軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

139話 バリア魔法の起源

件の賊は、どうやらベンカー大陸からやってきたことが確定した。

魔族たちが優しく聞いた結果、なにやら計画を話してくれた。

俺の部下たちがひどいことをするわけがないので、きっと優しさに応えてくれたのだろう。

彼から出た言葉によると、マナリンクスなる人物が世界から魔法を消し去ろうとしているらしい。

他所の大陸の話とはいえ、あちらにはゲート地方がある。

ゲート地方の開拓も進めている最中なので、そんなことをされては困る。

「魔法がなくなると困る!」

ゲートも使えなくなるし、バリア魔法がなくなるとめっちゃ困る!

生活に魔法がなくなるとか無理じゃね?

無理、無理。

お風呂も、家事も、生活に密着した魔法だって多くある。

今朝浴びた熱いシャワーも給仕が魔法でお湯を貯めてくれたものを、竜人族の作った水を噴射する装置を通って、俺の全身に浴びせられている。

水圧が強いと、なんかこう滅茶苦茶洗われている感があっていいよね!

それらを無くすだと!?

なぜそんなことをする。

正気を疑うレベルだ。

どうやらマナリンクスの力はギフトらしい。

ギフトは生まれ持った才能だ。

うちの部下にもオリバーというギフト持ちがいる。

今日も軍でせっせと憑依の訓練をしているはずだ。

彼の憑依は安定しないからな。

大事な場面でポンコツが乗り移ったりすることがあるので、ギフトをもっと制御して頂きたい。

とはいえ、アタリを引いた時のオリバーは本当に強い。

軍にいるカプレーゼやギガでさえも及ばない強さだ。

一度、大当たりを憑依させたオリバーを見た時、アザゼルが言っていたことがある。

「おそらくあの状態のオリバーは、シールド様とフェイ様を除き、ミライエ最強ではないでしょうか」

という高すぎる評価だった。

ということは、魔族最強であるアザゼルとベルーガ以上ということになる。

あの二人よりも強くなるタイミングがあるというのは、純粋に驚きだ。

これがギフト持ちの力。

まさに神から愛された力だ。

異世界勇者をこの世界に呼び寄せたカラサリスの力もギフトだ。

異次元の力を付与してこの世界に呼び寄せる。まったく、魔法では説明のつかない力だ。

それと同じものを有しているマナリンクスなら、本当に魔法を消し去ることもできてしまうのだろうか。

本当に困るからやめて欲しい。

嫌だ、嫌だと思っていると、とある疑問が思い浮かんだ。

「そういえば、魔法はいつから生まれたんだ?」

一時になると、とても気になり始める。

傍にいたベルーガに聞いてみる。

「ベルーガって何歳なんだ?」

「……お答えしなければならないですか?」

あ、ごめん。

女性への配慮が欠けていた。

「いや、そのぉ、ベルーガが生まれたときって魔法ってあったのかなーって」

「ありましたよ? 普通に」

数百年前には既にあったらしい。

より知識がありそうなアザゼルを尋ねて更に詳しく聞いてみる。

「私が生まれたのが500年ほど前。ちょうどアレキサンダー様の最後を見たときですね」

「その時に魔法は?」

「普通にありましたね」

「起源はわからないのか?」

「不思議と、魔法に関する起源はあまり書物に残っていないのです。怪しい説はたくさんありますが、どれも信憑性に薄く」

「例えば?」

いくつか例を挙げて貰った。

ある日、空から降ってきた神が我々に魔法の知識を授けてくださったとか、始祖魔法使いが1000日に及ぶ仙人修行で目覚めたなど、どれも怪しい話だった。

「分からないわけか」

「エルフは我々以上に生きますし、もしかしたら知識として残している可能性もあるかもしれません」

「確かめる価値はありそうだ」

穀倉地帯となって久しいファーマスまで足を運ぶ。

ここはエルフのリリアーネに管理を任せた土地だ。

大地一面に、きつね色の小麦が風に吹かれる美しい光景が広がっている。

穏やかな時間が漂っており、麦わら帽子をかぶったリリアーネが出迎えてくれた。

リリアーネは人と関わるのが好きで、この穀倉地帯を観光できるように整備してくれている。

今日も美しい広大な穀倉地帯でエルフ米と小麦の栽培を見に来た観光客でにぎわっている。

午後にはリリアーネからのエルフに関するトークショーもあるんだとか。

生活を満喫しているようで何よりだ。

「魔法の起源?」

「そうだ。俺たちはいつから魔法が使えるようになったんだろうな」

「我々エルフは人の魔法の知識を島に持ち帰り、独自に発展させたと伝え聞いております」

あら。

これは意外だ。

「人が先なのか?」

「ええ。エルフの魔法は人の魔法が起源ですね」

エルフは長命だから、なんとなくエルフが先だと思っていた。

しかし、短命の人間も昔からいるから、別に不思議なことではないのか。

少しだけ魔法の起源に近づけた気がして、少し嬉しい。

こうなれば、とことん突き詰めよう。

マナリンクスが魔法を消し去る目的が何かは知らないが、起源を辿れば彼の考えに少しだけ近づけるかもしれない。

久々にファーマスで過ごした時間は非常に穏やかで、思わず一週間も滞在してしまった。

最高のエルフ米をいくらか分けて貰い、城に戻る。

こういった最高の食材はフェイに届けてやるのがいい。

あいつ食いしん坊だからな。余転ぶだろうなぁ。

ローソンに久々に晩餐会を開くと伝えて、エルフ米にあう料理を用意させる。

フェイとコンブちゃんが席に着き、普段からよく働いてくれている幹部たちも招待しておいた。

初期からいるメンツばかりだったが、こうして大きなミライエになった今再び集うとなんだか感慨深いものがある。

サマルトリアの街に集まる幹部たちを見て、今日はなにか大きな話し合いが行われるのではという話も起きているらしい。

ごめん、ただの晩餐会なんだ。

「みんな集まってくれてありがとう。しばらく魔法の起源を辿っていたのだが、なかなかみつからないものだな。その道すがら収穫したばかりのエルフ米が手に入った。リリアーネが一番出来の良いものを分けてくれたし、今日はローソンに伝えて豪勢な料理も用意している。存分に楽しんでくれ」

酒はベンカー大陸から運ばせた。

こちらの贅沢な酒は皆飲み飽きただろうからな。たまには違う大陸の味も知って貰おうと趣向を凝らしたわけだ。

「魔法の起源か。懐かしいの。コンブ、覚えておるか?」

「いえ、全然」

今日も美肌の維持に余念のないコンブちゃんはフェイの言葉に大した反応をしなかった。

しかし、聞き捨てならない。

「フェイ、懐かしい……って」

「そうじゃ。うーむ、1700年ほど前かの。もっと前かもしれぬ。その頃にアレキサンダーが人でも魔法が扱えるように魔法体系を編み出し、人に伝授したんじゃ。我らが使う魔法の起源を辿ると、もっと前になるんじゃが、人の起源はそこじゃな」

「ドラゴンから来てたのか? 魔法は」

「そうじゃ。アレキサンダーがの、人の繁殖力と賢さを気に入って、やつらに魔法を使わせたら世界が面白いことになるかもしれないと抜かし始めて、100年くらいかけて人でも扱える魔法の基礎を作り上げておった」

俺たちが現在使っている魔法。子供のころから書物を読んで無我夢中で学んで来た魔法の使い方は、アレキサンダーから来ていたのか。

そんなことも知らず魔法を使っていたとは……。

目を200億で落札したのは、今更だがやって当然なことだったかもしれない。

「だからドラゴンの時代なのか」

人が魔法を使えなかった時代まで、マナリンクスは戻す予定らしい。

ドラゴンだけが魔法を使え、人が魔法を使えない世界。

彼のやろうとしていることが少しずつ分かってきたが、当時の時代はどうだったのだろうか?

魔法がない時代=良い時代って訳でもないだろうし。

まだまだ分からないことが多いが、マナリンクスの思い通りにさせるつもりはない。

俺は魔法が好きだからな。特にバリア魔法が。

バリア魔法大時代を作り上げる俺の前に立ちふさがるなら、マナリンクスとやらもぶっ飛ばすまでだ。