軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

使用人達と

「まずは、改めてお礼を。本当に、ありがとう。貴方達のおかげで、こうして無事に帰ることができたわ」

「当たり前の事だって昨日コイツが言ってたろ?それよか姫さん、昨日はよく眠れたみたいだな?」

「ええ。貴方もね、ディダ」

2人の顔は昨日よりも晴れやかで、いつもの表情に戻ってる。最も、ライルは相変わらずディダの軽口に顔を顰めていたけれもども。それすらも無事に帰ってきて、今、身の危険のない安全地帯にいるということが実感できて微笑ましく思う。…それは兎も角、2人ともゆっくり休めたようで何よりだ。

「それで、2人とも。ここからが本題なのだけど…」

「昨日の賊の背後関係ですね?」

「ええ、そう。正直、お父様の忠告通りエルリア様が裏で糸を引いているのならば、甘いと私は思ってるの。けれども時期を考えると、ただの賊とは捨て置けないし」

あんな賊を使わずとも、エルリア様なら如何様にも私を攻撃する手段があると思う。例えば、それこそ王妃という立場と実家の権力をフル活用してでも。

とは言え、タイミングがタイミングなだけに、全く関係ないとも言えない。エルリア様や彼女の実家の思いを汲み取った貴族の行動ないし暴走…そんなところではないか、というのが私の予想。

「その件に関しては、既にターニャと共に調査中です」

「……ターニャが?もしかして、昨日から…?」

「はい。昨晩、屋敷の者に指示を出し、自分でも動こうとしていたので、我々も共に調査をしています」

昨日早く退室したと思ったら…まさか、昨晩から動いていたなんて。本当にあの子、いつ休んでいるのかしら?

「そう…分かったわ。引き続き、よろしくね」

「では、我々は業務に戻ります」

2人が出て行くと、入れ違いにメリダが入ってきた。

「あら、メリダ。久しぶり」

商会の喫茶ラインの現場を任せているから、いつもは店にいるか各店舗を飛び回っていて、この館で会うことは本当に久しぶり。

「お嬢様が危ない目に遭ったって聞いたからねえ。そりゃ、私だって心配して駆けつけるよ」

「ありがとう。でも、見ての通り無事よ?」

「そりゃそうさね。でなけりゃ、私がライルとディダをとっちめてやるさ」

メリダらしい物言いに、思わず笑った。

「それとね、お嬢様から言われていた新商品ができたよ」

「ああ、あれ?今、持ってきてるのかしら」

「いや、報告だけ。慌てて来ちまったもんだから、肝心の品を忘れちまっていけないねえ。後で作って見せるさね」

「 楽しみにしてるわね」

メリダに頼んでいたのは、貿易で隣国から手に入るようになった寒天を使ってのデザート開発。

「あと、あのコーヒー?とかいう飲み物はいつから店に出すんだい?」

それと王都にいる間に、コーヒーが完成した。因みにコーヒー豆はまだ見つかってないので、今回はタンポポコーヒー。前世でコーヒーを欠かさず飲んでいた私からすると、少しコーヒー豆のコーヒーとは少し違う気がするのだけれども…。

「まだ宣伝も何もしてないから、もう少し後になるわね。出すまでの間に、コーヒーを使ったデザートも考えてくれるとありがたいのだけど」

「了解。どうせ久しぶりに屋敷に暫くいようと思ってたところさね。その間は、それに注力しておくよ」

「宜しく頼むわ」

「ところで、久しぶりの王都はどうだった?」

「…もう少し、色々な感情が込み上げてくるかと思っていたのだけど。何も、感じなかったわ」

「……何も?」

「ええ。勿論、友達に会った時や家族に会った時には、懐かしさや嬉しさを感じたわ。でも、王都という場所にはどうやら未練はなかったみたいよ」

「随分とサッパリしてるねえ」

メリダは小気味良くクツクツと笑った。

「サッパリしているというよりも…あそこは、元から“ワタシ”の居場所じゃなかったからかしらね」

“ワタシ”が蘇ったのは、あの事件の最中だもの。王都に深い思い入れができる前にこっちに来てしまったし。“私”にとっても、公爵令嬢という肩書きとユーリ令嬢とのイザコザで、あそこではありのままにいれなくて息苦しかった。

「ふうん、そんなもんかねえ」

「そんなものよ。…私にとって、ここが故郷で、貴女達という大切な家族もいる。だから、それで良いのよ」

「はははっ、光栄の極みだね」

メリダは、それから二三言葉を交わすと部屋を退出していった。

私はそれから、再び資料の確認に戻る。

…税収は、上々。他国との貿易が活発化したことで、商会の収益が上昇。後は高等部で開発された物の販売益も順調に上がってきているようだし。また、雇用が生まれることで個人の収入も上がっている。

中等部の建設も着工した。後は、地方のインフラ整備。…領都はインフラが不便に感じない程に整っているけど、地方はまだまだ上下水道がないところも多い。

それぞれの進捗を確認し、必要なところにサインや手直しをしていたら再びドアからノック音がした。

「……すいません、先ほど伝え忘れたことがありまして。今日にはここを発つので、今宜しいですか?」