軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話 バリア魔法で路銀稼ぎ

相変わらず、フェイのやつは俺に付きまとってくるくせに何も仕事をしようとしない。

自治領主になったとはいえ、自由な旅を希望した俺は、ミライエへの旅路を楽しむつもりでいた。

ガブリエルから貰った路銀も十分なものだったはずが、隣を歩く見た目は少女、中身は最強のドラゴンが食いつぶしてしまった。

10人前を平気で食うので、ガブリエルはそこら辺を計算した路銀は持たせてくれていない。

「おい、働くぞ。このままじゃ領地を貰ったのに、辿り着く前に死んでしまう」

「お主が働け」

誰よりも食べておいて、こいつは働く気がない。

「野垂れ死にしたら我が食べてやる。その時はバリア魔法を我のものにできるし、何も悪いことなどない」

「ぐぬぬ」

そういうことだ。こいつには働く理由がない。

むしろ俺が死んだ方が、都合いいくらいだ。

見た目可愛らしい少女に働け!なんて言っていると周りから虐待しているのかと勘違いされるので強くも言えない。言ったところで、さっきの論を言われれば、こちらとしてはお手上げだ。

相手が悪い!

「仕方ない。俺が働くしかないか」

思わぬ足止めだ。楽しい旅路のはずが、金欠の旅になるとは。

東へと進む途中、小さな街で路銀を稼ぐために、一時的に拠点を決めた。

『カナテの街』を拠点として、金を稼がねば。

以前は辺境伯の人の好さにも助けられて運良く仕事を得られたが、身分不明、自称新領主の俺を雇ってくれるところなんて限られてくる。

基本的にバリア魔法を街に張って、領主から金をせしめるのはなしだ。

自分のバリア魔法が国を動かすものだと知ったので、もう気軽に使えない。

やはり正体を隠して地道に稼ぐにはあそこしかないか。

俺は冒険者ギルドに来ていた。

「頼むぞ~、いい仕事が見つかってくれ」

フェイと二人してギルドに入っていった。大きな建物には、屈強そうな男や一癖も二癖もありそうな魔法使いが出入りしていた。

俺は冒険者としての経験がほとんどないので、ここでも新規の登録となった。

渡されたのは最底辺のE級冒険者の証。

地道に仕事をこなせば評価が上って、冒険者のランクが上がるらしい。

しかし、それでは困る。

俺は路銀を稼がねばならんのだ。この街で暮らして行くつもりなんてない。

「強い魔物の討伐依頼なんて出てないか?それを任せて欲しいのだが」

相手が強い魔物であればあるほどいい。力に自信のある魔物は、決して逃げたりしない。たいていは、殺意に満ち溢れてこちらを襲ってくる。

襲われる状況さえできれば、どうにでもなる。

しかし、俺の魔法の特性上、逃げるような魔物はどうしようもない。

逃げないで!魔物ちゃん!

「紹介できる仕事は薬草採取とか、最弱の魔物くらいですよ」

ニコニコ顔の受付の人は、強い意志で俺の要求を跳ね返した。

その営業スマイルの下には、まったく笑っていない感情が潜んでいることくらい俺にもわかる。

「仕事はちゃんとこなすから。死んだってそちらには迷惑はかからないだろう?」

「だめです」

スパッと断られた。問答無用らしい。

鉄の笑顔は崩れない。

終わった。俺には薬草採取の才能も、逃げるような弱小魔物を狩る才能もない!

「お困りか?」

イケメンの剣士が揉めている俺たちに声をかけてきた。

なんだこら?イケメンは嫌いだ。やんのか?

「アイザスさん。こちらの冒険者さんがもっと難しい仕事をこなしたいと。無理をされて死なれでもしたら、冒険者ギルドとしても困ります」

自己責任で良いと言ったが、冒険者ギルドも体裁があるんだろうな。無理を言っているのは承知の上だが、こちらも背に腹は代えられないからごねている。

「良かろう。では上級冒険者の世界を見せてやろう。これから冒険者としてやっていくなら、一度上の世界を見ておいても損はないだろう」

なんかすんごい上から目線な人きたー。イケメンだし、上からものを言うし、俺はこいつが嫌いだ。

上から言いすぎて顔が見えないレベルだ。

だけど、こんな美味しい話はない。

連れて行ってくれると言うなら、連れていっても貰おうか。

「報酬は山分けだ。それでいいか?」

「ああ、初回サービスだ。僕たちの世界を味わって絶望させることだろうから、お見舞い金にそのくらいはあげるとしよう」

馬鹿め。報酬は山分けって、フェイも頭数に入れているからな。

こちらの取り分が増えるなら、姑息な手も使う!悪いが、食費がかかっているんだ!

「アイザスさんはこの街最高のB級冒険者。難しい依頼をこなして貰いたいのに、新人さんの相手など……」

「いいのさ。高難易度依頼と新人教育、一緒にこなせることになる。これだって立派な貢献になる」

サラサラの前髪を横にかき分けて、イケメンが受付の女性に告げる。

女性の目がハート状態である。俺のときと明らかに接し方や、口調の優しさが違った。

鉄の笑顔はどこ行った!

「では、ギンガメの依頼をお願いします。難易度としてはA級相当ですが、アイザスさんならこなしてくれるでしょう」

「ああ、それで構わない。僕の力を見せるには強い魔物の方がいいだろうから、それで行こう。魔物の詳細な情報を頼む」

依頼書と共に、魔物の情報も貰えた。

ちゃんと俺の分も用意があるらしい。貰うときに受付嬢に抵抗を感じたが、あれは勘違いだと信じたい。

場所はこの街の近くにあるダンジョンで、地下の洞窟に潜っていくらしい。

ギンガメという魔物の名前の通り、銀でできた体をしており、殻だけでなく身にも弱点がなさそうだ。

特徴として、危険な魔物には違いないが、脅威を感じると甲羅に閉じこもって身を守るらしい。

体が銀でできており、隙間から身を斬ろうにも固くて困難。

甲羅も銀でできているが、特殊な魔力が込められており、物理魔法共に強い耐性を持つ。

なるほど。

……相性が地獄です。

攻撃してよ!

俺のバリア魔法に攻撃して!

なんで甲羅に閉じこもるような魔物の依頼なの?

「おや、顔色が悪いね。ふふっ、あれだけギルド職員を困らせたんだ、今更魔物の脅威に怖気づいて逃げだすなんてないよな?」

「……だれが怖気づいてるって?楽勝だよ」

「ふん、ギンガメを前にしたときにも、そのふてぶてしい態度をとれると良いけど」

詳細を見たアイザスも依頼に問題はないらしく、正式に仕事を引き受けた。

ギンガメの討伐依頼も報酬が美味しいけど、ギンガメ自体も銀でできているので素材を売れば相当な金額になるらしい。

軽く見積もっただけで、かなりの金額になることが分かった。

こちらは三分の二を貰うので、路銀には十分すぎる金額だ。

アイザスと握手を交わして、時間をおいて、一緒にダンジョンに入ることとなった。

イケメンで、この街最高の冒険者であるアイザスは、街の中でも人気者だった。

ダンジョンに入るための準備をするから、街中を回っている時もいろんな人に声をかけられている。

途中、困ったおばあちゃんを助けたり、馴染の八百屋さんと話し込んでいたりもした。

少しキザで、イケメンなので嫌いだったけど、根は凄くいい人みたいだ。

どう考えても、悪役は俺のほうじゃね?

冒険者ギルドでごねて、上級冒険者に寄生するなんて。

器のでかいアイザスと、小物のシールドだ。

冷静に考えれば、周りにはそう見えているに違いない。ていうか、完全にそうなっている!

「ダンジョンに入る前に腹ごしらえもしよう。もちろん僕の奢りだ」

俺とフェイは喜んでついて行った。

アイザスは良いやつかもしれない。うん、飯を奢ってくれるんだ。良いやつに決まってる。

けれど、奢りは後悔することになるだろうな。こちらには腹をすかせたフェイがいる。

――。

獣人の国イリアスに辿り着いたオリヴィエ・アルカナは少し肌寒いこの土地に苦労していた。露店にて、毛皮でできた服を買って、それを着る。スタイルの良い彼女には良く似合う毛皮のコートだ。

「すまないが、このバリアを張った魔法使いを探している」

買い物ついでに情報収集を開始した。

自分で描いたシールドの似顔絵は、だいぶ美化されてかなりのイケメンと化している。

「ああ、人間のすごい魔法使いが張っていったらしいね。これで3年間、この街は安泰らしい」

バリアのことは当然オリヴィエも知っていた。肝心のシールドの行方を知りたい。

先を促すと、続けて答えてくれた。

「そうだなぁ。俺自身会ってはないけど、既に発ったと聞いたぞ。次は南の国に行くって話だったかな」

「えー……うっうっ」

またもすれ違い。オリヴィエは北の国まで来たというのに、またもシールドと出会えずにいた。

振ってきた雪が、より一層彼女を寂しい気持ちにさせる。

頬に垂れた水滴は、溶けた雪か、それとも涙だったか……。