軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:新人オバケの導く先は

キーナが覚醒コケッコの里親探しから帰ってきた。

礼儀正しい青年に貰われていったって言うから、まぁ心配は無いだろう。

コケッコ騒動が一段落した相棒は、なんだかんだ後回しになっていた新しいオバケの誘致をする事にしたようだ。

いくつか作ってあった魂籠の内のひとつを出して、中の刻印を確認する。

「今度はどんな子が来るかなー」

「さぁ……でも今の所、相性悪いのは来てないな」

「相性良い相手が来るようになってるシステムだと嬉しい」

そうだな、合わない相手はストレスだからな。

「じゃあ行くよー……【住居登録】!」

風が渦を巻く。

さて何が来るだろうな。

……ゲームの設定的に、たぶん人の霊は来ない。

この世界に人がやって来たのが最近だからだ。

籠の中にナニカが収束して……ポンと現れたのは……ジャックの時みたいに小さすぎる金属片みたいなオバケだった。

……なんだこれ?

誰しもが首を傾げる中、真っ先に反応したのはジャックだった。

「ワァ! 鎧の精の成りそこないダァ!」

……なるほど?

その一言で大体の由来を察する。

NPCかプレイヤーかは分からないが誰かの鎧に宿りかけて、それに気付かずもっと性能の良い鎧に交換して……そして鋳潰されて死んだんだろう。

* * *

鎧の精の成りそこない Lv1

「自分、まだやれマス!」

「すごい、こんなに小さくてもやる気の塊だぁ」

由来を考えるとそこそこ悲劇的な境遇なんだが、当の本人ならぬ本霊はそんな過去はどこ吹く風って感じに元気いっぱいな生真面目軍人系の性格だった。

聞こえてくるのはオッサンに片足突っ込み始めた成人男性っぽい雰囲気がする低い声。

もしかしたらピリオの兵士が使っていた鎧とかだったのかもな。

「使いたいのは山々なんだけど……この子ってどう使ったら良いんだろう? 籠に入れたら効果ある?」

「……まぁ、主の防御は多少上がるやもしれぬがな?」

相棒はそもそもが紙装甲だからなぁ……多少上がった所で効果はあんまり期待できない。

「ならバ! 何卒自分にもカボチャの御人のように身体を頂けれバ! 必ずや御身の盾となりお役に立って見せましょうゾ!」

「あー、確かにその方がいいかも?」

うん、それが現実的かもな。

俺もタンク役がいると助かるし。

ただ、ジャックと同じって考えると、後から装備の変更が出来ないだろうから、最初に相当良い鎧をベースにしてやらないといけないんじゃないか?

そんな事を考えていると、ジャックがなんだかキラキラした声で宣言した。

「マスター! その鎧オレに作らせテ!」

「ジャックやりたいの?」

「ウン!」

「……まぁ僕が作ろうにも鍛冶レベル低いしね。いいよ」

「ヤッター!」

喜んで魂籠をワッショイワッショイするジャック。

なんだろう、仲間意識があるんだろうか。

相棒はそんな二人を微笑ましく眺めつつ言った。

「とりあえず、名前付けないとね……オバケの鎧って言えば、僕はデュラハンかリビングアーマーが出てくるかなー」

「デュラハン?」

「色んな創作に出てくる首無し騎士の事。出会った相手に死を告げるとか、元は首無し御者だったりとか、色々謂れがある伝説の存在だよ。……そうだねぇ、じゃあ名前はデューにしようか」

「承知! 只今より自分はデューでありマス! 宜しくお願い申し上げル!」

……個性の強いのが来たもんだな。

名前が決まった所で、次に確認しないといけないのは体の準備の事だ。

「鎧の材料って何が必要?」

「ウーン、色々欲しいケド……まずオレの鍛冶レベル上げたいナ!」

「それはそう」

それはそう。

って事はそれなりの量の金属素材が必要になるのか。

「……いっそ近所に採掘ポイントとかあればいいのにね」

「探してみる?」

「あるかな?」

「探してみないとわからない」

あるとすれば、山の方だろうな。

もしあれば俺達が不在の間でもジャックが自分で採って来てあれそれ出来るだろうから探す価値はある。

「鹿は余裕だったし、山に行くならいい機会だと思うよ」

「そっか、じゃあ……今日はもう夕方だから……一晩経ったら山に探索行ってみようか!」

「オー!」

イベントに向けたレベル上げにも丁度よさそうだ。

……とはいえ、まだ就寝するには早すぎる。

「じゃあ、ポーションだの矢だのの買い出しにでも行くか」

「一緒に行く?」

「うん、NPCの店なら人少ないし」

* * *

ただの買い出しなら変装は必要ない。

俺と相棒は二人でピリオの広場に転移した。

……直後に、すぐ隣に誰かがドサッと投げ出されたみたいに倒れ込んだ。

二人揃って思わず目線がそっちに向く。

その打ち捨てられ方は覚えがあった。死に戻りだ。

ピリオに死に戻った誰かは、しばし呆然としていたかと思うと、頭を抱えて呻き始めた。

「ゥアアアアアアアアアッ!! やっちゃったー! ウッソでしょ!? い、今までの道のりがああああああ!! 全部パァだあああああああ!! イヤアアアアアアア!!」

頭を抱えてのたうち回っているのは……なんとなく見覚えのある女性だ。

近くにオウムが一羽いて何か喋ってるみたいにクチバシをパカパカ動かしている。……このオウム、配信者向けの外部サイトコメント読み上げ機能がついた課金アイテムじゃなかったか?

……あ、この女性もしかして!

「だって! チャーハンにはお米いるじゃん!! ……え、そんな事ないでしょ!? ……ウッソォ!? 間違ってないって! ねぇそこのお二人さん!?」

何だ、唐突に俺等に目線が向いたぞ。

「中華料理って言えばチャーハンだよねぇ!?」

「「えっ? チンジャオロースかな」」

「だよねぇ! チンジャオロースだよねぇ!! ……わかった。皆、お米を求めたアタシが間違ってたよ! 狙うはタケノコ! チンジャオロース! 中華を極めて火魔法を極める旅は、ここからが本番なんだからぁ〜!!」

綺麗にハモった俺達の一声によって……見覚えのある恐らく配信者の行き先が決まってしまったらしい。

「見知らぬお二人さん、ありがとう!」とお礼の言葉だけを残して、彼女は走り去って行った。

「……このゲーム、竹ってあるの?」

「……どうだったかな」

スレとか探せばありそうな気はするけど。

あの配信者はどこへ走って行ったんだろうか。