軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

101話 戦いを見届ける。あいつ倒れる。バリア魔法で癒す

北の島を耕す日々が始まった。

エルグランド稼働である。

戦争には呼ばなかった。エルグランドは十分強いと聞いていたが、それ以外にも仕事が沢山あるので怪我させるわけにはいかない。

彼の土魔法での仕事っぷりを見て、ひじりも大層喜んでいた。

俺は俺で計画通り、エルフ島本島と北の島をつなぐ橋を建設する。

もちろんバリア魔法で。

地道にバリア魔法を張っていくだけの簡単なお仕事です。

こういう地味な仕事は嫌いじゃない。

なんか心が落ち着く。

サクサクサクっと橋を建設していると、ちょうど橋が繋がったころにギガがやってきていた。

「シールド様、軍も無事ミライエに戻りました」

報告で来てくれたようだ。それにしては闘志が漲っているけれど、なんなのだろうか。

「お疲れさん。しばらく休むと良い」

「ありがとうございます。それと傭兵団アトモスの代表が来ております。シールド様に用があるとか」

おおっ、やはり来てくれたか。まああれだけいい条件を提示してやったんだ。来てくれるとは思っていた。

「アトモスという男、かなり強いですね。一度手合わせ願いたい」

「ふふっ、お前はいつもそれだな。……あ」

言ってる途中で気づいちゃった。

ギガがこんなにも闘志をみなぎらせてこの地にやってきている理由に。

こいつまさか、本気か?

「シールド様、お休みはどのくらい頂けるのでしょうか?」

休みってか、療養休暇になっちゃうのかな?

「気にしなくていい。存分にやってこい」

「はっ!」

漢だ。こいつ、本物の漢だよ。

強いものを見つけたら戦わずにはいられない。

一応制御は効くみたいだが、止めてやりたくもない。

しっかりと働いた分、報酬を出してやらねば。

その報酬がまさか、異世界勇者との戦闘だとは。

ドラゴンたちでさえ避けるあの異世界勇者に好んで立ち向かうやつって、ギガくらいじゃないだろうか。

「見届けるか」

橋の建設も一区切りついたし、折角だからその雄姿を目に焼き付けようと思う。

北の島に戻ると、化け猫ヴィヴロス3世の背中にしがみついてはしゃいでいるひじりの姿があった。

化け猫に乗って、エルグランドの土魔法を観察しているらしい。

大地が大きく様変わりする光景は見ていて楽しいよね。わかります。

「異世界勇者鞍馬ひじり殿」

気づけば、ギガは既に彼女に歩み寄っていた。

「なに?」

「お初にお目にかかります。魔族のギガと申します。シールド様に使える軍人です」

「ふーん、戦場で見かけた気がする。地上からすんごい殺気を飛ばしてきてた魔族だ」

「私も地上よりその雄姿を見ておりました」

二人は初対面だが、実は戦場ではかなり接近していた。

お互いを遠くに感じ取れるほど強大なパワーを持った者同士だというわけだ。

「武人として、お手合わせ願いたい」

「……死ぬよ?」

「本望なり」

戦いの中で死にたい。いかにも戦闘狂が発しそうな言葉である。

そして、二人の戦いは火ぶたを切られた。

10分後、北の広大な草原の上で、生まれたての小鹿のごとくプルプルと倒れ込むギガの姿があった。

回復魔法を使えそうな人がいなかったので、回復用のバリア魔法を張っておく。この中で包まれていると、癒しの効果があるんだ。これで傷をいやしてくれ。

ギガも弱い訳じゃないんだけどな。むしろ、かなり強い。

一人で宮廷魔法師一人と渡り合えるレベルだ。

しかし、挑む相手が毎度毎度悪いんだ。

フェイもひじりも、この世の頂点に立つ生物だぞ。恥じることはない。

いいや、恥じてはいないだろう。むしろ、満足そうな顔して意識を失っていた。

「いててて。強いね、その魔族の人」

ひじりが少し拳を痛めていた。殴るほうも痛いんだぞって誰かが言っていたが、そうらしい。

「ああ、自慢の部下だ」

いざって時に頼れる部下ばかりで非常に助かっている。

「エルグランドも凄いだろ?」

「うん。こんな豪快な魔法は初めて」

そう。戦闘でも使えそうなほどエルグランドの土魔法は凄い。

しかし、その力もひじりを前にしては及ばないどころか、傷一つ付けられないかもしれない。

けれど、こうして日常に舞台を移せば、役に立つのは聖剣魔法なんかよりも、土魔法なのだ。

「無能なお前とは違い、エルグランドは有能で助かる」

「は?殺す」

ひとしきり鞍馬ひじりをからかったところで、この地にはもう用はない。

後は彼らに任せていいだろう。

「うん、やっぱり凄い土壌だ。凄すぎる。ここでなら、私が望んだ最高の大豆を育て上げられる気がする」

「あんまり夢中になりすぎて、元の世界に戻る魔法のことを忘れるなよ」

「ギクッ」

そんなわかりやすい反応されても……。

本島に忘れていたのか。

そりゃ何かを育てたいと思う人間がこのエルフの土地と出会えたら感動するのはわかるけど。帰りたいっていうあの強い気持ちはどこへやら。

「認めてあげる。ミライエ、少しだけ面白い。もうちょっとだけいてあげるわよ。せめて最高の醬油が完成するまではね」

「おう、頼んだ」

これ以上からかうのはやめておこう。

ミライエのことが好きならば、それ以上に望むことはない。

「ひじり、ゆっくりしていけ」

「うん、わかった」

さてさて、最後にしっかり者のミラーを呼び寄せて、仕事を任せておく。

「ミラー、エルグランドとひじりの手綱をしっかりと掴んでおくように。お前にしかできないから、頼んだぞ」

「はっ!シールド様のご期待通り、上手に制御いたします」

「頼もしいな」

ミラーは馬鹿げた力を持つ連中の制御がうまい。

行く先々できっちりと仕事をこなし、エルグランドと成果だけを持ち帰る。

ふむ、サマルトリアの城に戻ったら、ミラー騎士にする手続きを始めようと思う。

カプレーゼとオリバー、ギガとミラー。新しく騎士候補としてアトモスも加わる。

軍も層が厚くなってきて、大変満足である。

久々に戻ったサマルトリアでは、アザゼルが忙しく動き回っていた。

「シールド様、傭兵団アトモスは全て受け入れ、軍に入れております」

「助かる。そうしようとしてたんだ。彼らの不満が出ないように、軍と調整してやってくれ」

「はい。それと、アトモスの妹の件ですが」

妹……。

思い出した。アトモスを勧誘する際に使った妹の呪いの件だ。

このミライエなら治療方法が見つかるかもしれないと餌を垂らしたんだった。

「治療方法が見つかりました。魔族で知っている者がいましたので、近日中に手配いたします」

はやっ!

そりゃ数年したら見つかる可能性あるよねー、とか思っていた。見つからなくても、俺のバリア魔法でアトモスの妹は楽になっているから恩を売れたと思っていたのに。

はやっ!見つかるのはやっ!

ここにも優秀すぎる部下がいました。

「非常に助かる。アトモスも喜ぶだろう」

これでまんまと最強の傭兵団も我が国の正規軍加入だ。

強すぎるミライエ、また強くなる。

「そしてもう一件。召喚ギフトでこちらの世界に呼ばれた異世界勇者ですが、それもなんとかなるかもしれません」

はやっ!

こっちもはやっ!

そりゃ数年したら見つかる可能性あるよねー、とか思っていた。見つからなくても、ミライエで幸せに生きてくれたらと思っていたのに。

はやっ!見つかるのはやっ!

「その言い方だと確証はまだないらしいな」

「はい、しかし、可能性があるのも確か」

「なるほど」

ひじりは今大豆作りに夢中だ。中途半端な希望は持たせない方がいい。

話が確実なものだと分かってから、ようやく選択肢を提示するべきだ。

あれだけ馬鹿げた力を持った存在は、慎重に扱わねば。

「アザゼル、この話は俺とお前の間で留める。当分はな」

「はい。もちろんでございます」

またミライエが慌ただしくなりそうだ。

城から見えるミライエの街は、人々が忙しく動き回っている。

何も無かった頃を思い出せない程、今は活気に満ちた街になっている。

それを眺めつつ、俺は非常に心地良い気分に包まれた。

まだまだ問題は多いが、今日は天気が良い。

テラスで日を浴びながら、ゆっくり読書でもしていようかな。