軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

141話 ギフトの恐ろしい力

ハルア国の隣国で、マナリンクスの軍とぶつかり合った。

シールド様が保護しているラブ王大使が国王に掛け合って、ワシが軍が動くことを許可して下さった。

ハルア国と友好関係にある隣国で、マナリンクスの軍を迎え撃つ。

所詮相手はたかだか1000人からなる素人の軍勢だと聞いている。

「ここで止めるぞ、カプレーゼ」

「あいあーい」

なんか気が抜ける。

……まあいい。

相手は一領主の軍勢で、こちらは一国の正規軍だ。

自分がしくじらなければ負けるはずもない。

「でも相手は上昇無敗の軍だけど、シールド様を待たなくていいの?」

「相手は魔法を消し去るギフト持ちだぞ。だから俺たちがこうして出張ってるんだ。シールド様と当たらせるわけにはいかない」

「それもそうだけどさ。なんか少しだけ不安で」

……全く。

自分はその数倍不安を感じている。

けれど、男にはやらねばならないときがある。

自分の場合、それが今であると言える。

幸いにも、我が軍は屈強であり、シールド様の計らいで規模も大きくなっている。

今日も預かっている数だけで1200名いる。

魔族とエルフ、つい先日は竜人族からの志願者も受け入れたので、4種族からなる屈強な軍隊である。

負ける要素は……はっきり言って、ないと思う。

全ては自分がハズレの憑依を引かなければだ。

両軍向かい合ったのが今朝方のこと。

ことを急いているのか、昼には我が軍とぶつかり合った。

全体的にはこちらが勝っている。

土地の有利不利はお互いに無く、補給もイーブン。

このまま時間をかければ相手が瓦解しそうな雰囲気だ。

楽な仕事で終わってくれれば良かったのだが。

「そうは行かないよな」

一気に我が軍が押され始めたと思ったら、巨漢の男が馬で我が軍を押してきている。

「オリバー様。敵将マナリンクスが直々に前線まで来ております」

「来たか」

この時を待っていた。

相手は魔法を消し去るギフト持ちだと聞いていたが、まさか単純な武力まで凄まじいとは。

遠目に見える相手の強さは、単純な膂力でさえ騎士のギガに匹敵するレベルだ。

それに加えてギフトも併せ持ち、用兵術まで優れていると来た。

ミライエの軍が圧倒的に押し込めないのには、マナリンクスの巧みな用兵術もあったからだ。

ならば、ここで戦局を大きく動かすには一つしかない。

「カプレーゼ、出るぞ。あれを討ち取り、この戦いに終止符を打ってやる」

「……でっかー。熊じゃん。熊男じゃん」

グチグチ言いながらも、カプレーゼはついてくる。

なんだかんだと言って、軍人の血が騒いでいるみたいだ。あんな強者を前に、逃げ出すやつは自分くらいだ……。お恥ずかしいが、仕事でなければ逃げていたところです。はい。

敵を蹴散らしながら、猛威を振るっているマナリンクスのもとにたどり着く。

「そこをどいてくれんかね? もう少しでこの屈強な軍が瓦解しそうなんだ」

こちらの弱点を見抜いている。

配置した軍の位置関係から、これ以上マナリンクスに押し込まれると、左右の軍の連携が取れなくなる。

戦闘力、用兵術に長けるマナリンクスにこれ以上やられ放題だと、連携を発たれた後で、確保撃破で全滅もあり得る。

「シールド・レイアレス様から預かった大事な軍だ。これ以上好きにはさせない」

「ほう。ハルア国の援軍と聞いていたが、あのシールド・レイアレスの軍だったか」

顔に付いた汗と血を拭い、マナリンクスが笑う。

「強敵と相まみえるのはいつも嬉しいことよ。名を聞いておこう」

「オリバー」

「カプレーゼ」

マナリンクスが更に嬉しそうに一歩前に進み出た。

遠くからでもわかってはいたが、大きい。

立ちふさがる男は、巨大な壁か何かみたいだ。

「これ程の部下を従えるとは、シールド・レイアレスという男はさぞや器のでかい男なんだろうな。くくっ。ワシが名はマナリンクス。この大陸に新しい時代を齎し、そして最大の敵になるであろうシールド・レイアレスを打ち破るものなり」

「馬鹿なことを言うなって。おっさんごときがシールド様に勝てる訳ないでしょ」

カプレーゼが少し苛立った態度で反論した。

自分もそう思っているが、会わせないに越したことはない。

ここで仕留める。

マナリンクスが巨大な戦斧を構えるのに合わせて、自分は剣を構えた。カプレーゼも双剣を構えて、柔らかい彼女らしい型に入る。

さて、憑依のときだ。

頼む、来てくれ。

大当たり!

大当たりを引ければ、ここでマナリンクスに勝てる。

そしたらシールド様に今一度認めて貰えるはず。

「来たれ、英傑」

求めに応じて、英霊たちが騒がしくなる。

今日は誰が入ってくるのか。

『おいどんでーす』

脳内に声が響いた。

ぐっ。ギリギリアタリの部類か。

古くはウライ国で活躍した超肥満戦士で知られる男だ。

大量の脂肪を身体に纏い、まさに肉を切らせて相手の骨を断つ剣術で名をはせた人物である。

剣の腕は確かだし、彼の膂力も憑依によって自分の体に影響を与える。

一見強そうだが、なぜギリギリアタリなのか。

それは単純に自分に脂肪が無いからである。

わが身を犠牲にした剣術は、この体とは相性が悪い。

どちらかと言えば脂肪が少ない方だ。一撃でも貰えば、骨ごといかれる。

『相手さん強そうだね。でも大丈夫。おいどんの剣術で、なんとかなるっしょ』

「そう願いたいものです」

英霊にあまり失礼なことは言えない。

機嫌を損ねれば次から求めに応じてくれ辛くなる。

全く。なんとも使い勝手の悪いギフトだ。

「ほう。ギフト持ちに、双剣使い。思えば、この軍には魔法使いが少ない。……やはりアーノルドから情報が漏れておったか」

アーノルドとは、先日愚かにもミライエに侵入し、シールド様からものをくすねようとした賊である。

捕らえられ洗いざらい情報を奪っている。

そういう魔法があるんだと。精神力では抗えない魔法だ。魔族の魔法は恐ろしいものがある。

そこからマナリンクスに関する情報は得ている。一日経たずに見抜かれてしまったか。

「魔法をあまり使わぬ者を集めてワシがギフトの対策としたか。まったく、なんという層の厚さか。改めてシールド・レイアレスという男には驚かされる――!」

会話は飽きたのだろう。

いつの間にか後ろに回っていたカプレーゼが華麗なる双剣術でマナリンクスに斬りかかる。

反応はできたみたいだが、少し腕を斬られたみたいで、太く頑丈な腕から血が流れる。

「ちっ。浅いか」

初見で彼女の剣を見抜くのは難しい。

二本の剣を自らの腕のように使用し、蛇のようにくねくねとこちらに迫ってくる。

体の大きいマナリンクスなら余計にやりづらいだろう。

と、いつまでも見ているわけにはいかない。

自分も加勢する。

正面から強烈な突きをお見舞いする。

これは戦斧で防がれた。

『おいどんの力に負けないとは……この男やばいっしょ!』

その通りだと思う。

こうして実際にぶつかり合うと、この男に強さが直にわかる。

なんて膂力だ。ただの木偶であってくれと願ったが、しっかりと中身のある相手だ。

マナリンクスが大きく息を吸ったのが分かった。

何かしてくると思った次の瞬間、マナリンクスが片足で大きく地面を踏みしめた。

その行動だけで、地面がえぐれて土が一枚の層となってこちらに吹き飛んで来た。

剣では防げない。

一旦下がって、土の威力を緩和した。

カプレーゼも下がって防御できたみたいだ。

「大事ないか?」

「もちろん」

このくらいでやられるわけもないが、一応確認だけしておいた。

「悪いが、二人の強者を相手に正々堂々戦うつもりは無い」

「逃げるのかい?」

「それも無理だ。野望があるのでな」

マナリンクスが手をかざす。

何か、魔力とは違う力が集まっているのがわかる。

それが弾けて、アタリに霧状の赤い粉が舞い散った。

こちらにも流れてくる。

躱そうにも、範囲が広すぎてどうしようもない。

軍全体を包み込むほどの規模だ。

「これがお前のギフトか?」

「その通り。ギフトが展開されている限り、この領域で魔法は使えない」

「うちらに魔法なんて関係ないんですけど。ここにきて急に低能ですか?」

カプレーゼお得意の煽りが入ったが、マナリンクスは怒った様子を見せない。

「悪いが、情報は全て漏れていないみたいだな。ワシのギフトは、魔法を打ち消すギフトに非ず」

それが本当だとしたらアーノルドも知らなかったのかもしれない。

魔族の魔法を欺ける手段などないはずだ。

しかし、今目の前のマナリンクスには確かな自信が見てとれる。嘘ではない。そう感じた。

「このギフトの正確な力は、アレキサンダーから受け継いだ魔法体系の制御。人とエルフ、そして魔族が使っている魔法は全てこの体系に分類される。つまり、ワシのギフトで現存する魔法は全て制御可能だということだ」

「消し去るだけではないと?」

「その通り。魔法を消し去るのは力の一部でしかない」

その説明が終わった途端、自分とカプレーゼが片膝をついた。

体が、重い。

辺りに漂う赤い霧が原因なのは明らかだが、何が起きたのかわからない。

「魔法を主体に使わないなら、ワシのギフトの力が及ばないと想定したらしい。しかし、このギフトは相手の魔法体系を制御するもの。そなたら二人の体から勝手に魔法を使わせることも、魔力をただ垂れ流しにさせることも可能だ」

「魔力が枯渇している感覚はそのためか」

自覚はなかったが、赤い霧が現れて以降、自分とカプレーゼの魔力は垂れ流しだったみたいだ。

普段体に収めている魔力が、ギフトの力によって魔法を発動している状態になり、魔力が駄々洩れている。

「ギフトはその数が少ない故にあまり知られていないが、完全に上下関係がある。ワシのギフトはギフトの中でも至高のものである。そしてこの魔法最盛期の時代で、ワシは神としての力を得たにも等しい」

……否定できない。出来る要素がない。

こんな相手、勝ち目などない。もしかしたら、本当にだれも勝てないかもしれない。

シールド様に会わせてはならない。絶対にこの男とだけは。

「カプレーゼ。今の情報を持ち帰れ。絶対にだ」

「逃げれたらそうしたいけど、どうも体に力が入らなくて」

「殿は自分が勤める。全軍、撤退!」

相手を見くびっていた。

シールド様に認めてもらうことはまた失敗したが、最後まで責任は取るつもりだ。