軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33話

筋弛緩作用のある毒は、ダンジョンの魔物にはあまり効かないようだ。

出血毒も効果はいまいち。

出血毒ならぬ出魔毒と呼ばれる魔力を垂れ流しにさせる毒は、強制的に魔力切れを起こさせ、効果は抜群だった。

散布しているうちに、アイルとベルサが毒を吸ってはいけないので、完全防備のマスクは渡してある。

基本的には魔法陣で結界を作り、大気を閉じ込めてから散布しているので、漏れ出ることはないだろう、と思っている。

一通り、カミーラの薬学の本に載っていた毒は試せた。

やはり自分の目で見ることによって直接感じることもあるし、ダンジョンだからこそ、という結果が得られたと思う。実際にやってみるもんだ。

最後に、ダンジョンの地面を少し掘り、人工の池を作って、中に毒を少しだけ入れる。

離れた場所から、じっと様子を窺っていると、水を飲みに来た灰色のワイルドベアの亜種が、一口目で倒れた。

現段階で最も強力な毒である。

青紫色の花の茎を煎じて、水分を蒸発させて粉状にする毒で、使い勝手が非常によろしい。

「これ以上の毒は、顕微鏡でもないと探せないだろうか」

俺が一人でうんうん唸って考えていた。

「狂気を感じたな」

「うん、恐ろしい男だったんだな。ナオキは」

アイルとベルサがマスクを外しながら近づいてきた。

「やぁ、手当たり次第にいろいろ使ってみたけど、いろいろとわかってきたことがある」

「わかってきたこと?」

ベルサが首を傾げて聞いてきた。

アイルはワイルドベア亜種を解体し始めている。

身体が消えず、ドロップアイテムも出さなかったからだ。

この灰色ワイルドベアは何を食べたかは知らないが、実体があるようだ。

「ダンジョン産の魔物は、外の魔物よりも魔力が多い。それから、身体の形状を保つためにも結構魔力が必要みたいなんだ。ただ、このワイルドベアみたいに実体を持つようになると、話は別で、毒の効き目はとてもいい!」

「これはグレズリーね」

ベルサは俺の話に頷きながらも訂正してきた。

「へ?」

「この魔物はワイルドベアじゃなくて、グレズリー。遥か北国に住む魔物よ。どうしてこんなところにいるのかは知らないけどね」

灰色ワイルドベアはグレズリーというワイルドベアとは違う種らしい。

ジャングルの中で北国に住む魔物に遭遇するとは。

これもダンジョンだから、ということだろう。

「うへ~虫がひどい!」

解体しているアイルがグレズリーの毛からぴょんぴょん飛び出してくる虫を振り払って、潰している。

俺はアイルにちょっと待つよう言って、飛び出してくる虫をできるだけ捕まえた。

米粒サイズだが、ダンジョン産のダニの魔物だ。

ベルサに聞くと、「こんな魔物に名前なんかついてないよ」とのこと。

出来れば、飼って殺虫剤を作りたい旨を伝えると、

「はぁ? ナオキって変わってるね! 師匠みたい」

ベルサは驚きつつも、小さい魔物を飼う姿に、師匠であるリッサという魔物学者を思い出したらしい。

リッサは昆虫や小さな魔物を中心に研究しているのだという。

ダニは生物なのでアイテム袋には入れられないため、ポンプに使っていた容器を洗い、中に出来るだけ入れていった。

二人は完全に変人を見る目で見ていたが、ダニを駆除できる殺虫剤が見つかれば、売れるはずだ。

感染症対策にもなるしね。

しかも形状も状態も視認出来るほど、大きいサイズだ。思わぬ収穫である。

二人にはあまり伝わらなかったが。

ダニの入った容器を密閉し、腰に下げ、グレズリーにクリーナップをかける。

アイルが解体し、魔石と肉、毛皮をアイテム袋に入れ、余った骨は消し炭に、血は毒の池に流した。

ショブスリが天井に張り付いて、こちらを窺っていた。

池の血が目当てか。

後で、経験値だけいただこう。

奥に進むと、階段がある。

探知スキルを使い、目指してきたので当たり前なのだが、下の階層は探知スキルでも見通せなかった。

階段を降りていく際、何か薄い膜を通るような違和感があった。

岩の壁を照らすと、模様のような魔法陣が壁、天井、床を一周するように描かれている。

丹念に調べたが、毒や転移の魔法陣ではなく、アイテム袋のような亜空間系の魔法陣であることがわかった。

「亜空間か」

「「亜空間?」」

「酸素と重力くらいはあるだろ?」

「「???」」

二人の疑問を無視して進む。

魔法陣を越えると、探知スキルで下の階層に魔物がいることが見えていた。

魔物がいるくらいだから、人間も大丈夫だろう。

階段の下はかなり明るい空間のようだ。

光が階段に当たっている。

階段の先には、赤く、または黄色く色づいた木々がまるで絨毯のように広がっていた。

天井は青く澄み渡る空が描かれているのか、本当に空があるのかわからないが、とにかく空色の青が眩しかった。

天井へと続く階段だけが雰囲気から浮いている。そんな空間が広がっていた。

ベルサもアイルも呆けたように、階段を下りている。

地面に降り立つと、散った枯れ葉がサクサクと音を立てた。