軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

トブは食材を集め屋台をひらく

第21話 トブは食材を集め屋台をひらく

親に捨てられたトブは、一人で生きていくと決めた。

だが、物乞いだけで食いつなぐ生活には限界がある。

腹は満たせても、未来がない。

――なら、自分で稼ぐしかない。

トブはそう考え、食材を集めて屋台を始めることにした。

捨てられていた荷車を拾い、廃材をかき集める。

屋根をつけ、簡単なカウンターを打ち付け、火を使える調理場も作った。

見よう見まねの、手作りの屋台だった。

罠で獲った魚をさばき、鱗を落とし、内臓を抜く。

そこに自分で考えた甘辛い“旨だれ”を塗り、炭火でじっくり焼く。

じゅう、と脂が落ちる音。

香ばしい煙が、通りに広がった。

「お兄ちゃん、この串焼きうまいな。酒が欲しくなる味だ。」

客の一言に、トブは思わず笑った。

――いける。

その日、用意した分はすべて売れた。

それからトブは、毎日のように屋台を出した。

魚の串焼きに加え、野菜スープ。

スグリを煮詰めたジャムと、安いパン。

金をかけずに、工夫で勝負する。

やがて評判が広がり、屋台は繁盛しはじめた。

薄汚れた浮浪児だった面影は消え、清潔な服を着て、髪を整えたトブは、もう立派な商売人に見えた。

掘っ建て小屋を出て、安い貸家へと引っ越す。

少しずつ、だが確実に――前に進んでいた。

(このままいけば……店を持てるかもしれない。)

そんな夢さえ、現実味を帯びてきていた。

それから数ヶ月。

資金は十分に貯まった。

――ようやく、自分の店が持てる。

そう思った矢先だった。

「よぉトブ。ずいぶん羽振りが良さそうじゃないか。」

聞き覚えのある声に、トブの背筋が凍る。

振り返ると、そこにいたのは――父親だった。

「……今さら、何の用だよ。」

吐き捨てるように言う。

「久しぶりの再会だってのに、冷たいな。」

悪びれた様子もない。

あの日、自分を置いて消えた男だ。

「どこ行ってたんだよ。」

「ああ、急な仕事でな。どうしようもなかった。」

軽い口調だった。

――その一言で済ませるのか。

「そうかよ。じゃあな。」

トブは背を向けた。

「待てって。悪かった、謝る。だから――。」

両手を合わせて拝むように言う父親。

だが、トブの心は動かなかった。

「それで終わりか?」

「いや……また一緒に暮らしたいだけだ。」

その言葉を聞いた瞬間、トブの中で何かが完全に切れた。

もう、この人は必要ない。

トブは最後まで取り合わず、仕事に戻った。

気づけば父親の姿は消えていた。

夜。

貸家に戻ると、部屋に明かりがついていた。

嫌な予感がする。

そっと扉を開けると――

父親が、ベッドでいびきをかいて寝ていた。

「……なんでここにいるんだよ。」

揺すって起こす。

「お、帰ったか。」

「どうやって入った。」

「大家に話したら開けてくれてな。」

悪びれもなく言うと、そのまままた布団をかぶった。

「おい、寝るな!」

叩いても揺すっても起きない。

トブは舌打ちし、仕方なく予備の毛布を持ち出した。

「朝になったら出ていけよ……。」

ソファは狭く、体は痛かったが、

疲れのせいで意識はすぐに落ちた。

朝。

目を覚ますと、父親の姿はなかった。

「……やっと帰ったか。」

安堵しかけた、そのとき。

テーブルの上に、見慣れた缶が置かれているのに気づく。

――嫌な予感がした。

震える手で蓋を開ける。

中は――空だった。

「……は?」

頭が理解を拒む。

何度も缶の中を覗く。

だが、現実は変わらない。

全財産が、跡形もなく消えていた。

トブは、その場に立ち尽くした。

握りしめた缶が、かすかに震えている。

(……またかよ。)

声にならない呟きが、喉の奥で消えた。