軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

243話

2日間、休みとなった俺たちはマリナポートへと続く街道に発生しているワイバーンを狩りに出かけることに。冒険者ギルドで近くの牧場主や行商人から依頼が出ていたのだ。レッドドラゴンもいなくなったから、ワイバーンも再び繁殖しているのかもしれない。

シーサーペントよりも小さく、魔力の壁の中にも入ってしまうので、駆除はどうにでもなる。

「試したい毒があれば、使っとく?」

俺がベルサに聞いた。

「いや、この前森で使ってたから別にいい。っていうか、アイルたち、もう行ってるよ」

俺たちがギルドの食堂で飯食ってる間に、アイルたちはとっとと街道に向かってしまったようだ。

食後のお茶までしっかり飲んでから、どんな罠張ってるのかなぁと思って見に行ったら、アイルたちはワイバーンを布にくるんでいる。

「生け捕りか?」

セスに聞くと、「そうです」と言って説明を始めた。

牧場のオックスロードというウシの魔物の肉を餌にしておびき寄せ、世界樹で使った氷魔法が描かれた布でワイバーンの動きを止めたという。ワイバーンは変温魔物なので体温を冷やしてしまえばほとんど活動ができなくなるのだそうだ。

「春になって暖かくなったから外に出てきたのに、ワイバーンも気の毒だね」

「マズかったですか?」

メルモが聞いてきた。

「いや、駆除業者としては正解だよ」

そう言うとメルモはにっこり笑って、ワイバーンの頸動脈をざっくり切って殺していた。オックスロードの解体場を貸してもらい、3人がかりで解体していく。俺とベルサは時々、ナイフを研いだりして手伝うが、ほとんどアイルたちが作業して、きれいに解体してしまった。

1匹解体が終わる頃には、次のワイバーンが飛んできていて、氷魔法が描かれた布の上でぐったりと動かなくなっている。再び包んで、しっかり冷やしてからサクッと解体。その後、5匹狩ったくらいでワイバーンも飛んでこなくなった。

途中、何度か休憩を挟んだが、作業はほとんどアイルの指示で動いた。

「このくらいの相手なら、ペース配分のバランスも簡単なんだけどなぁ」

アイルは「もっと毒がどのくらいの時間でできるのか、よく見ておくよ」と言っていた。副社長の自覚が出てきて何より。自分で考えてリスク回避できているのがいいな。

牧場で馬車を借り、マリナポートまで持っていき、肉屋に肉を買い取ってもらい、討伐部位を冒険者ギルドに持っていき、皮と一緒に引き取ってもらう。懐はだいぶ温かくなった。

ワイバーンの肉の美味しい部位を造船所に持っていって、テルに渡すと喜んでくれた。トーマスと遊びながら、再び旅の話をしていると、2日はすぐに過ぎてしまう。

たっぷり報酬を受け取って俺たちは船で東へと向かうことに。

「じゃ、また元気でな」

「はい、ナオキ様もお元気で。皆さんも、社長の無茶な要求もあると思いますが、どうか見捨てずに」

テルは、まるで俺の母親のように皆にお願いしていた。俺の旅の話を聞かせれば、そう言う気持ちにもなるのかもしれない。

港にはテル一家のほか工員たちや漁業組合の漁師たちも見送りに来てくれた。漁業組合の人たちもシーサーペントを解体して儲かったようだ。

俺たちの古い帆船は工員たちによってきれいに整備されている。買い取ったことがわかると僅かな穴もないように補修してくれたのだ。

「ありがとう!」

そう言いながら手を振って俺たちは船を出した。皆笑っている。

また来よう。

「やっぱり本物はいいですねぇ」

船長のセスが青い空を見ながら言った。

「社長、なんだか嬉しそうですね」

俺が鼻歌を歌ってるとメルモが声をかけてきた。

「そうか? そうかもな」

「マルケスさんに会うのが楽しみなんだろ?」

アイルが笑っていた。

マルケスさんはこの世界で俺の指針にもなった人で、俺の中ではバルザックやテルとは違った意味で尊敬している。

「マルケスさんってダンジョンマスターなんですよね?」

メルモが質問してきた。

「うん、元水の勇者でもある。水の精霊の件も報告しておかないとな」

「成長剤も補充したいし必ず島には寄るよ。クラゲの魔物が出たら絶対報告してね」

「あのダンジョンがどれくらいになってるかなぁ。久々、全力で戦えるか」

ベルサもアイルもワクワクしている。

「なんだか、怖いです……」

メルモの言葉を聞いて、俺たち3人はニヤッと笑った。

「社長! 海面が白いです!」

数時間後、セスが前方の海を指差して叫んだ。

確認するとクラゲの魔物であるエチッゼンが海面を埋め尽くし、そこだけ海が白く見える。相変わらず、島の周りでは巨大な魔物が繁殖しているようだ。

「エチッゼンだ! アイルー頼むぞ!」

「了解」

以前は船の窓枠を外して、エチッゼンを空に巻き上げたりしていたが、今はアイルが空から剣を一振りすれば、エチッゼンが大量発生した白い海に青い道ができる。

「セス、右だ! 空から島が見えた」

「了解、面舵いっぱい!」

船は青い海の道をゆっくりと進んだ。道が狭くなってきたら、再びアイルが道を作る。それを繰り返し、昼頃に島が見えた。

島には2階建ての家くらいの巨大なカメの魔物であるヘイズタートルがのっしのっしと木々をかき分けて歩いていた。そのヘイズタートルから肉食の魔物であるグリーンタイガーが逃げ惑っている。

「強いものが生き、弱いものが死ぬ。そういう単純なことをこの島は教えてくれるな」

「僕には逆に見えます。強い魔物が弱い魔物に殺されている」

俺の言葉にセスが答えた。

「その強い魔物も小さなマスマスカルの大群に食われるんだけどね」

ベルサは過去に見た風景をセスとメルモに語った。

「どういうことですか?」

メルモがベルサに聞いた。

「今日はその日じゃないか……ま、ダンジョンに行けばわかるよ」

アイルとベルサは船から降りて、ヘイズタートルの攻撃をひらりと躱してとっとと島の奥へと進んだ。俺も船から降りて、ヘイズタートルを押して脇に退ける。ダンジョン産の魔物にとって、島の魔物は貴重なタンパク源なので、なるべく狩らない。

セスとメルモは俺たち3人と同じように、ヘイズタートルを討伐することなくついてきた。

ヘイズタートルは攻撃しても当たらないことに苛ついて首をぶん回していた。その隙に俺たちはヘイズタートルの目の届かないところまで移動。

ダンジョンの入口は変わらず、島の中心部にあった。

中に入り、セスとメルモのために弱いショブスリというコウモリの魔物を倒してみせた。地面には魔石とコウモリの羽だけが落ち、2人とも「どうしてですか?」と聞いてくる。

「そうか。2人ともダンジョンで魔物を見たことがないのか?」

ベルサが聞くと、セスとメルモは頷いた。

「ダンジョンではこのように魔石と討伐部位だけが残るんだよ。これをドロップアイテムともいう」

アイルが得意気に教えていた。

「いや、そもそも冒険者ギルドの討伐部位っていうのは……」

元冒険者ギルドの教官の薀蓄を聞かずに、俺たちはダンジョンの奥へと進む。あとから文句を言いながら追いかけてきて、「泣くぞ!」と脅してきた。

前来た時に通った階段を下りるとそこは春の森があった。

「社長! 空がありますけど!?」

「この階段、どうなってるんですか!?」

セスとメルモが聞いてきたが、俺は「うん」とだけ返しておいた。自分で見た現実は受け入れてくれ。概ね理不尽にできているのだから。

階段を下りて森を進むと、案の定、前方から魔物が走ってくるのが見える。いや、彼らはほとんどスキル持ちのはずだから魔族ということになるのかな。

俺たち5人はあっさりエルフの顔と体をした魔族たちに取り囲まれ、弓矢を向けられた。

「エルフ!?」

メルモが魔族たちを見て、聞いてきた。

「いや、偽エルフ。確か、ガイストテイラーって名前だったと思う」

「あ! ……あなた方は!」

弓を構えたまま、偽エルフことガイストテイラーの一人が叫んだ。前に来た時は20日間ほど滞在したので、俺たちの顔を覚えてくれていたようだ。ま、顔だけじゃなくて格好もほとんど変わってないんだけど。

「久しぶり! 元気? マルケスさんに会いに来たんだ」

俺が手を上げて話しかけると、ガイストテイラーが仲間に事情を説明。一応、マスターの客人ということになったようだ。

「マスターは井戸の底のさらに奥にいます」

「わかった。ありがとう」

ガイストテイラーたちは警戒心を解いて、俺たちを村へと案内してくれた。俺たちもボウや魔族と交流していたため、警戒心はない。

約3年ほど経って、村はガイストテイラーたちは仲間が増え、畑も広がっていた。今はマルケスさんの命令でサツマイモのような物を育てているのだとか。

「毒が入った野菜らしいんですけど、マスターは死にませんからなんでも『美味しい美味しい』と食べてしまうんです」

俺たちを覚えていてくれたガイストテイラーが説明してくれる。

「あれ? 黒い脂の魔物だったよね? カビとはまた別なのかな? ちょっと身体の一部をくれない?」

ベルサがガイストテイラーたちに迫っていたが、「ハハハ、嫌ですー」とあっさり断られていた。

井戸に入って応接間を通り、砂漠を越えて、冷蔵庫と呼ばれる氷河地帯を渡り、キノコの栽培所を通って作業部屋へ。

「あれ? 作業部屋にもいないな。茶畑かな?」

「あ、本が増えてる!」

ベルサは本棚から勝手に新しい本を取り出して読み始めた。マルケスさんは製本も出来る。

「あ、こっちはダンジョンの地図だ。いい地図だなぁ」

アイルも自分の趣味に走り始めた。

「相変わらず、2人とも自由だなぁ。俺たちは茶畑の方に行こう」

「茶畑ですか?」

「もう何が来ても驚きませんよ」

セスとメルモはダンジョンの環境に驚きっぱなしのようだ。

作業部屋から茶畑までは近い。

茶畑では「茶摘み」の歌が聞こえてきた。

マルケスさんが歌っている。

「これがティップ、それからオレンジペコ、ペコ、ペコスーチョン、スーチョン~。これがティップ……」

何語かわからないが楽しそうだ。

「こんちは!」

「お!? おおっ! ナオキくんではないか!?」

「お久しぶりです!」

俺は心の師匠であるマルケスさんと再会した。