軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:輝石の封印、新たな絆

小さな小瓶の薬をあおったヒトが、ひとり、またひとりと倒れていく。

『マナへと捧ぐ贄の霊薬』

聞いた通り、強制睡眠に陥る代わりに、魔法陣で共有しているMPがものすごい早さで回復を始めた。

儀式めいた魔法陣の上。

まるで死体のように転がる21人の魔法使い。

全部まとめて、僕が借りるね。

「【ドリームクリエイト】」

可能なだけ写した属性封印と自前の無詠唱とで『滅び』を抑え込みながら、眠りに落ちた皆のステータスを借りるイメージをする。……もしもシステムで使用確認とかが出るのなら、匿名の『森女』でお願いしたいですって付け加えるのも忘れずに。

一瞬の間。

そして始まる、ステータスの加算。

……そして、前にモンスター相手にやった時は分からなかった仕様に気付いた。

諸々で育っていた僕の【封印魔法】はレベル32。

加算された今は、77。

つまり、足された分は45。

【封印魔法】担当は3人。全員、属性と混合出来るように20になっているはず。

なのに加算分は60を超えない。

答えはすぐに出る。僕の【夢魔法】はレベル15。

15なら、かける3人分で45になる。

つまり【夢魔法】のステータスドレインは、対象1人からは【夢魔法】のレベル分の数値までしか、スキルレベルの数値を借りられない。

もっと高レベルになってきたら、【夢魔法】のレベルが高くないと、状況次第では逆に効率が悪くなる事になりそうだね。

借りるためには相手が眠っていないといけない分、危険に対処出来る人数が減ってしまう。

それに、寝てるとなんにも出来ないし何も認識出来ないから、今みたいに託して同意してくれるかどうかって問題もある。

まぁでも、きちんと準備して一発ドカンと撃つなら、すごく使い勝手の良い魔法には違いない。

21人も魔法使いがいれば、たとえ最大15ずつしかレベルを借りられなくても、積もり積もって属性魔法はほとんどがレベル100を超えている。

加算された【封印魔法】はレベル77。

つまり、今の僕に出来るのは七種混合。混ぜられる属性は六。

僕の種族特性で光は使えない。

ここは素直に、レベルの高い方から選出しよう。

火・風・水・雷・氷・石、これを封印に混合。

輝石は? ……使える物は全部使って!

MPは? ……当然全部ぶち込んで!!

「──【セプタクリエイト】!!」

うわっ!? ……重いっ!

水の流れに似た重さが、ターゲットの『滅び』を中心に渦巻いて、体が持っていかれそうになるのを慌てて杖をついて耐えた。

渦巻く強風。

気圧されるようにたたらを踏んだ周囲の敵。

転がっていた残りの輝石のほとんどが風と一緒に巻き上げられて、卵型の大きな結晶をグルリと囲む。

そして、同色の結晶が束ねられて大きな六つの輝石の塊となり。

勢いよく卵型の結晶へ全方位から一斉に追突して、押し固めた。

中央の『滅び』が、押し潰されたように細長くなって……動きを止める。

カラフルで巨大なトゲトゲしい結晶の塊として、六属性を注ぎ込んだ封印が完成した。

「あーあ、終わっちゃった」

声にハッと振り返ると、すぐ後ろに黒いローブで嗤う使徒。

わー……近いなぁ?

……あ、ダメだ、集中切れちゃった。

どうしよう?

不審者が真後ろにいたらどうしたらいい?

頭が真っ白になっている僕は……瞬きの間にガッと抱えられて、ニヤニヤ笑いから引き剥がされた。

相棒だ。

安心して、素直にそのまま身を任せる。

瞬時に僕を避難させてくれた相棒と入れ違いで、ジャックが、一拍遅れてデューとモロキュウ冒険団のヒト達が、武器を構えてニヤニヤ使徒に突進した。

周りの敵は? ……あ、もう消えたんだ。なら良かった。

特攻したヒト達は、寝てる皆が踏まれないか心配になる勢いで使徒に激突。

それに吹き飛ばされるようにして、ニヤニヤ使徒は嗤ったままヒョーイと遠くへ跳んだ。

「ま、そこそこ楽しかったよ。……またね」

そして、立つ鳥跡を濁さずとばかりに、スルリと消えて、去っていった。

* * *

「あの……森女様は大丈夫ですか?」

「……大丈夫です。燃え尽きてるだけなんで」

どうも、オバケモードになって相棒におぶさっています、燃え尽きている森女です。

「つかれたぁ……」

「……おつかれ」

もう本日分の思考力は売り切れました。システム警告こそ出ていないけど、今日の僕はもうダメです。

ニヤニヤ使徒も消えて、『滅び』の封印も完了。

後は戦後処理だけだから、僕はもう遠慮なくダラダラとしている。

「すっかり『滅び』がおとなしくなってるトゲ! これなら100年くらいは放っといても平気トゲ!」

100年の封印、なんて言われると王子様のキスで出てきそう……

疲れた僕の脳は、そんな意味のない考えをダラダラと垂れ流している。

結局、結晶がほぼ全滅したハリネズミ幻獣ちゃんだったけど、思ったよりも落ち込んではいなかった。

本当にとっておきたい物は、僕らが避難させていたのもあって幻獣ちゃんの手元に戻ってきたし。空間が広くなった分、また作れるって思い直したらしい。

あと、『滅び』をどうにかしたから、骨ドラゴンさんをブラックダイヤモンドにする作業にまた戻れるからね。

そして……

「ハリネズミ幻獣は、話のわかるこのヒトの子と契約したいトゲ」

「よろこんで」

結晶のハリネズミ幻獣ちゃんは、一緒に悲鳴を上げていたパピルスさんと契約する事にしたみたい。

それも楽しみのひとつみたいであんまり落ち込んでいないらしかった。

薬を飲んで寝ていたヒト達は、睡眠デバフを解除する薬や魔法で順番に目覚めていた。

「……なんか、『匿名希望の『森女』よりステータス貸与申請が来ています』とかいうシステムウィンドウが出て……それに同意したら、キモいニワトリモドキみたいな奴に追いかけられたんだけど……?」

「マルドゥークさーん、こんな仕様なら教えといてくださいよー!」

「いや俺らも初見でしたけど??」

「何あれ知らん、森仕様?」

「森夫婦こわいわぁ〜」

「人権の無いポーションを持ち出してきたお前らが言うな」

申請は僕だろうけど、キモいニワトリモドキは僕も知らんよ……ニヤニヤ使徒のモンスターかな? 状況的に、追いつかれたら起きちゃったとか、そういうのかもねぇ。

そんな風にわいわいとしていたら……『滅び』の封印をじっくりと確かめていた骨ドラゴンさんが、「うむ」って納得したみたいに頷いて……端の方でのんびりしていた僕らの方へのっしのっしとやって来た。

「よくぞ我が身を苛んだ『滅び』を封印してくれた。礼を言うぞ、ヒトの子らよ」

「……どういたしまして」

「きにしないで〜……」

「うむ……そこでだ」

骨ドラゴンさんは、嬉しそうな声色で堂々と宣言した。

「そなたらに、吾輩が生まれ直すための卵を託したい。引き受けてもらえぬか?」

たまご?

たまごって、卵?

僕が半分しか動いていない頭で反芻している間に、周りの皆は一瞬静まり返って……

次の瞬間、洞窟内は驚きの声で満たされた。