作品タイトル不明
決戦前夜の奇襲!
第63話 決戦前夜の奇襲!
南支城攻防戦の翌日、エルフ軍とヤマタニは進軍を開始した。
各支城防衛のエルフ兵と負傷兵を残し、ハイマール本城手前の丘に集結し陣を敷いた。
決戦とあって、ヤマタニは事前に館に連絡を取り、2号装甲車ロケットランチャー装備(2号車)とゴドール隊や兵を連れて来るように命じていた。
そして連絡を受けたゴドール隊が、決戦前にヤマタニのいる陣にやって来たのだった。
「2号車は誰が運転してるんだ?」
ヤマタニはそう思って2号車を見た。
「メイソンあたりが運転して来たかな?」
……と思ったら2号車のハッチが開き、レイナが降りてきた。
「何で秘書見習いのレイナが来たんだ?」
レイナがヤマタニを見つけ走り寄ってきた。
「ご無沙汰しております。社長。」
レイナはちょこんとお辞儀した。
「これはどういう事だ?ゴドール」
「はい。それが…。ヤマタニ様が大変だから、あたしも側に行って戦うといって、言うことを聞きませんでした。」
「それで無理やり装甲車から降ろしたら、この始末です。」
ゴドールの顔や腕に引っ掻き傷があり、自分の指で指し示した。
「お前、そんなにお転婆さんだったか?」
「だって~トミーやタクト達が活躍してるのに、あたしだけが蚊帳の外だなんて…。」
もじもじしながら答えるが、何か可愛いい。
「それにしても、運転よく覚えたな。」
「はい。以前から工場の人に教わって、筋が良いと言われました。」
「しかしだな。お前は女の子だし、戦争をしていて危ないから帰りなさい。」
ヤマタニが困った顔してレイナに言った。
「嫌です。帰りません!」
「お前本当にレイナか?俺の知ってるレイナは、もっと聞き分けがよかった筈だぞ?」
「おい、ゴドール。レイナを連れ帰ってくれ。」
「拒否します。また引っ掻かれたり、噛まれたくないですからね。」
ゴドールの左腕にはレイナの歯型がクッキリついていた。
そしてゴドールはさっさと何処かに行ってしまう。
「誰かレイナを…」
と言いかけたヤマタニだったが、蜘蛛の子を散らすように皆が去っていく。
さささささっ!
こういう時だけ、やたら素早いな。
「お前、さてはかなり暴れたな?」
レイナはそっぽを向いて、ヤマタニの視線を反らした。
ヤマタニの説得は聞き入れられず、レイナを帰す事は出来なかった。
仕方無くレイナの運転技術を見てから、判断することにした。
しかし予想に反して、レイナの運転は上手かった。
レイナは装甲車を自分の体の一部みたいに扱う。
それと女性の苦手なバック駐車、縦列駐車が出来た事にビックリした。
その他に武器の扱いもなかなかだ。
機関砲を試しに撃たせたら、的に見事に命中したし、ロケットランチャーも一発撃たせたが、目標の岩に当ててしまう。
トミーより適正が高い。天才か?
下手くそなら、それを理由に帰してしまおうと思ったが、逆に優秀過ぎて何も言えなくなってしまった。
「レイナ、お前秘書より兵士が向いていたんだな。」
ヤマタニはレイナの才能に舌を巻いた。
「おはじきよりも簡単です。」
ヤマタニもレイナも一緒に笑った。
考えてみたら、レイナもタクトもトミーも立派に大人になっていたんだな。
ヤマタニはレイナを2号車に乗せる事にした。
ロケットランチャーで、後方支援なら安全だろうとヤマタニは考えた。
エルフ兵士は半数の約1000名程に減っており、レイナの2号車がないと厳しい状態だった。
さらにヤマタニは最強の援軍を呼んでいた。
上手く行けばの話だが、援軍が来ればきっと勝利するだろう…。
明日は決戦である。
援軍が来るまでは戦闘を扣えて、現状維持に努めたい。
少ないエルフ兵で敵本城を包囲し、援軍を待った。
レイナもタクトもトミーもなかなか出番がないから、暇で暇で仕方ない。
レイナは何処からか、笛を取りだして吹いている。
「ピロピロピー♫ピーポッポッ〜♫」
何処かで聞いた様な懐かしい感じのフレーズだった。
「ピロピロピロピー♫ピロピロピロピー♫」
皆その笛の音色に耳を傾けていると、いつの間にか妖精が現れて笛の音色を聴いている。
「ピーピリリピーリリピ〜♫」
そんな平和な場面だったが、敵来襲でさっと安らぎの雰囲気が消え去った。
「敵来襲!」
その声を聞いて突然、妖精達は危険を察知したのか姿を隠した。
伝令が叫びながらヤマタニと司令官ベレンエストの処へやって来た。
「敵がこちらにやって来ます!」
「荷馬車数台と騎馬隊部隊で、数はおよそ300騎!ハイマールの知将グランベの旗印です!」
「知将グランベが、たった300騎で?」
グランベは情報によると、ハイマール一番の頭脳を持つと言われてるらしい。
そして、ハイマールに悪知恵を吹き込んだり、邪魔な敵を徹底的に調べ排除してしまう。
グランベが狙った敵は一人も逃した事がないという冷酷非道な変人だ。
知将グランベとは、危険で恐ろし男だ。
ヤマタニはそう思った。
「騎馬隊はわかるが、荷馬車が気になる。」
ベレンエストは首を傾げた。
「その荷馬車は何なんだ?」
「暗くてよく分かりませんが、荷馬車の上に武器を乗せた不気味な改造馬車です。」
「あのハイマールの知将グランベ自らやってくるとは、何か策があるに違いありませんね。」
「…とは言っても、どんな策でくるのか検討がつきませんね。」
ベレンエストは頭に手をあてて考えるが、わからない。
「グランベは危険です!以前の戦闘で一番首を取ってきた者は彼です。注意して下さい。」
ヤマタニの脳裏に戦慄が走る!
「何!そんなにヤバい奴だったか。」
「しかし不気味な改造馬車だと!実際に見ないとわからないか…。」
「俺達は装甲車で向かい討つ!」
「こちらは戦闘態勢を整えます。」
ヤマタニとベレンエストは頷き合い配置についた。
ヤマタニは装甲車に乗り込んだ。
そしてトミー、タクト、レイナもそれぞれの装甲車に乗り込んだ。
敵部隊の改造馬車とは、一体どんなやつなんだろうか?
ヤマタニの頭の中で色々な事を想像する。
こんな夜更けに奇襲するとは、敵もなかなか勤勉な奴がいるものだと思うのだった……。