軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:VSフォーパンベア、決着

「ぬぅ!? しまった!!」

たとえタンク役が最前線で攻撃を引き受けていても、遠くのプレイヤーがヌルゲーにならないように時折狙いを変えるのはゲームによくある仕様だ。

刹那、スライドしたフォーパンベアが前脚を振り抜く。

ゴーレムの脇を抜け、地面を走る、四連衝撃波。

直進、先にはアルネブさん。

身を翻し──しかし回避は間に合わなかった。

「っ!?」

「わーっ!」

直撃。

アルネブさんの姿はポリゴンになって消えていく。

全員開拓神のオーブを近くに置いていたから、すぐに戻ってくるだろ。

さっきはカステラさんが一度落ちたが、数分経たない内に復帰したからな。

「【サモンフォークロア:スネガラメ】」

夾竹桃さんの召喚詠唱。

名前からしてスネコスリの エフォ(EFO) 版か。

ニュルンと細長い獣のような何かが、フォーパンベアの足をスルリと巻くように通過して、一瞬フォーパンベアのバランスが不安定になった。

「ふんぬっ!!!」

そこを見逃さないド根性さんの一撃。

重いゴーレムの打撃で、熊がグラリとバランスを崩す。

ちょっと追い打ちをかけておくか。

「【ソイルクリエイト】」

【土魔法】で熊の足元の土を動かす。

本格的に足を取られた熊は、そのまま地面へと転倒した。

「ナーイス!」

「い、今がチャンスです!」

この機を逃すなとタコ殴りにしている内に、アルネブさんが復帰する。

「とんでもないわね……私、それなりに素材厳選して良い装備着てるのよ……?」

「わかる」

【星魔法】の攻撃を再開しながらボヤく声にカステラさんが同意する。

まぁ適正レベルは90以上とかなんだろうな……

それでも人数と作戦でなんとか戦えているからありがたい。戦いがどう見てもボス戦のそれだとしても。

気を抜けない戦いはしばらく続く。

崩れかけて持ち直し、確実に回避しながら攻撃を叩き込んだ。

「くっ、そろそろ修理が必要か……ラウラ殿、交代を!!」

「は、はい! お任せください!」

大きく後ろに跳んで距離を取るゴーレム。

それを追いかけようとしたフォーパンベアは、目の前に飛来した天使に阻まれる。

苛ついて振り上げた前脚に、ラウラさんは一歩も引かずに剣を構えた。

「【瞬速光】!!」

翼を持つ体が、刹那煌めく。

フォーパンベアの4HITパンチに、臆することなく剣を向け……ラウラさんは神速の四連撃でそのパンチを相殺しきった。

「おおー、すごい!」

「……うん、すごい」

思わず夫婦揃って呑気な感想がこぼれた。

多分、効果が数秒の代わりに俊敏を大幅に上昇させる【光魔法】のバフか。

どうやらラウラさんは、真正面からフォーパンベアの攻撃を捌き切るつもりでいるらしい。脳筋が過ぎる。

……と、その時、夾竹桃さんの手元で何かが光った。

「よっしゃ、捕捉ー!」

そして歓声を上げた夾竹桃さんは、スキルでリペアを始めようとしていたド根性さんの方へと全力で駆け寄った。

「その修理、ちょっと待ったー!」

「ぬぅ!?」

何だ、何をする気なんだ。

一応、何かあってもすぐに対処出来るように注意しておく。

夾竹桃さんは、散々パンチを受け止めて傷だらけのゴーレムに手を当て……そして叫んだ。

「【前略、お恨み申し上げます】!!」

──ベァアアアアー!!??

途端、熊が悲鳴のような咆哮を上げた。

フォーパンベアの体のあちこちで、何かが弾けたようなエフェクト。

何が起きた?

ゴーレムの大きな傷と同じ位置で大きくエフェクトが弾けたような……

(……もしかして、ゴーレムの受けたダメージが熊にも入ったのか?)

(あー、そうかも。ゴーレムで呪いの藁人形みたいな事したのかな?)

直前の言動を見るに、何かを待たないと使えないんだろうな。

フォーパンベアは、ギラついた目で一瞬手足をバタつかせたが……色んな攻撃のダメージが継続して入っている分でHPを削り切ったのか……ドロップアイテムを残し、ポリゴンとなって消えていった。

「……勝った? 勝ったな!? いよっしゃああああ!!」

「ウオオオオオオオ!!」

「や、やりましたぁ!」

「すげぇ! やれるもんッスね!」

「あー、タイミング合って良かったー」

「おおー、勝ったー!」

「……勝てるもんだなー」

残されたドロップ品は……よし、ちゃんと『フォーパンベアの死剛爪』だ。

これでドロップしていなかったら……さすがに出るまで倒すには大変過ぎるから、熊は無しになるところだった。

「わ、すごい……け、経験値たくさん入りますね」

「……そっか」

「おめでとー」

「我々は皆デスペナ付きなのでな!」

「あ、ああっ!? す、すみません!」

ボス戦後のような燃え尽きた雰囲気で談笑する同盟面子。

……だが、あまりここでのんびりとしてもいられない。

「……とりあえず、うちの拠点戻りますか。ちょっと離れた所に別のフォーパンベア見えるんで……」

「戻ってみんなで打ち上げにバーベキューしようよ。協力してくれたお礼も兼ねて食材は全部奢りだよ」

「うおっ!? マジでただのフィールドエネミーなんスね!?」

「なんとか倒せたし、満足だわ」

「うむ! よき戦いであった!」

「やったー、バーベキューだー」

「ふふ、楽しみね」

「ご、ごちそうになります」

開拓神オーブを回収して、帰り道でワンパンベアもテイム完了。カステラさんに魔法少女への配達を頼んで、封印作戦の報酬は完了だ。

今日の残りの時間は、爪の獲得手伝いの感謝も含めて同盟全員とうちの拠点の面々で肉と野菜をたらふく焼いて食べた。

……なお、ド根性さんの種族、体の大きなギガスは食事の必要量も多いらしい。

あんなにあった肉と野菜がほとんど消費されたのだった。