軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話

ギルドに行って、受付でアイリーンに袋ごと渡し、ゴブリンの洞窟についてひと通り話した。

アイリーンはすぐに奥に引っ込んで、お偉方に説明し、後日、王都から調査する人を呼ぶという事になったようだ。

「それで、報酬なんですが……前回のベスパホネットの報酬も全額は未払いですし、今回もこんなに狩られると、ギルドの予算が無くなってしまいまして」

「わかった。じゃ、今度でもいいから、バルザックが生活しやすい環境を整えてくれないか?」

「ナオキ様! 私のことなど!」

「わかりました」

「さて、奴隷を解放するに当たって、何か儀式的なものって必要なの?」

「いえ、特には。主人が解放する旨を伝えれば、解放奴隷になりますよ」

アイリーンが教えてくれた。

「じゃ、これにてバルザックを俺の奴隷から解放する! 今までありがとう! お疲れ様でした!」

「ナオキ様! こちらこそありがとうございます! 死にそうなところを助けて頂いて…」

その後、バルザックが俺との出会いから語り始めたので、宿の方に移動し、食堂で飲む事になった。

肩の奴隷印は、魔法陣で消しておいた。

すっかり日が暮れた頃、セーラが戻ってきた。

「ナ……オキ、様!」

すっかりボロボロにされていた。

セーラに回復薬を飲ませ、食事を頼んだ。

バルザックはゴブリンの洞窟でゴブリンを駆除した事を壮大に脚色して話し、奴隷から解放されたことを明かした。

セーラは泣いて喜び、バルザックに感謝の言葉をかけていた。

「お前が、セーラの主人か?」

3人で飲んでいるテーブルに、ビキニアーマーの女剣士が声をかけてきた。

「そうですが、なにか?」

「やはりセーラから聞いていないのか? セーラは魔法の才能が秀でていることが訓練でわかったんだ」

「おおっ! そうなのか! すごいじゃないか!」

なにか得意なことがあればいいと思っていたから、本当にうれしい。

「私は教官でな。もし良かったら、王都の魔法学院に推薦状を書きたいのだがどうかな?」

「それはありがたいな。セーラ、王都の魔法学院だってよ」

「私は行きませんよ!」

「何故だ!? あれほどの才がありながら無駄にすることはないぞ」

女剣士の教官は食い下がった。

「私はナオキ様の奴隷です。お側に仕えてこそ奴隷です。王都で魔法を学ぶなど、奴隷の私が出来ると思いますか?」

「俺が奴隷から解放すればいいんだよ。なぁ?」

俺が、木のコップから酒を呷りながら言った。自立できるなら、そっちのほうがいい。依存して自由意志もなくなる方がマズいだろう。

「ほら、こう主人も言ってることだし、どうだ?」

「イヤです! 私はナオキ様の傍がいいんです! 王都なんかに行きません!」

セーラは話を受ける気はないようだ。

「そうか。残念だ。すまなかったな食事の邪魔をして」

女剣士がうなだれたように、踵を返し去っていった。

再び3人の食事が始まった。

「それで、ナオキ様はもうFランクになられたんですか?」

「あ、忘れてた。どうするんだっけ?」

「本当ですね。それどころじゃありませんでしたから。確か、討伐部位はクリアしたので、教官と模擬試合をすればFランクになれるはずです」

バルザックが教えてくれた。

「そうか。じゃ、今の女剣士みたいな人と戦えばいいんだな」

「ナオキ様なら余裕です。またレベルを上げましたね? 実力差が2倍以上ですから、問題ありませんよ」

セーラが鑑定スキルを使ったようだ。

「じゃあ、今からランク上げの試験をしてもらえるか聞いてくる。夜だけど、まだ職員はいるだろう」

俺が立ち上がり、受付に行って、ランク上げの試験に申し込むとギルド職員たちがざわめき始めた。

「あの……ナオキさんはランクに興味がなかったのではありませんか?」

「うん、そうなんだけど、バルザックが解放される記念に。安心させてやりたいっていうかさ。Gランクだと何かとバカにされるから、元奴隷としてはイヤかなぁっと思ってね」

「わ……わかりました。あのちなみにレベルの方なんですけど、教えてくれますか?」

「それはやめておこう。俺にも数値的なことはわからないし、面倒なことになると困るからね」

「わかりました。すぐに試験を始めますか?」

「そうだね。出来るなら、酒も入っちゃってるし、そんなに強くない人がいいなぁ」

「善処します。試験代は払ってない報酬から引いておきます」

「ありがとう」

俺はその時、ある決心をした。

ギルドの裏手にある訓練場は小学校のグラウンドほどあり、夜にもかかわらず、訓練をしている冒険者が多かった。

努力している冒険者達の姿は眩しかった。

目の前に、先程の女剣士が現れた。

「あ、さっきの」

「私が模擬試合の教官になった。アイルという。よろしく頼む」

「Gランク冒険者のナオキです。よろしくお願いします」

「お前はその装備でいいのか?」

「はい、あ、なんか木剣とか持ったほうがいいですか?」

女剣士は呆れたように、壁から一振りの木剣を俺の方に向かって投げた。

空中で受け取った俺は、ただ始まるのを待った。

「では、始めるぞ!」

「ナオキ様! お気をつけて!」

見に来たセーラが叫ぶ。

「ナオキ様! 私は眠たくなってきました。お早めにお願いします!」

バルザックが酒瓶を片手に、気だるそうに応援する。

すっかり出来上がっている。

「では、始めるぞ」

「お願いします!」

戦闘の基本は観察からだ。

青いビキニアーマーの胸元につい目が行ってしまうが、ウエストも腹筋が割れ、大きな尻を強調している。

顔もなかなか美人だ。

いやいや、そんなところばかり見ているわけではなく、剣の切っ先や動きも見ている。

目の動きにもフェイントが入っているが、そもそもフェイントをかけられても、対応なんてできないから、ただ驚くだけだ。

アイルという教官が、フェイントをかけて襲ってきた。

とてもゆっくりに見え、躱す事ができた。

高レベルの補正で素早さが高いからだろう。

次は右から上に向け逆袈裟斬りが来る、とわかっていれば躱すのは問題ない。

ただ、こちらから攻撃を仕掛けるのがなんとも申し訳がなく、一度も木剣を使っていない。

迷っていると、急にアイルが姿を消した。

どうやら、光学迷彩の魔法でも使ったのだろう。

探知スキルではバッチリ見えている。

とは言え、光学迷彩で姿を消す剣士ということは魔法剣士というやつだろうか。

さすが、ギルドの教官だ。

来る方向がわかっても、どんな攻撃が来るかはわからないので、何発か貰ってしまった。

ただ、全て魔法陣が描かれたツナギに当たったため、ダメージはない。

そろそろいいか。

バルザックも早めに、と言っていたし、とっととけりをつけよう。

木剣に気絶の魔法陣を描き、探知スキルでアイルの目の前に迫り、木剣を横になぐ。

縦だと避けられるかもしれないからだ。

当たればいいだけの攻撃だ。

木剣はアイルの肩にクリーンヒットし、光学迷彩が解けたアイルはその場に崩れ落ちるように倒れた。

木剣の魔法陣を消し、アイルの身体を起こすように抱えた。

気付け薬をセーラに持ってこさせ、アイルに嗅がせると驚いたように跳ね起きた。

アイルは剣を握りしめ、俺に対峙したが、急に現実を理解したのか、剣を下ろした。

「負けたのか。教官の私が……」

「合格にしてもらえますか?」

「教官に勝ったのだから当たり前だ」

アイルはとぼとぼとギルドの中に入っていった。

その背中を見送りながら、仕事をバカにしたつもりはないんだけど、と後悔した。

「悪い事したかなぁ……」

「さすがナオキ様です!」

セーラの一言で、どっと訓練場が沸いた。

訓練している冒険者たちが試験を見ていたようだ。

バルザックは黙って、手に持っていた酒瓶を渡してきた。

「勝利の美酒とはいきませんか?」

「そうだな。初めての対人戦だったけど、俺にはあんまり向いてないよ」

「そういう思いも全部、酒で呑み込んでしまうんですな」

「ハハ伊達に年取ってないな。バルザックは」

「ええ、ナオキ様の元奴隷ですから」

「これからはFランク冒険者の元奴隷と言えるな」

「はい。ありがとうございます。ですが、ナオキ様はこれからいくらでもランクは上がりますよ」

「まぁ、俺にとってはどうでもいいことだよ」

俺はバルザックと肩を組み、食堂に戻った。

受付からアイリーンが来て、冒険者カードを渡すように言ってきた。

カードをFランクにするそうだ。

そうなると、俺のレベルがバレてしまう。

「アイリーンさん、俺のレベルのことは内緒にしてもらえませんか?」

拝むように頼み、冒険者カードを見せると

「ななじゅうっ……!? ……こんなの誰にも見せられませんよ。Fランク冒険者のレベルじゃありません」

「ありがとう」

アイリーンは俺の冒険者カードを受け取って、受付に戻り、すぐFランク仕様にして戻ってきた。

「いいですか。これでナオキさんはFランク冒険者です。町の外の依頼も多くなると思いますが、責任を持ってやり遂げてください」

「はい。わかりました」

アイリーンから冒険者カードを受け取って言った。

「それから、ギルド職員のプライドをへし折らないように気をつけてください」

「あ、やっぱりさっきの教官に悪い事したかな?」

「……はい。まぁ、勝ったナオキさんに悪気はないようですから、不問にしますけど」

「すみません。あ、そうだこのFランクのカードってどこでも使えるの?」

「へ? は、はい。このカードは全世界共通のものですから。失くさないようにお願いしますよ」

「そうか、じゃ、俺はバルザックが普通に仕事出来てるか見届けたら、この町を出て行くことにするよ」

「な!? そ、そうですか」

アイリーンは驚きながらも納得してくれた。

「どどどどどういうことですか!?」

セーラは動揺しまくっている。

「試験の前に決めたんだ。セーラ、お前は王都の魔法学院に行け。主人として最後の命令だ。魔法学院についた時点で、俺の奴隷から解放する。学費は、アイリーン、俺への未払報酬から出してやってくれないか? 足りなかったら言ってくれ」

「いえ、全く問題ありません」

アイリーンが言う。

「私は、ナオキ様から離れたくありません!」

「いや、ダメだ。これから俺は旅に出るんだ。弱いお前では足手まといなんだよ。セーラ」

今ここで、しっかり突き放さないと、ズルズルと男に依存して、男に媚びてりゃいいと思うような人生になってしまう。俺は悪人でいい。恨まれても、せっかくこの世界で関わった人なんだから幸せになってほしい。

「そそそそんなぁ!!」

セーラは号泣しながら叫んだ。

「魔法学院は何年で卒業なんだ?」

「たぶん7年ですね」

アイリーンが教えてくれる。

「じゃ、7年経ったら、また会おう。それまでにセーラが強くなってたら、一緒に旅にでよう」

温泉にでも行けるといい。

「な……ななねん!? 長過ぎます!」

「優秀であれば飛び級もできますよ」

「ぐひんぐひん……わかりましたよ。そうですか。私を捨てるんですね! だったら私は2年で卒業してみせます! ナオキ様、次あった時は勝負しましょう。私が勝ったら一生ついていきますからね!!」

泣いていたセーラは闘志を燃やしたように、震え始め宣言した。

「まぁ、がんばれ! さ、2人の門出だ!呑もう!」

「ナオキ様のFランク昇級のお祝いもありますよ!」

バルザックが音頭を取って乾杯し、飲み始めた。

その後、ぐでんぐでんになるまで全員酔っ払い、その日はギルドの宿で3人泊めさせてもらうことになった。