軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:春イベントの最終日

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今日は春イベントの最終日、祭の閉会式だ。

催しとしては、ピリオノートと日ノ出桜の都でNPCから『お疲れ様でした』の言葉と、出店や食事があるやつだ。

去年の春イベントの最後と違うのは、フランゴが来ないことくらいだな。

初心者向けの日ノ出桜大街道敷設は、期間内に予定の長さまでの施工をクリア。余った時間と石材は、海側の防衛施設の建築に使ったらしい。

後は、現在王国に敵対している使徒や組織の注意喚起。

新規プレイヤーにもある程度イベントのフックになるようにってことなんだろう。簡単に偉いNPCから説明があって『詳しく知りたかったらここへ聞きに来い』みたいな話があったようだ。

……そんな閉会式の内容を、俺達は拠点にいたまま、掲示板の書き込みで確認していた。

「……まぁ、『???』の記載も無いし、襲撃はなさそうだな」

「だよね」

システムウィンドウはそのままに、顔を上げる。

敷物に座った俺達の頭上には、まだ若木だが綺麗に満開になった桜の花。

春イベントの最初に購入して植えた桜の苗木は、イベント期間中にそこそこ成長して、花見気分が味わえるくらいの花を咲かせていた。

だから今日は、春の最後って事で、拠点全員で花見会だ。

ヒラヒラと薄桃色の花弁が散る中を、ガラスのような霊蝶がヒラヒラと舞う。

青緑色の植生なのも相まって、現実離れしたファンタジーな景色だ。

「……ここって四季無いけど、桜って通年咲いたりするのかな?」

「……さぁ?」

流石にそれは他の花がメインになる他の季節のイベントでムードぶち壊しになるから無いと思うけどな……

敷物の上には、小粒達と一緒に作って詰めた弁当と、キーナが購入してきた団子、それからお茶。

のんびり料理と花を楽しむ派と、いつもと違う雰囲気にテンションが振り切れて鬼ごっこを始めた派に分かれていた。鬼ごっこ派はジャック達と小粒達と狼茄子達、さらにニワトリだのベロニカだのがわちゃわちゃしていて実に賑やかだ。

「季節の巡りとは早いものよ」

「死の海に季節など無かったが……まぁ悪くはないな」

「うむうむ、ちょこまか動く幼子が住まうというのもこれまで想像もせんかったわ」

キャッキャとはしゃぐ面子を眺めるのは俺達と、長老ポジションなフッシー・ネビュラ・コダマ爺さん。

完全に保護者な俺達は、飲み食いしながらしみじみと語り合う。

「思ったより面子増えたよねぇ」

「うん」

苦手な煩さではないからいい。 エフォ(EFO) はその辺の好みを汲むのが上手くて助かる。

晴れた空。

綺麗な桜。

春の暖かい空気と、花の香り。

今のフルダイブVRの花見は現実と遜色無い。

そうして花見を満喫していると……フッシーがボソリと声をかけてきた。

「……で、アレはどうするのだ?」

「「……どうしようね?」」

ア(・) レ(・) 、と言いながらフッシーが翼で指したのは……畑の危険物区画に直植えしていたもう1本の桜の木。

花見をしている木は普通の土に入れ換えた区画で育てたから普通の桜の木なんだが……例によってここの土に直植えした桜は変質して別物になった。

その名も『夢見桜花』。

花弁が薄紫をしている桜で、日が暮れると咲いて朝になる前に散るらしい。その花弁は、説明を見る限り夢守の卵を孵すのに使った豆と似た性質をもっているようだ。

……そして、その花弁によって、思わぬ方向に効果が出た。

夢見桜花の根元にいる、黒い羊だ。

ナイトメェバロメッツ Lv1

もひもひと夢見桜花の花弁を食っている羊は、拠点の土に直植えしたバロメッツ。

つぼみのまま、中々成長しないなと思っていたんだが……もしかしたら夢成分……とりわけ悪夢成分が足りていなかったのかもしれない。

夢見桜花の花弁がナイトメェバロメッツのつぼみの周りに降り始めたら、あっという間につぼみが羊になってメェメェ言い始めた。

黒い羊毛に、やたらゴツゴツして先端が尖った凶悪そうな角を持つ雄の羊だ。心なしか目つきも鋭い。

他の家畜達と一緒にしておこうと思ったんだが、どうにも夢見桜花が気に入ったらしく木の近くから離れようとしなかった。

仕方ないからそこにシングル仕様の小屋を建ててある。

「ナイトメェバロメッツは一匹狼なのかな?」

「羊なのに?」

まぁ一匹でもたくましく生きていきそうなビジュアルはしている。

「とりあえずナイトメェバロメッツはかわいいから飼います」

「はい」

「夢見桜花はまぁ……花弁とか、何かに使えるでしょ、たぶん」

「まぁ、たぶんな……」

今の所はナイトメェバロメッツの餌だ。

「……それこそ、フリマで少し売ってみるか?」

「ああ、いいかもねぇ。面白い使い方見つけるヒトとかいるかもしれない」

「だな」

春イベントの最終日は、こうして穏やかに引きこもって、ダラダラと過ごして終わったのだった。