作品タイトル不明
ヤマタニ伯爵
第67話 ヤマタニ伯爵
王宮に呼ばれたヤマタニは、正式に伯爵位を叙爵する事になった。
「数々の蛮族討伐と戦功、エルフ関係維持、犯人逮捕、エルフ救助と支援、ならびにハイマール討伐に多大な貢献をした。」
「これによりヤマタニ子爵に伯爵位を与えるものとする。」
「また褒美として、現在のヤマタニ領地の南部の土地を与える。」
「さらに褒美として、金貨二万枚を与える。」
叙爵式に参加した諸侯達からどよめきが湧いた。
「あれが噂の軍神ヤマタニか。」
「是非懇意になりたい。」
「実に素晴らしい。」
という声もあったが、悪意に満ちた声もまたある。
「成り上がり者めが、気取りおって。」
「我ら古参の貴族が真の貴族。あの者は貴族ではない。」
「ハイマールの奴は欲をかき過ぎたな。結果的にヤマタニを肥させただけじゃ。」
「妬ましい。ヤマタニめ。」
などという声があがった。
「続いてアンジェリーナ姫とヤマタニ伯爵の婚約を発表する。」
謁見の間がシーンと静まり返る。
しばらくしてからざわめきと歓声があがった。
「おめでとうございます。」
「これで王家の力は益々上がりましょう。」
「姫様、ヤマタニ伯爵、婚約おめでとうございます。」
という祝福の言葉もあったが、悪い言葉もまたあった。
「なに?王家との婚姻だと!」
「大事件じゃ!ヤマタニと姫が。」
「おいたわしやアンジェリーナ姫殿下。」
「あんな成り上がり者と婚約。あり得ない。」
「お可哀想に、姫様。」
など散々な言われようだったが、祝福の言葉の方が多かった。
叙爵式が終わったあとに、国王家族との、お茶に誘われた。
綺麗な花が飾られ、美術品もなかなか素晴らしい名画や彫刻が飾られていた。
どうしても我が屋敷と比べてしまう。
現実的に贅沢するなら、孤児を一人でも救う方が自分らしい。今後もうちの画家に描いてもらうのが自分にはあっているかな。
しばらく待っていると、国王陛下夫妻にアンジェリーナ姫がやって来た。
ヤマタニは起立して陛下を迎える。
「どうもヤマタニはいつも硬いな。謁見の間じゃないから、普通にしてよい。」
「はい。」
ヤマタニは少しだけ気をゆるめた。
「わっ。貴方様が、あのヤマタニランドのヤマタニ様ね。」
アンジェリーナ姫がヤマタニを見て、身を乗り出して言ってきた。
「はい。そうです。」
「これアンジェリーナ。まずは自己紹介が先じゃ。」
「まず、王妃のジュリアーナだ。」
「ご機嫌いかが、ヤマタニ伯爵。」
「はい。おかげさまで健やかに過ごしております。」
「それは良かったです。」
王妃様はなかなか人柄が良い人みたいでニコニコしていた。
「これがワシの娘のアンジェリーナじゃ。」
「アンジェリーナです。ヤマタニ様、まだ若輩者ですが、よろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします。」
姫というから、もっとわがままな娘か、高飛車でキツイ性格の娘かと想像していた。
良い意味で期待を裏切ってくれた。
明るくて素直で可愛い娘だった。
「ヤマタニ様の屋敷に今から行きたいです。」
「これこれ、ヤマタニも多忙だから、またの機会にしなさい。」
「確かにやる事が沢山ありますが、アンジェリーナ姫のためなら、暇を作りましょう。」
「わぁ。それは嬉しいですわ。」
「姫様の望みはテーマパークでございましょ?」
ヤマタニは思った。年頃の娘といったらテーマパークとかだろう。
まだ遊びたいさかりだから。
「行きたいです。ヤマタニランド。」
楽しそうな姫を見て和んだ。
「ヤマタニランドか、ワシも行きたい。」
「父上様は駄目、ヤマタニ様と婚約したのだから、お祝いに二人で行きたいな。」
なんか婚約者というより、娘をもらった感じがしてきた。
「家族で行きましょう。貸し切りで。」
陛下に続き王妃様まで、テーマパークに興味を持っておられたとは、作って良かった。
「貸し切りなら平日がよろしくでしょう。1日遊んでもらってから、鉱泉温泉でゆっくりしていただけるでしょう。」
「はっはは。それもいいのぅ。」
「ちょっと、ヤマタニ様との記念日にするんだから…。」
アンジェリーナ姫は顔を膨らました。
緊張していたが、意外と王家とのお茶会は、和気あいあいと過ごした。
姫をテーマパークに招待する約束をした。
こうしてお茶会は恙無く終わった。
ヤマタニは帰りの馬車で考えていた。
倒産した会社社長だった自分が、今では伯爵となり王女の婚約者になった。
人生とは本当に分からないものだ。
だが、まだ道半ばである。
救うべき孤児達も、築くべき産業も山ほど残っているのだから。