軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話

日も暮れかけてきた頃、街道脇の草原に魔法陣を描き、フォラビットの毛皮を敷く。

焚き火を用意して生活魔法で着火。

干し肉を少し炙り、スープを作って晩飯にする。

魔法陣の中に雨や虫が入ってくることはない。

街道から少し離れているし、そこまで迷惑にはならないだろう。

空には満天の星々。

ハーブティーを楽しむ余裕すらあった。

ついてきている誰かは森の木々の影からこちらを見ている様子。

今は夜でも温かいので、なんとかなるだろう。

一応用心のため、周囲に罠を仕掛けておく。

焚き火を見ていると落ち着いてきて、眠たくなってきた。

俺は座ったまま、眠ってしまったようだ。

目が覚めると、近くの草叢で人が罠にかかっていた。

俺をつけてきた奴だろう。

見に行くと、ギルドの教官の女剣士が罠の蔦に絡まって、もがいていた。

罠を解除してやる前に尋問する。

「どうしてギルドの職員のあなたがついてきたんですか?」

「私はもうギルドの職員を辞めた。一介の冒険者にすぎん」

「で、冒険者の……アイルさんでしたっけ? 俺になんか用ですか?」

「その……その前にこの蔦を切ってくれないか?」

「俺に危害を加えませんか?」

「ああ、危害を加える気はない。そもそも私よりお前のほうが強いのに、どうやって……あっ、ちょっと早く切ってくれ。変なところに……」

魔法陣の端を崩し、罠を解除するとアイルの身体に巻き付いていた蔦が解けた。

「ふぅー、助かった。お前はなんという罠を仕掛けているんだ!」

「あまり動かないほうがいいですよ。ここら辺には、まだたくさん仕掛けていますから」

アイルが固まった。

「俺の足跡を踏んでついてきてください」

アイルは俺の足あとを踏んで焚き火の側までついてきた。

地面に直接座り、焚き火を挟んでアイルの対面に座る。

「それで、俺をつけてきた理由は?」

「もう一度、私と勝負してくれないか?」

「ああ、バトルジャンキーですか。俺は強さに興味ないんで他でやってください」

「強さに興味が無いのに、あれほどなのか……」

アイルは驚愕の表情で俺を凝視してくる。

「たまたまです。仕事柄、レベルがよく上がるんです」

「仕事だと!?」

「害虫駆除です。こちらだと魔物・魔獣駆除ですかね?」

「駆除……駆除は討伐と違うのか?」

「違うんじゃないですか? 討伐って1匹でも討伐ですよね? 駆除はその場から種全体を消すことですから」

「全滅!? どうやってそんなことをする? 試験のあと、受付のアイリーンからお前がベスパホネットを巣ごと破壊したと聞いたが……」

「あれは準備して罠を仕掛けて、向こうがこちらの狙い通りに動いてくれたというだけです」

「意味がわからん」

呆気にとられたようにアイルの肩が下がった。

「ん~まぁ、そういう技術があるだけだと考えてください」

「お前に付いていけばわかるようになるのか?」

「まだ、ついてくる気ですか?」

「ダメ、なのか?」

「一人旅の予定だったんで、あんまり旅の仲間は考えてないですね」

「いいじゃないか。魔物が出てきたら私が戦うぞ」

「俺より弱いのにですか?」

「……そ、そうだな」

「じゃ、何かできませんか? 料理とか?」

「料理は苦手だが、魔物の解体なら得意だぞ」

「ああ、でも町に行けば肉買えるからなぁ」

「な、なら、よ……夜伽でも構わんが……」

この世界の女は節操が無いのか、と頭を抱えた。未だにこの世界での人との距離感が掴めない。レベルによる差別はあっても、男女差別はないと思っていたのに……。

「夜伽は止めましょう。俺も我慢できなくなりそうだったら娼館で済ませますから」

「お金がかかるだろ?」

やっぱり娼館はあるのか。

「わかりました。アイルさんは魔物の解体をお願いします。皮を剥いだり、肉を分けたり。夜伽は万一、俺とアイルさんが恋仲になった時にしましょう」

「そ、そうか。了解した。ただ、私のほうが我慢できなくなったら、頼むぞ!」

性の欲求に関しては、男女ともにあるから仕方がないものということなのか。

「善処します。とりあえず、もう遅いですし、寝ませんか?」

「そうだな」

俺はフォラビットの毛皮に寝転がり、羊の獣人に貰ったマントを掛け布団に寝た。

アイルは何かの毛皮を纏って、座りながら眠った。

翌朝、まだ空が白み始めた頃、魔物の鳴き声で起きた。

鳴き声のする方を見れば罠に大きなイノシシがかかっている。

アイルがとどめを刺しているところだった。

血抜きをするために草原に隣接した森に持っていくので手を貸してくれと言われた。

頭と足を持っていこうと言うのだ。

俺は一人で、担ぎ上げ森の木に吊るした。

相変わらず、アイルは呆気にとられていたが、慣れてもらわないといけないので、このくらいのことは出来ることを教えておく。

レベルのせいでステータスも上昇しているのだ。

旅に出る前に、セーラに測ってもらった数値は

レベル72

体力:419

魔力:297

早さ:298

腕力:320

丈夫さ:298

賢さ:不明

スキル

言語能力

生活魔法レベル5 クリーナップ

火魔法レベル1

調合スキルレベル10

探知スキルレベル10

薬学レベル10

錬金術レベル10

数学レベル10

魔法陣学10

工作技術10

魔道具製作スキル10

残りスキルポイントは13。

順調に伸びているらしい。面倒ごとに巻き込まれないうちに、レベルは隠していた方がよさそうだ。

木に吊るされたフィールドボアの首をアイルが斬り、どんどん血が流れている。

魔法陣で地面に穴を空け、血を溜めていく。

特に使い道はないが、血の臭いで魔物が寄ってくると、めんどくさいので出来るだけ隠すようにする。

血抜きが終わると、アイルは腹を裂き内臓をぼとぼとと穴に落とす。

グロいかと思ったが、生命を食うってのはこういうことなんだと思うと、あまり気持ち悪くもならなかった。

皮に切れ込みを入れ、どんどん剥いでいく。

言うだけあって、アイルの手際はいい。

ものの数分で、肉も切り分けてしまった。

「切る場所がわかっていれば、あとはそこに刃を入れていくだけだから簡単だ」

アイルは自分の肉切りナイフを研ぎながら照れている。

頬肉などは専用のナイフがあればもっときれいに削げるという。

「本当に得意なんだな」

俺が感心して言う。

すでに昨日の今日でタメ口になっている。

「冒険者の初心者だった頃、パーティーを組んでもこればかりやらされていたからなぁ。おかげでナイフの扱いはうまくなった気がするよ」

「それで、これは全部持っていくのか?」

「いくらでも入る袋があればいいのだが、少し置いていくしかないな」

「いくらでも……は!? ちょっと待っててくれ」

忘れてた! アイテム袋を作ってなかった!

俺はリュックから、魔力水(魔石粉を水に溶かしたもの)に漬け込んだ糸と針で、袋に魔法陣を縫っていく。

1時間ほどかかりようやく、何でも入れられるアイテム袋ができた。

魔法陣が複雑で、作るのに時間がかかってしまった。

その間、アイルは肉に胡椒や塩をまぶして、仕込んでいた。

「確か、前にパーティーを組んだ時、料理担当のやつがやっていたんだ」

やはり、冒険者として歴が長いといろいろと知っていて助かる。

その後、剥ぎとった皮を鞣して革にしていた。

「で、その袋はなんだ?」

「アイテム袋だよ。なんでもいくらでも入って、簡単に取り出せるんだ。まぁやってみせたほうが早いな」

俺はフィールドボアの肉をどんどん入れていく。

こういう物理法則を無視した魔法の道具は使っていて本当に楽しい。

取り出しも簡単だ。

アイルにやらせてみると、「こんな魔道具、商人に教えられないぞ」と声を潜めて怒っていた。

「確かに、輸送という考えが根本から崩れるかもしれないな。それで、アイル、ちょっと血を1滴くれないか?俺とアイルだけのアイテム袋にしたい、他のやつに使われると面倒なんだ」

「わかった」

アイルはナイフを自分の親指に当て、1滴袋の魔法陣に垂らした。

俺もナイフを借りて魔法陣に垂らす。

その上で、もう一縫いして、2人専用のアイテム袋ができた。

「これで、肉もいくらでも詰め込めるし、腐らなくなった」

「な!? なんだって! 腐らないのか?」

「そう、保存も入れた時の鮮度を保つよ」

「ナオキよ。お前、今、古代のアーティファクト級の魔道具を作ったんだぞ。自覚あるのか?」

「いや、ないね。やっぱり、あんまり人に知られちゃマズいよなぁ」

「当たり前だ。戦争が起こるぞ。どうしてお前の奴隷たちは放っておいたんだ」

アイルが頭を抱えた。

「まぁ、いいじゃないの。アイルが内緒にしておいてくれれば、問題はない。それよりも時間を食ってしまった。荷物が軽くなったんだし、先を急ごう」

「ちょっと待て。今、重大なことを言わなかったか?」

「急ぐぞ」

俺はアイテム袋を肩にかけ、焚き火の側に置いてある荷物を全て詰め込んだ。

アイルの荷物も詰めようとしたが、自分のものは自分で持つと拒否された。

ただ大きい荷物だけは入れてくれとフィールドボアの毛皮や、寝る時の毛皮を渡してきた。

その辺はしっかりしている。