軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31話

マスマスカルは、雑食だが木の実や魔物の肉以外は食べないらしく、ジャングルの木々に被害は少なかった。

ただ、食べられる木に関しては根こそぎ食われていて、無残な樹皮のクズと穴が所々に開いていた。

探知スキルを全開にして、魔物を警戒。巨大な魔物同士が争っているのは、スルー。

今日は、もう魔物を倒す気にはなれない。

ジャングルに入って早々に、麻痺薬の材料になるキノコや眠り薬の材料になる花などが見つかる。

一つ見つけると群生しているので、集めやすい。

夢中になってアイテム袋に入れていたので、ジャングルの奥にまで来てしまっていた。

すでに月は高い位置まで上っている。

「探知スキル無しでは来れなかったな」

俺の近くに寄ってきて、様子を見てどこかへ行ってしまう魔物もいた。

特に攻撃されてないので、問題はなかったが、向こうは体毛が黒いのか、そもそも影の中に住む魔物なのかわからないが、視認は出来なかった。

周囲を見回して気づいたことがある。マスマスカルの死体も巨大な魔物の死体もないのだ。

すでに、俺達がマスマスカルや巨大な魔物を一掃した範囲は越えている。

マスマスカルの肉片や血の跡もちろん、巨大な魔物の死体も一切ない。骨まですっかり消えている。

暗いから見えないだけだろうか。

俺は、ヘイズタートルがマスマスカルに食われ、骨だけになっていく様を思い出していた。それでも骨だけは残っていた。

「骨を食べる魔物がいるのか?」

そう思いを巡らせていた時、小さな魔物の大群が30メートルほど先を通り過ぎていくのを、探知スキルがとらえた。

気配を消し、後ろから回り込んでみる。

視認できるところまで、近づくと大きなフィールドボアの死体が運ばれているのがわかった。

あまりに大きくて、何によって運ばれているのか、すぐにはわからなかったが、蠢く白い魔物が見えた。

月明かりは、巨大な魔物を必死に運ぶマスマスカルの群れを照らしだした。

フィールドボアの死体には巨大な爪痕が刻まれ、巨大な魔物同士の争いがあったことを思わせる。

さらに死体の腹は空洞になっていて、敗者の末路を見た気がした。

マスマスカルの群れは、残飯処理か。

だとしたら、狂ったように海に向かって押し寄せていたのは、いったい何だったのだろう。

巨大な魔物の餌でありながら、残飯処理をする。

個ではなく、群れで行動する。

街で見たマスマスカルとはまったく違う生態に驚かされる。

死体を運ぶということは、巣があるのだろう。

ついていくと、突然、フィールドボアの死体が底なし沼にハマったように、地面に埋まっていく。

地面には枯れ葉や枝で隠されていたが、大きな洞窟の入口があった。

さすがに、このまま洞窟の中にまで付いていって死んだら、バカバカしいので船に戻ることに。

「おかしいとは思っていたが、もしかしたら、それはダンジョンなのかもしれない」

戻ってきた俺の話を聞いたベルサが言う。

アイルは船の柱を利用して、ハンモックを作って、寝息を立てている。

「ダンジョン? って洞窟とかとは違うものなのか?」

「古い洞窟はダンジョンになるという説や、古代の遺跡が幾千の時を超えてダンジョンになるという説とか、魔物の巨大な罠がダンジョンとか、いろんな説があるんだけど、とにかくダンジョンには単なる洞窟にはないダンジョンコアというものが存在しているらしい」

「ダンジョンコア……?」

「いままで世界中で見つかっているダンジョンコアは3つだけ」

「それがあると、どう違うんだ?」

「魔物が自動的に発生する」

「自動的にって!」

「むろん、タンパク質も脂肪も形成されないような洞窟から発生するのだから、実体はない。倒せば煙のように消えてしまう。ただ、経験値が入るし、魔石や討伐部位は残るんだ。そもそも冒険者ギルドの討伐部位ってどう決められてると思う?」

「もしかして、ダンジョンで倒した魔物が落とすもの?」

「その通り」

「でも!」

今日見たマスマスカルは実体があった。

「ダンジョンで発生した魔物はダンジョンの外に出ることは出来ない。今日見たマスマスカルの群れはしっかりと実体があったから、ダンジョンで発生したわけではない…と普通は思うんだけど、私の師匠であるリッサという魔物学者がね。ダンジョンで発生した魔物が、外の魔物や人、つまりはタンパク質とか骨とか、生物に必要なモノを摂取すると実体を伴うようになるという説を唱えたんだ」

「実体がなかったダンジョン産の魔物が実体のあるモノを摂取すると、実体を持つようになると?」

「そう。そもそも設計図は揃っているのだから、身体に要素を取り込んで、設計図に当てはめていくと実体化するというようなことを言っていた」

「それで、どうしてベルサはダンジョンだと?」

ベルサは、一つ頷いて、こちらを見る。

「ダンジョンの魔物は群れるんだ」

「ん?」

いやいや、魔物は群れるんじゃないのか?

街で駆除したマスマスカルもベスパホネットもバグローチも巣を作り、群れていたはずだが…。

「魔物は本来個体で動く。一個体の意志で動くんだ。ただ、種類によって弱い魔物なんかは、群れで狩りをしたり、社会性を持ったりする」

ベスパホネットに女王蜂がいるようなことだろう。

「それでも、仲間がやられたら、普通の魔物は逃げる。散っていく。それが個体の意志だからだ。でも、今日見たマスマスカルの群れは、逃げずに群れ全体が一つの意志を持っているようだった」

「それがおかしいと?」

「そう。ダンジョン産の魔物なら、もしかしたらダンジョンの意志というものが存在しているのかもしれないってね」

ベルサは、ニヤッと笑って、「ますます、この島から離れられなくなってしまった」と言うと、毛布をかぶって「明日は早く起きよう」と眠ってしまった。

「ダンジョンの意志か…なにそれ」

俺のつぶやきは、暗いジャングルから聞こえてくる、風に揺れる木々のざわめきにかき消えた。