものが発生してるんで」

「学生時代は楽しければいいよ。ドーゴエくんは楽しかったかい?」

「わかんねっす。ただ、自分と向き合う時間にはなりました。外国の社会での立ち位置もなんとなく理解したつもりです。まぁ、コウジたちがいるので埋もれると思いますけど」

「そんなことないだろ。これだけ精密なゴーレムたちとともに過ごした者はいない」

「シェムって学生もグレートプレーンズのダンジョンで過ごしたらしいですよ」

「あれは悪魔が作ったゴーレムたちだ。ちょっと違う。というか、シェムちゃんは物心ついたときには寺にいたからね。アイルが見つけてなかったら危なかった。……ゴーレムの里は気づいてやれなくてすまなかったね」

「いや、これでも隠れ里です。空から見ると、バレるかもしれませんが」

ゴーレムの里は、ドワーフの子孫が作ったと言われていた。傭兵の国の武器、兵器全般を取り扱っていて、独自の技術でゴーレムまで作った。そこに死んだ者の個性まで付け加える技術や霊体を宿す技術まで発展させたという。

そこまで技術が及ぶと、神々にも目をつけられる。俺たちが気づかぬうちに発展を遂げたゴーレムの里は自然発生した魔物に囲まれ、同胞の傭兵たちから里を襲われるような形で滅んだ。

当時、北極大陸に行けばよかったとか、急ぎすぎたとか、邪神に目をつけられたから、などいろんな憶測があったが、俺たちコムロカンパニーはとにかく生き残りを探したが、近くの洞窟に隠れていたドーゴエだけだった。それくらい初動で遅れた。

魔族領との付き合い、傭兵たちとの付き合い、取引も多くしていても、見つけられなかったことを俺たちは後悔している。通信袋も通信襟シャツも、田舎や辺境まで広がっていなかったこともあるが、自分たちは世界中に行けるのに世界中のことをあまりに知らないことを恥じた。

ただ、それからおかしなことが起こる。

作りかけや修理中のゴーレム11体が突如動き出し、ゴーレム技師たちの魂が入ったのではないかと思えるほど、ドーゴエを保護し始めた。俺たちはドーゴエの使役スキル取得を補助し、傭兵として支援する国の姿を見守った。

俺が直接関わったのはわずかだが、ドーゴエと同世代の子どもの親として記憶に刻まれている。

「土台は使わせてほしい。ゴーレム技師たちの工房は再現できないと思うけど」

「大丈夫です。それはいずれ俺がやることですから」

アイルとベルサたちも来て、ダンジョンの場所を決め、廃墟から建物の残骸を取り払い、基礎を固めていった。それでも献花をしている噴水だけは手を付けずにいた。

「おう! もう作業を始めているのか?」

「お、スナイダーさん!」

臨時職員だったドヴァンの親で、傭兵の王とも親しい人だ。

「ドーゴエもいるな。知っていると思うけど、コムロカンパニーがダンジョン村の施工業者だ。仕事は嫌になるくらい速いから、今のうちに要望は取りまとめておいてくれよ。噴水にも石碑を建てられるが、どうする?」

「あ、えっと……。噴水はこのままでお願いします。石碑は小さいので構いません。時々、花を持ってきてやらないとこいつら機嫌が悪くなるんで、献花台みたいなものがあると嬉しいです」

ドーゴエはゴーレムたちを指して、照れながら言っていた。

「わかった。問題ないよ」

俺たちもドーゴエの要望にはすべて応えることにしている。

「もし、ゴーレムたちの意思がわかるなら、何でも言ってみてくれ。叶えられそうなことはやってみるから」

アイルが声をかけていた。

「え? ああ、えーっと、炉がほしいらしいです。あの、炉を壊すときだけ、一瞬、動きますから」

「ああ、わかった。炉の形状は、武器づくりとかで使うものでいいのかな?」

「はい。形はどうでもいいと思います。小さいのでも構いません」

「そうか。ちょっと待ってな」

アイルは、自分の手帳から炉の候補をいくつかドーゴエに見せて、選んでもらっていた。もともと地図作りが趣味だから、炉や竈など生活に密着している物はスケッチしていたらしい。駆け込み寺の参考にいろいろと書き留めている。

ベルサは周辺の環境を作っていた。水路を整え、果物の木を植えている。ダンジョンがダメでも食べていけるように、荒れ果てた畑も復活させている。

俺は井戸掃除と道の整備。それから人工のダンジョンコアで、適度なダンジョンを作っておく。

あとから傭兵たちの職人もやってきてドアやタンスなどの家具を作っていた。

「人は集めたのか?」

ベルサがドーゴエに聞いていた。

「ええ。魔道具に明るい傭兵と、学校の先輩で元冒険者の方が来てくれるそうなんで。アーリム先生が来る前は、結構、魔道具の勉強をしても食べていけなかったようで、冒険者を続けながら勉強していたみたいなんです」

「ああ、そういう人もいるよな。学校は今年で卒業か?」

「そうです。とんでもない後輩がいるので心配はしてませんが、悔いがないように卒業したいですね」

「もし学校で施設を作ってほしいとか要望があれば、マルケス先生に頼むといい。すぐに作ってくれるはずだよ」

「わかりました。ありがとうございます」

「傭兵なんだから、あんまり素直になりすぎるなよ。ちゃんと戦略的にな」

「はい。……起業ってどうすればいいんですか?」

「仕事を見つけて、食える自信がついたら役所に届ければいい。商人ギルドでも構わないけど。なにか傭兵以外の仕事をするのか?」

「人間じゃいけない場所でもゴーレムなら行けるし、重い呪いがかけられている人間にも触れられるじゃないですか。どうにかこいつらを活かしてやれないかと思って」

「ん~、ちょっと待ってろ。ナオキ!」

「聞いてた。たぶん、ドーゴエくんが考えているのは特殊人材派遣みたいな仕事になると思う。要は傭兵じゃ無理でもゴーレムなら行けるし、重いものも持てるってことだろ? 結構、世界中で需要はあると思う。ただ、もちろんゴーレムの整備を学ばないといけないぞ。ゴーレムもそれぞれ違うなら、個別で動きやすいように魔道具を組み込むこともしないといけなくなる。もしかしたら薬品も必要になってくるかもしれない。あとは蓄魔器ができたから、単純に予備の魔力は増えた。学生なんだから失敗しても何度でも挑戦してみることだよ」

「そうっすね!」

ドーゴエは何度か頷いて、ゴーレムたちに説明してから学校へ戻っていった。

「ああいうのは宿命というのだろうか」

アイルがドーゴエの背中を見送りながら言った。

「まだ、わからないぞ。魔道具技師に行き着くか、死霊術に行き着くか、選択するのは彼次第だ」

「なぁ、コムロ社長、酒蔵って作っていいかな?」

スナイダーさんが声をかけてきた。

「作れる人がいるなら、いいんじゃないですか。それは住民たちに任せます」

「そうか……」

新年になって酒が飲み足りないらしい。

ダンジョン村は建物とダンジョンさえ出来てしまえば、あとは移住してきた住民に任せるので楽だ。

なにかアリスポートに持っていく土産を買っておかないとな。