軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

報告と暗躍

歩きながら話していると、目的地である書斎についた。

離宮にいる時は、眠る時以外は殆どこの部屋で過ごしている。…とは言え、最近は各地を回ったり、王宮に忍び込んで仕事をしている事が殆どの為、あまり離宮にもいないが。

壁一面には、所狭しと本が置かれている。中々の蔵書量だと思うが、一度アルメニア公爵家のそれを見てしまうと少なく思えてしまうから不思議だ。…というか、あの量は個人所有のそれではない。

どっかりと、部屋の一番奥に位置する書斎机に向かうようにして椅子に座った。

何代か前の王族の者が入れたらしい木造のこの机はと椅子のセットは、あまり豪奢なものではないが使い勝手が良い為、結構気に入っている。

「お茶でも持って来させましょうか?」

ルディの言葉に頷き、そして一瞬目を瞑った。

パタンと、微かに扉が閉じる音がする。恐らくルディが部屋の外にいる使用人に声を掛けたのだろう。

この宮には、必要最低限の使用人しかいない。元々王太后が隠居する身だからと、そうしたというのもあるが、命を狙われた私とレティシアが住む事になったというのが大きな理由だ。

「アルフレッド様、貰って来ましたよ」

ルディが執事よろしく給仕をしてくれた。手慣れた手つきで、大抵の事を器用にこなすこの男は、茶を淹れるのも中々どうして上手い。

「ああ…と、これは…」

「アズータ商会人気商品のハーブティーですよ。疲れた時に良いそうで」

「知っている。…気遣い感謝するぞ」

「いえ」

黄色の液体は少し独特な香りだが、美味かった。

「順調に回復しているらしいな、あそこの商会は」

「ええ。彼女もまあ、凄いですよね。無罪が確定したところで、好機を逃すまいと次々新商品を展開していますから。それも、全く新しいものを」

「……随分と、弟も手酷くやられているみたいだしな」

クツクツと笑ってしまう。

理由はどうも矮小なものだったが、タイミングとしては中々良い時に弟は引き抜きを持ちかけていた。

それなりの地位にいる人員…例えば、王都の店舗に所属していた厨房の責任者が最たるものだが…囲い込めたのは評価に値する。

ただ、随分と迎え入れていた人員が偏り過ぎていた。

既に一定以上の評価を得ている者ならば…例えば先ほど挙げた厨房の責任者などは、なるほど確かに店への貢献度が高いだろう。だが、それだけだ。思うに…あのアズータ商会の最たる宝は、斬新な新商品と経営手法。

引き込むのであれば、商品開発部の面々と財務を担当する者から引き抜くべきであった…と、私は思う。

「それからラフシモンズ司祭より、報告が入っております。まず、教皇から。資金着服と、アルメニア公爵令嬢への冤罪、また意図的な証拠の捏造により教皇地位を剥奪。先ほど面会した通り、現在監禁中ですね。あと、枢機卿クラスが2人。それと司祭クラスが3人処分を受けています。その報告書は此方に」

7人の内2人の枢機卿が関与していたか…教会側が完全にエドワード…マエリア侯爵家の駒として動く前に、さっさと手を入れることができたのは僥倖だ。

暫く教会は立て直しに時間を取られる事で、王宮内の派閥争いには参加できないだろう。

「……そういえば、マイロを見なかったか?」

「いえ、特に見ていませんが…まだ戻ってきてないかと」

「ふむ……」

「……呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!!」

ルディとの会話の最中、それをぶち壊すように明るい声が響き渡った。

その声の主は、先ほどまで姿形も見せなかった男。薄い茶色の髪で、顔は妙に可愛らしい…女と見紛うような男。

「…相変わらず、唐突な登場だな」

気配すら先ほどまで全く感じさせず、音も立てずにそこに現れた女のようなその男の名は、マイロ。私の子飼いであり、諜報活動を得意としている。

「そりゃ、“影”だからね。で?何か用?」

「用があるのはお前だろう。さっさと報告をしろ」