軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54話 バリア魔法で水中へ

俺のところまで上がってきた報告書から、海産物の価格が超高騰していることが分かった。

最近はアザゼルに任せっきりじゃなくて、自分でも細かい情報にも目を通すようになったからな。

こういった情報にもいち早く気づける。

更に詳しく見ていくと、やはり高騰している理由は漁獲量が減っていることに起因する。

ミライエの漁獲は、南東に位置する街ウンムと、領主の街ルミエスがほとんどを担っている。

今後は、北のサマルトリアの広大な土地を利用して港を整備し、そこで漁獲量を増やせればいいのだが、街の完成はまだまだ先だろうな。

先のことばかりを考えて現状を放置するわけにはいかない。

漁獲量が減っている理由は……、実は俺のせいだったりする。

俺に原因があるので、こういう情報に敏感になったのかもしれない。

このルミエスの街もかつては漁獲生産の活発な街だった。むしろそれが産業のメインだったと言ってもいい。

それが、街が急速に発展し、領内が豊かになったことで漁師をやめる人が多く出た。

他にうまい仕事が多かったからだろう。

それに加えて、最近俺が軍船ばかり作らせて、資金をそちらに回している。

船を作っていた方が金になるなら、やはり人材が集まるのは当然であり、海の男たちは次第に数を減らしていたわけだ。

やってしまった。

完全に俺のせいだ。

今朝、領主の館には当然のように魚介類が並んでいたが、あれは凄く高価なものだったのか……。

魚介類がなければ、お菓子を食べればいいじゃない。がリアルにできるほど我が領地は豊かだが、今の価格はあまりに不健全である。

それに最近の急速的な発展についてこられていない領民もまだまだいるという。

流れ込んでくる大商人のやり方や、今の変革に納得できる者たちは新しい生活を楽しめているようだが、当然新しい生活に反発する者も出てくる。

全員が生き生きと暮らせない土地に価値なんてあるのかい?

ない!

ならば、新しい仕事をどんどん作ってやるか。

「ようし、新しい試みをやってみよう」

これも最近報告書によく目を通すようになった恩恵だろう。

新しいダンジョンが見つかった報告も受けている。

規模が大きすぎて、今のところ冒険者ギルドは手を出しておらず、冒険者の立ち入りも制限しているところだ。

以前アザゼルが魔族を引き連れてダンジョンの再調査をして、新しくいくつかルールを取り決め、古いルールも同時にいくつか撤廃したところ、生存率が大幅に改善された。

その上、仕事の達成率も大きく上昇したと聞いている。

その功績もあって、今ダンジョンは非常にあついスポットになっている。

ダンジョンを活用しない手はないだろう。

新しい首都から森と荒野を挟んだ西の土地にアルプーンの街がある。新しいダンジョンはここで見つかった。

田舎町で、西に交易で発展している街ヘリオスがあり、北には山脈のどん詰まり、東は未開の地サマルトリアという厳しめの土地だ。

好景気に沸くミライエの中でも未だ、金に目のくらんだ商人たちに目をつけられていない街。しかし、俺にはいい条件だ。

ここに新しい産業を作る。

そのためには下見が必要だ。

「アザゼル、数日ここを開ける。ファンサとともに仕事の代理を頼めるか」

「はい、お任せを」

気づけばファンサに頼ることも多くなってきた。

彼女には雑事も任せてあるので、やはりもっと人を増やさないといけないなと思う。

査定アップも失敗しているし、本格的に人事改革が必要そうだ。

俺の想像があっていれば数日かかる仕事になりそうだ。下手した数週間。

一人くらい補佐が欲しいけれど、皆忙しいしどうしようか。

「我が行こう」

……フェイが名乗りを上げた。

俺が人を探しているのを察したらしい。

断りたい。うーん、断りたい。

確かに最近こいつとは関わる機会が減ってきて、たまには一緒にいたいと思うときもある。

けれど、つい先日の給料アップ査定全却下事件を思い出すと、俺は非常に嫌な気持ちになる。

「お主のやろうとしていることから、美味しそうな匂いがする」

くそっ、アザゼルあたりに聞いたのだろうか。

俺が漁獲量の対策に出ることを知っていた。

全く、全然そんなことに興味がない感じがしていたが、暇なこいつには面白そうなイベントをかぎ分ける力があるらしい。

寝込んでいるときは心配したが、起き上がってしまえばやはり厄介な存在である。

「仕事の邪魔をするなよ」

「我がいつ邪魔したことがある。先日の給料査定も現場から非常に好評ではないか」

実際そうだから反論のしようがない。

単純に給料をアップしているよりも現場の反応が良いのは確かだ。

なんか、腹立つ。

こいつの方が有能とか、普通に腹立つ。

毎日必死に頭を悩ませている俺より、好き勝手飲み食いして思い付きで行動しているこいつの方が有能なんて、そんなの許せない!

けれど、世の中そんなもんだよね。俺はそっと一人泣いた。

「仕方ない、それじゃあ行くか。グリフィンに乗っていこう」

「あいつらも毎日こき使われてそろそろ疲れてきておるじゃろう。久々に我の背中に乗ることを許そう」

フェイの上に?

久々ってか、俺は一度も乗ったことがないぞ。

「くくっ、人間で我に乗ったことがあるのは、お主で二人目になる。感謝するがいいぞ」

そういわれると、非常にありがたいものに思えてくる。

一人目は誰だったのだろうか?

聞いてもはぐらかされる気がしたので、聞かないでおく。

いずれ話してくれるまで待とう。こいつとの時間はまだまだあるのだから。

黄金の翼が開かれ、ルミエスの街にバハムートが姿を現したのは、一か月も街のホットな話題に上がる事件となったが、この領地は毎日何かしら凄いことが起きているので人々も慣れつつある。

フェイの出現は新聞の一面で取り上げられ、人々を大層喜ばせたそうな。

バハムートの飛行はグリフィンとは全く違う。

荒い!!

スピードが桁違いで、風から守るシールドもないので強風がもろに体を襲う。

拭き寄せる風対策でバリアを張ることになったのは初めてだ。目すら開けていられない程の風の勢いは、初めて経験した。

あっという間にアルプーンの街についた俺たちだが、フェイが黄金のドラゴンの姿だったため、街の人たちを驚かせてしまった。

けれど、俺の顔も広く知れ渡り始めたので、ドラゴンから降りてきた姿を見て領民は安心していた。

なんだ、結構認知度高まってんだね。ちゃんと仕事してきた甲斐があるってもんよ。

死の領主として有名なだけかもしれないが……。少し騒ぎになったが、それもすぐに落ち着いた。

さっそく噂になっている新しく誕生したダンジョンへと赴く。

お偉いさんが挨拶しにきたが、そんなのはいい。

一緒についてくるか? と聞いたが、ついてこないらしい。じゃあ、全て俺に任せておけ。

以前、イケメン冒険者アイザスと入ったダンジョンと似たような作りだった。

斜めに下っていく地下ダンジョンで、滑りやすい足元を確認しながら進んでいく。

バリア魔法を使えば楽に進めるが、一般人が通れるか確認するために丁寧に歩いた。

整地すればもっと楽に進めそうだ。

細かいところまで条件を確認する。

俺とフェイだけが通れる場所であってはならない。

魔法も剣も使えない一般人が通れる場所にしなければならない。

斜めに下り終わった先には、広い水場が広がっていた。

ここは水のダンジョンである。

来た、来た! 報告である程度見えていたが、予想していた通りの光景だった。

地下にある広大な水場は、端が見えないほどの規模だ。

どこまで続いているのだろうか?

冒険者からしたら興味のない話だろうけど、ここを管理する気でいる俺からしたら気になる事柄だ。

水も舐めてみる。水質チェックだ。

塩っ気がする。海水に近いだろう。

そして、顔を突っ込み中を覗き込むと、大量の魚群があった。

見たことのない魚だから、おそらく魔物に近い品種だ。

数がすごいことを考えると、水とか水中の生態系が豊かなのだろう。

「フェイ、ちょっと何匹か獲ってくる」

「なんじゃお前。そんな心得があったのか?」

ない! けど、気分の高揚している今の俺なら何匹か獲れることだろう。

ダンジョン内に生えた木の枝を折って、銛とする。

とりゃっ。

服を脱いで、華麗なるフォームで水に飛び込んだ。

水は冷たいが、体にあるバリアで俺の体温が落ちることはない。

やはりバリア魔法最強である。

水中に潜っても、しばらくはバリア魔法内の酸素を吸うことができる。

常人よりかなり長いこと潜水できる。

やはりバリア魔法最強である。

大事なことなので、何度でも繰り返すぞ!

触角を付け、腹の大きく膨らんだ見た目やばそうな魚群が目の前を通っていく。ゆらゆらと泳ぐ姿を、俺を警戒していない。人間を見るのははじめてだろうか。

見た目はやばいが、ゲテモノはうまいと相場が決まっている。

これは簡単な仕事になりそうだ!!

木を突いていく。

「あ、あれ?」

水中の中に俺の戸惑った声が響いた。

どうやら、引きこもってバリア魔法ばかり鍛えていた俺が通用する世界ではなかった。

何度も繰り返したが、魚を獲れる気がしない。速すぎる、速すぎるぞきも魚たち!!

人間を警戒しない訳じゃないらしい。己の瞬発力に絶対の自信があったのだ。

あの触角は事前に危機を察知し、膨れた腹はどうやら瞬発力を発揮する筋肉の塊だったらしい。

通用する世界ではない……。俺はそっと涙を溶け込ませ、水面に顔を出した。

陸で肘をついて寝転がるフェイがいる。

「なんじゃ、一匹もとっておらんな。我は腹が減った。はようせい」

女王様がお腹を空かせている。

少し仕事を早めねば!