軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18話 バリア魔法で呪いを祓う

「村の呪いを払ってくれたら金をくれるって言うんですか?」

「そうじゃ。うちの村はこれでも結構貯えがある。ボーナスも弾むぞ」

目の前の美味しい話に、俺は思わずごくりと唾を飲み込んだ。

ギンガメを倒して得た報酬は、既に手元に残っていない。

余裕でミライエまで持つと思われた資金が1週間持たずに底を尽きた。

それもこれも、高い店で飲み食いし過ぎたせいだ。

パリピ生活の癖が抜けなかったのと、フェイのやつが高い店でお腹一杯に食べた後にスイーツまで注文するから!

外でスイーツを食べたら同じ金額で10倍の量は食べられたのに。

なんてせこいことを考えても仕方ない。

金がなくなったのを今さら後悔しても戻ってきたりはしないので、小さな村を見つけて仕事を貰うことにした。

村長から託された依頼が呪いの解除らしい。

悪いが、そんなスキル俺にはないぞ。幽霊とか普通に怖い。だってバリアをすり抜けそうだし。

「……やります!」

背に腹は代えられなかった。

飯代のために、俺たちは村の呪いと戦うことにした。

村長宅を出て、二人になったところで、フェイが心配そうに俺のことを見てきた。

「大丈夫かの?こんな仕事を引き受けてしまって」

「仕方ないだろ。もう二日も何も食べてないんだ。出来るって言わなきゃ、村から追い出されそうな雰囲気だったし、この先またいつ集落があるかわかったものじゃない」

「飢え死にしたらそれはそれで良い。お主の寿命を待たずにそのバリア魔法を吸収できるからのぉ」

「ぐっ……」

結局のところ、俺の方がやばいって訳か。

こいつなんて何十人前も食べてるからな。元々がドラゴンなので消費カロリーも多そうだが、間違いなく俺よりは空腹に耐えられるはずだ。

先に倒れるのは間違いなく俺というわけか。

「仕方ない。行くぞ。原因を探し出す」

「ほう。やる気じゃないか」

そうでもない。けれど、飯を食わせてくれた村長が家から出てきて、こちらをジトっと睨んでいるのだ。

信頼していないという目つきだ。

サボっていたら何を言われるかわかったものじゃないので、さっそく動く。

原因を特定できなくても今晩の夕食くらいはご馳走してくれるだろう。

ただでさえ、フェイのやつがドン引きするレベルで食べているので、村長への負い目で俺は走り出すように原因を特定しに行った。

村は木の柵で囲われた平和なありきたりな村だ。

水飲み場の井戸から綺麗な水を汲んで飲んでみたら、とても澄んでいて美味しい。

冷たくのど越しがいいのは、ここの土壌が綺麗な証拠だろう。

村の中にはいたるところに丁寧に耕された畑があり、作物が実っている。

食材に特段おかしなことはない。

家畜も飼っているが、こちらも特段異常はなく、村人以上に元気だ。

この村では、一か月前から村人が徐々に不調を訴えて寝込み始めたらしい。

原因不明で、街から呼び寄せた医者もお手上げ状態だという。

近く、癒しの魔法を使う神父さんが来て下さるという話があるらしいが、それよりも俺たちが先に到着したのでこうして仕事にありつけたわけだ。

ラッキーといえばラッキーだが、変なことを背負い込んだのも事実。

「神父だと嘘をつけばもっと楽に稼げたのではないか?」

「たまにとんでもないことを言うよな、お前」

ドラゴンがそういう生物なのか、フェイの性格が悪いだけなのかは知らないが、そんなアイデアは今後も却下だ。

「村の中に異常はなさそうだ。外を回ってみるか」

村長の嫌味な視線に耐えて、俺たちは村の門を開けて貰った。

「日暮れまでに戻らなければ、門を閉める」

それが人に仕事を頼む態度か!と一喝したい気持ちを収めて、今夜の夕食のために静かに村から出た。

村の外には魔物が出るらしい。それを少し間引いてやれば、呪いを解除しなくても村長に少しばかり恩を売れる気がしたが、フェイがいるのでそんな事態にはなりえない。

天然の魔物除け装置と化しているフェイがいる限り、ここに魔物は来ない。

それを村長に言えば、1週間くらいは泊めてくれそうだ。

それ以上の滞在は、きっと食費がかかりすぎて村長に嫌がられるので1週間が限度だろう。

「広すぎて手掛かりなんて見つからないけど……」

勢いよく村を出たはいいものの、あてもない。

そもそも呪いとか全然わからないので、どこを捜索していいのか検討すらつかない。

呪いが事実かすらわかっていない状態だ。

「フェイ、お前は何か知らないのか?」

「人間も殺せぬような脆弱な呪いなど、知るわけなかろう」

それもそうだ。

フェイに害の及ばないものを気にするはずもない。

完全に手掛かりなしという訳だ。

「けれど、なんだかこっちから懐かしい匂いがするのう」

フェイが指さしたのは森の方だった。

村から少し離れた、小さい規模の森だ。

何も手掛かりがないので、俺はその情報に頼ることにした。

「そこへ行こう。呪いとは関係なくても、何かあるかもしれない」

「違うと思うがのぉ。それにしてもこの匂いは何だったか……。数百年嗅いでいないから、思い出せん」

年数まで規模の違う話だな。

とにかく、フェイの嗅覚を頼りに、俺たちは森に踏み入った。

そして、これがビンゴだった。

明らかに淀んだ空気の森だった。

ドラゴンの森とも違う、少し歪な感じ。

何者か強力な魔力を有する者が、この森に影響を与えている感じだった。

「おうおう、これは。あと少しで思い出せそうな感じじゃ!」

魔力が濃くなるにつれて、フェイの嗅覚も鋭くなってくる。

二人の感覚を頼りに辿り着いた先は、小さな湖だった。

「げっ」

遠くからチャポンという何かが水の中に落ちる音が聞こえていたから、綺麗な湖を想像していた。しかし、そのイメージは一瞬で拭い去られる。

赤い湖だった。

澄んだその湖の中には、黒い翼を生やした男が、片膝を抱えて眠るように座っている。

人ではないことは明白だ。

頭にはヤギのような2本の角を生やし、額に怪しげな紋章が浮かんでいた。

宮廷魔術師だった頃に、資料で見たことがある。

「魔族か!」

「こやつ、こんなところにおったか」

「知り合いか?」

「まあのぉ。随分と昔の話になる」

エーゲインの街でアメリアが言っていた、昔にあった人と神々の戦いの頃の話らしい。

ドラゴンと人の戦争だったけど、獣人は人側に付き、魔族はドラゴンに付いたらしい。

高度な知能と強力な魔法を使う魔族だったが、その戦いは人と獣人の勝利に終わったとフェイは言った。

「こやつはアザゼル。神々と人の戦いにおいて、我の右腕として活躍した魔族じゃ。死んだと思っていたが、こんなところで封印されておったか」

「なんかやばそうなやつだな……」

フェイの右腕って、とんでもなく強いんじゃ……。

『封印解除』

フェイの使用する魔法で、湖に眠る魔族を呼び起こす。

少しくらい相談してくれてもいいのに、何も言わずに初めてしまった。

アザゼルを拘束していた透明な鎖が引きちぎられる。

それにしても、器用なやつだ。

「封印まで解除できるのかよ」

「随分と綻びがあったからのぉ。ほころびからこやつの魔力が漏れ出て、村人に影響を与えていたようじゃ。こやつの魔力を毎日浴びていたら、そりゃ魔力に耐性のないものは体長を崩すのも無理はない」

うむ、とフェイが満足げな顔で笑った。

「これにて一件落着じゃの」

違うけど!

絶対に、依頼前より厄介なことになってるけど!

湖の水が突如として、ドバっと溢れてきた。

底に沈むアザゼルの目が開かれる。

縦長の赤い瞳が俺のことを睨んでいた。

絶対に、これ面倒くさいやつだ。

――。

ミナントの最北部の都市に来たオリヴィエは、ここにも聖なるバリア張られているのを見て、シールドが確かにここにいたことを確認できた。

飯屋を回って、聞き込みを始める。

全ての街にバリアを張り終わったから、今度こそこの街にいるはずだ踏んで、意気込んで聞いてまわった。

「ん?聖なるバリアを張ったシールド様か?とっくに旅立ってるよ」

「は?また!?」

「ああ、なんでも自治領主様になるんだろ?既に東のミライエへと旅立ってるよ。うちの店でもたくさん食べてくれたんだぞ。美少女を連れていて、仲よさげだった」

「美少女!?だれよ!それ誰なのよ!」

「しっ、知らねえよ」

酒屋の店主に詰め寄っても仕方ないと冷静になり、とっとと食事を終えた。

「ミライヘね、今度こそ先に……」

またもシールドに会えなかったオリヴィエは、魔法を使って霧と化して店から消えた。

彼女の得意とする移動魔法である。

「お客さん?……あっ、勘定はある」

魔法を使っての移動で、時間短縮を図るオリヴィエであった。