軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:スタートダッシュからのマイペース

そもそも俺達の拠点がある 微睡(まどろみ) の森の木は、そんなに安い物じゃない。

木材とはいえ少し特殊な素材だ。NPC売値だって普通の木材の倍では収まらない。

それを、拠点から浜辺に降りるまでっていうそれなりの距離まで道を作った時に手当たり次第に伐採して、多少はフリマで売ったとはいえ、結構な在庫として持っていた。

そしてそれが、オークションなんて販売形態を取ったから、怒涛の需要に合わせてNPC売値を遥かに超えた金額で売却されたわけだ。

需要の高い超レアドロップアイテムに天文学的な金額がつく、あの現象。

その売り上げを、俺達はまるっとイベント用の食料購入に充てている。

なお、プレイヤーのインベントリ容量は決して少なくないし、俺と相棒は二人な上に夫婦共有分も含めれば実質三人分の容量になっている。

食料はその容量を全部使い切る勢いで詰め込んでいた。

……つまりだ、結果を言おう。

『テレパスイヤーカフス』に必要なポイントの内、三分の二が終わった。

「シスターさんが口開けて小麦の山見上げてたのちょっと面白かった」

「……うん、わかる」

納品するのに積み上げて思ったよな。どこの業者だ?って。

たまたま教会にいた他のヤツにまたもドン引きされた気がする。

……たぶん『テレパスイヤーカフス』は廃人向けの高額ポイント景品だ。同ランクの景品と見比べてもそれは間違いない。

イベント期間中毎日毎日せっせとポイントを稼いで、残業の無い社会人がそれでギリギリ間に合わない有給が必要ですとか、そんなレベルの物。

それをもう三分の二終わらせたんだから、どれだけゲーム内通貨に物を言わせたかがわかる。

もしかしたらオークション直後のあの時、俺達は全プレイヤー内でトップクラスの金持ちだったのかもしれない。

そんなわけで、イベント期間中毎日毎日せっせとポイントを稼がないといけなかったはずの俺達は、相当余裕を持ったエンジョイプレイができる事になった。

「いつも通りじゃん」

「そうだよ」

いつも通りでよくなっただけだよ。

ありがとうオークションの人。

二度とやりたくはないけどな。

「じゃあここからは何やろうか?」

そうだな。

一気にポイントを稼いだからって、イベントが終わったわけじゃない。

『テレパスイヤーカフス』はひとつ二個入りだから交換は一回で済むが、まだ必要ポイントは三分の一残ってる。

「そうだな……とりあえず料理とかは?」

それこそ俺達が大量に食材をぶちこんだからクエストは山程ある。

……というか、現在進行形でプレイヤーっぽい料理人達がキラキラした顔でシスターから食材を受け取っていく最中だ。

教会の調理場は全員受け入れる余裕なんて無いだろうから、どこかで作って完成品を納品しろって事なんだろう。もちろん現場での炊き出しクエストもある。

相棒は一緒にミッションクエスト一覧を見て頷いた。

「うん、いいんじゃない。僕もお菓子作りならレシピあればできるから……これかな『軽食クッキーの納品』」

「じゃあ俺は『遠征弁当の納品』」

料理の納品クエストは、基本レシピに材料や入れ物は支給される。

もちろん失敗すれば自分で補填しないといけないが、基本レシピと料理の知識があればそうそう失敗するような物じゃない。

【料理】スキルのレベルが高ければ、レシピ登録からの作成ボタンで一発だ。

「僕は【料理】スキルはあるけど育ってないから、ほとんど手作りかなー」

「ふむ、それなら俺はもう二つくらい受けていくか」

『大瓶パスタソースの納品』を二種類追加。

なんだかんだこっちでも料理してるからな。【料理】スキル5レベルまでは上がってるんだ。

* * *

一度拠点に戻った俺達は、台所で二人、それぞれ受けてきた調理をこなした。

「【料理】スキルのテンプレ機能がリアルにも欲しい!」

「それな」

皮むきがワンタッチなのはマジで楽。パスタソースを煮詰めながらしみじみと思う。

相棒は相棒で、大量のクッキーの型抜きがテンプレ機能で『ポポポポポポポッ』と一度に完了する事に大ウケしていた。

シンプルな丸い形でも、工場の機械みたいに抜けていくのは確かに見応えがある。

「もう一回! もう一回やりたい!」

「残った生地でやりなー」

俺もそろそろ大瓶の準備するか。

「一個だけ星型入れよ。これ当たりね」

「ハートじゃないんだ?」

「僕のハート型は相棒専用だから」

「なるほど」

ならしょうがないな。

料理が出来たら指定の容器に詰めて、まとめて教会へ持っていく。

広場前の受付は、転移広場に近い事もあって人が途切れない。

だから多少遠くても教会に行った方が気分的に楽だった。

「あっ、お二人さーんニャー!」

聞き覚えのある声にそっちを見れば、いつぞや遭難していた三人組の一人、猫獣人のミケコがパタパタと手を振っていた。

「久しぶりですニャ!」

「うん、久しぶり。ミケコちゃんも支援部門?」

「違うのニャ。防衛部門で食事の受け取りと運搬に来たのニャ」

「あ、食事の運搬も防衛部門なんだ」

「ニャ」

「他の二人は一緒じゃないんだ?」

「クランの方のお手伝いしてるのニャ」

「お、クラン入ったの?」

「ニャ! グレッグさんが入ってるモロキュウ冒険団ってクランにそのままお世話になったのニャ!」

「へー」

相棒とミケコの会話を聞きながら、シスターのいるテーブルに作ってきた食事を出してクエストを完了すると、シスターはそのままミケコを見た。

「はい問題ありません。ちょうどいいわ、貴女これこのまま持って行きなさいな」

「おおー! ご夫婦の手料理だニャ! ありがたく頂戴するのニャー」

右から左へ受け渡される食事。

ミケコは他にもいくつか食事を受け取りインベントリに入れて、「バイバイニャー!」と去って行った。

楽しくやってるなら何よりだ。