軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18話

翌朝は大変だった。

テルが自分のしでかしたことに気づき、泣きながら謝ってきた。主人を床に寝かせ、奴隷の自分がベッドに寝るなんてとんでもないことだという。寝れたら、何でもいいじゃないか。

「何でも致しますから、捨てないでください。愚かな私めに罰を与えてください」

そう言いながら、テルは服を脱ぎ始めた。鞭で叩かれると思っているらしい。

とりあえず、服を脱ぐのを止めさせ、罰はあとで考えることにした。

「そんなことより、今日は旅の準備をしなくてはいけないんだ。町に繰り出すぞ。店の場所がわからないから、教えてくれ。テル」

「わかりました」

そう言って、裸足で出かけようとするので、ちゃんと靴を履かせた。「あと、もうメイドの格好はしなくていい」とエプロンを外させ、黒のワンピースで出かけさせることになった。

パンや野菜など買えるだけ買い、路地裏でアイテム袋に入れていった。

「あのナオキ様、その袋は……?」

テルがいくら入れても膨らまないアイテム袋を不思議そうに見て聞いてきた。

「この袋について絶対に他の人に知られてはいけないよ。商人の仕事がなくなりかねないからね」

「はい、わかりました」

口を結んで大きく頷いていた。

「よし、それじゃ。あとは日用品なんだけど、布やいい匂いの花とか、香水が欲しい」

布は何かと素材で使うし、袋なども足りないので欲しい。

体を洗ったり歯を磨いたりするのはクリーナップで事足りる。

それだと肌が乾燥してしまうので、たまにハンドクリーム的な傷薬を身体に塗るのだが、あまり匂いはよくない。

「女性にプレゼントするんですか? アイル様でしたっけ?」

「いや、錬金術の材料として欲しいんだ」

「ナオキ様は錬金術を……!」

突然の大声に周囲の視線がこちらに向いた。

「あまり知られたくないから騒がないでね」

テルは自分の口を塞いで花屋へと連れて行ってくれた。

花屋で小さなオレンジ色の金木犀のような花を買い、反物屋で丈夫な麻の布1ロールを買った。雑貨屋で歯ブラシや垢こすり用のタオルなども買っておく。

金貨2枚などすぐに使ってしまった。

残りは10ノット、銀貨1枚だ。

俺が財布袋の中身を確認していると、テルがじっと何かを見ていた。

視線の先を見ると、着飾った婦人が筋骨隆々の奴隷を連れて大量の買い物をしていた。

「珍しいものならなんでも、頂くわ! それにしてもうちの奴隷の腕力は強いですねぇ!」

扇子を振りながら、たくましい奴隷の胸を白昼堂々と触れている。

正直、成金趣味のババアという感じがして気持ちが悪いが町行く人の目はそこに集中しているようだ。

「テルはああいう奴隷の男が好きなのか?」

「いえ、ああやって、自分の店の奴隷を買わせようと宣伝をしているのを初めて見たものですから」

「ああそうか! あのご婦人は奴隷商のところの」

「いえ、私がいた店ではなく、暖簾分けした店の奥方ですね。ああいう方法があるなんて、屋敷の外に出ないとわからないものです」

声を上げるのに必死な気がする。自慢というよりも売り込みに近い。

「儲かってるんだろうか?」

「いえ、今はどこの奴隷商も火の車でしょう。戦争もありませんし、冒険者の方々が買うことも珍しくなりましたから。時々、農家の方や船乗りの方が買って行くくらいです。あとは娼館に行きます。私は運が良かったのです」

テルは奴隷商の婦人が去るまで、じっと見つめていた。

戦争や大規模な農園をやらないと奴隷も売れないのか。分業制が発達した前の世界なら、元気があれば仕事はあったが、こちらの世界は仕事の種類が少ないのかもしれない。

「コロシアムみたいなものってないのか?」

「コロシアムですか? 王都にあるという闘技場のことですね」

「やっぱりあるのか」

魔物と冒険者がこれだけいるような世界だから、たぶんどこかにコロシアムくらいはあるだろうと思っていたが。

「コロシアムがなければ奴隷商は成り立たないと言われています」

「そうか」

「ナオキ様は出られないんですか? 国の英雄になれますよ」

「興味が無いな。それに戦闘系のスキルは持ってないんだ」

「そうなんですか」

「さ、買うものも買ったし、宿に帰ろう」

「はい!」

宿に帰り、テルの荷物をアイテム袋に詰めていった。

初めはテルも自分で持つと言っていたが、重い荷物を持って歩き続けなければならず、遅れれば足手まといになるというと、しぶしぶ了承してくれた。

水袋と杖代わりの木の棒だけ持たせることになった。

「あの、ナオキ様そろそろ私めへの罰を……」

「え? ああ、そうだったな。どうするかなぁ……ん~いざというと決まらないものだね」

「何でも致します」

そんなことを女性から言われたらムラムラすると思っていたが、実際はこれからずっと生活していかないといけないし、年齢もそこそこ離れているので下の方に考えがいかない。

「じゃ、冒険者になってもらおうかな? ちょうど残り10ノットあるし」

「冒険者ですか? 私を魔物の巣に置いて行くのですか? すみません、どうかどうかそれだけは……」

テルが泣いてすがりついてきた。一日一緒にいても意思が伝わらないな。

「そうじゃない。ただ、レベルとかがわかってたほうが、こちらも便利だってだけだよ」

「そうですか」

部屋を出て、ギルドの受付に向かい、冒険者の手続きをする。

テルはレベル5だそうだ。ステータスはお金がなかったから教えてくれなかった。

ただスキルはポイントを使わずに、数学レベルが5、料理レベルが7、生活魔法が4と優秀だ。

さすがメイド長だっただけある。スキルポイントについて聞かれたが、追々決めていこう。

「基本的に危ないことはさせないから。それから死にそうになった時は絶対に逃げろ。俺をかばう必要もない。俺に何かあればクーベニアの墓守のバルザックに相談しろ」

「承知いたしました」

「では、これからよろしく頼む。あ、それから夜伽はしなくていいからな」

「へ? しかしそれでは」

何故という顔をしているが、もしかしてテルは俺が熟女好きだと思っていたのだろうか。頭が痛くなってきた。どこから来たのかもわからない俺が、とんでもない性病を患っているかもしれないとは思わないか。

どうしても前世で性欲に負けた人たちが失敗している姿が頭によぎる。

「我慢できなくなったら娼館に行くし、1人でこっそりするから、見つけた場合は見なかったことにしてくれ」

「か、かしこまりました」

「一文無しになったことだし、明日には出発だ。早めに寝よう!」

突然、ドアをノックする音が聞こえた。

開けてみるとドアの前にアイルが立っていた。

「明日、出発するんだな」

「ああ、そうだよ。結構朝早く出ると思うから、寝坊しないように」

「わかった。置いて行かないでくれよ」

「起きられなかったら、後からついてきてくれ」

「それなら、今夜はこの部屋で寝かせてもらう」

「そんなスペースはないぞ」

「いや、あるはずだ」

そう言うとアイルはベッドに潜った。

テルはもじもじしながら俺を見ている。

何を期待してるんだかわからないが、止めてほしい。

「じゃ、俺が隣の部屋に寝ればいいわけだな。テル、明日の朝起こしに来てくれ」

隣のアイルの部屋に行き、ベッドに潜り込む。

アイルのくせに女の匂いがして、なんだかムラムラしてしまった。