軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43話

「ここは我輩の私塾だ。住処を追われた竜たちを、人族にまぎれて普通に暮らせるよう人化の魔法を教えている。ここなら、人族も来ないからな」

オールバックの紳士こと黒竜が、俺達に説明してくれる。

「人族が来ないって、こんな町の近くにあるっていうのに、どういうことですか?」

ベルサの問いに、黒竜は片方の眉を上げた。

「お主たちは、この港町を見なかったのか?ああ、夜で暗かったか。朝になったら見るといい」

俺は、探知スキルで、港町を探る。

魔物の赤い点だらけ。

では、先ほど俺が見た酔っぱらいは……。

「ゾンビですか?」

「探知スキルで見たか。そうだ。このカリアの町はすでに死んでいる」

「どうして、こんなことに?」

「真相はわからないが、我輩の師匠である竜が、この島の中心でドラゴンゾンビになっていることを考えると、どこぞの勇者にでもやられたのだろう。慈悲深いんだか、なんだかしらんが、その勇者は止めを刺さなかった。師匠はゆっくりと腐っていき、ドラゴンゾンビへと変化したのだろう」

「それが、町にも感染したと?」

「おそらくだ」

黒竜は、額に手を当てて、悔しそうにうつむいた。

「なぜ、勇者だと?」

俺の問いに、黒竜は目を細めた。

「お主ら、どこからやってきた?」

「アリスフェイ王国のクーベニアからです」

「アリスフェイにも勇者はいるだろう?」

黒竜の言葉に3人が顔を見合わせたが、誰も「勇者」など知らないようだ。

「私は、冒険者ギルドに勤めていたが、勇者が現れたなど聞いたこともない、です」

アイルが言う。

「私は、研究で家に篭ってたからなぁ」

「俺も駆除してただけで、よく知らないなぁ」

ベルサと俺が言い訳のようなことを言う。

「では、教会が隠しているのかもしれないな。今はどこにでも勇者がいるからな。精霊達がホイホイ自分の気に入った者に加護を与えて、勇者にしているのさ。その結果が、その娘達だ」

黒竜は、レッドドラゴンの傍にいた娘達を指す。

「竜種は経験値が豊富だからな。勇者から真っ先に狙われるんだ」

首筋にウロコがある娘達が口を開いた。

「私は、北方の森で暮らしていたの。突然現れた氷の精霊の勇者に狙われて、逃げてきたの」

「私は草原の洞窟にいたところを、風の精霊の勇者に襲われた。私は何もしてないのに」

「私は山で、勇者に襲われた。なんの精霊の勇者なのかもわからなかった。とにかく怖かった」

「我は、ただの冒険者に『いい加減外に出ろ』と言われて……」

おい! 最後のヤツ。

「皆、本来の住処から逃げてきた竜たちだ」

黒竜は、逃亡竜を拾ってきては、人化の魔法を教えるのだという。

授業料、1回銀貨1枚というのも、人間たちの町に行った時のためにお金に慣れさせようとしているのだとか。

「水竜ちゃんは何なんですか?」

「ああ、あれは昔、世話した娘でな。500年くらい前に竜と騎士の恋物語を聞かせて以降、思い込みが強くなってしまってな。なるべく関わらないようにしていたんだが、一週間前くらいに、そこのレッドドラゴンを連れてきたんだ」

「海で会ったのだ。ワイバーンをあげたら、『私たち、これで恋人同士ね』って言って、人化の魔法を教えてくれたんだ。でも、我はうまく魔法が出来ないから、黒竜さんの塾に連れて来てもらったんだ」

「それで、なんで水竜ちゃんが怒るんだ?」

「わからん。謎だ」

「大方、あの娘のことだ。自分が連れてきたのに、他の竜と仲良くしていたのが気に入らなかったんだろう。水竜の嫉妬は怖いからな」

黒竜の言葉に俺は背筋がゾッとした。

「ケホッケホッ」

ベルサが咳をした。

「まさか、ゾンビに噛まれたのではないだろうな!?」

黒竜が、ベルサから離れる。

「いや、俺達はゾンビと遭ってませんよ。単純にこの建物が埃っぽいだけです。掃除とかしてないんですか?」

教室の隅の方にはホコリが溜まり、天井には蜘蛛の巣が張っていた。

「ああ、廃墟だったものを使っているだけだからな。特に掃除などは…」

「一応、『ただの冒険者』の他に清掃と害虫駆除をやっているんですが、清掃をしても?」

「ありがたい。最近、喉の調子が悪かったのは、そのせいか」

俺は、部屋にクリーナップをかけ掃除をしていく。

結構大きな屋敷だったが、建物の隅々までクリーナップをかける。

マスマスカルやスモールスパイダーなどがいたが、すべて駆除する。

ゾンビ化しているものもいて、こんなところに住んでいたら、すぐにゾンビになりそうだ。

「実は、かなりやばかったんじゃ……」

事実を伝えると、竜種の面々は顔をひきつらせていた。

なんで、こんなところで塾を開いたんだか。

「人族が近寄らないようにと思って、放っておいたが、やはり、危険だな。害虫駆除とは魔物にも有効か?」

「やってみましょうか?」

「頼む」

「でも、竜の方々がブレスで焼き払ったほうが早いと思うんですが……」

竜たちは首を横に振った。

黒竜の師匠という上位種の竜がドラゴンゾンビになったことで、かなり警戒しているらしい。

「報酬は、竜の加護でいいか?」

「いや、別に欲しくないっす」

「ん~しかし、我輩たちは金貨など持っておらん。魔石はどうだ?」

魔石のせいで、ここまで連れてこられてしまったのだ。

「お断りです」

「では、何がほしい?」

「ん~、そうですねぇ。まず、船と、あとは地図ですかね?」

「ほう、船と地図か。わかった、船の方は心あたりがある。地図は我輩が知っている範囲で構わないか?」

「ええ、それでお願いします」

建物を出ると、すっかり夜が明けていた。

庭の芝生では水竜ちゃんが、竜の姿で気持ちよさそうに眠っている。

「さて、徹夜明けだがゾンビの駆除でも始めますか?アイルとベルサも手伝ってくれ」

「OK!」

「わかった」