軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:エゴマ亭に一泊旅行

夕暮れ時、俺達は大量の鹿のドロップ品を持って拠点に帰還した。

なんだかんだレベルも上がって、今の俺達のステータスはこんな感じだ。

ユーレイ

種族:ヒューマン

職業:死の狩人

Lv17

HP:16

MP:20

筋力:18

魔力:10

強靭:14

精神:10

俊敏:40

キーナ

種族:エルフ

職業:ネクロマンスクラフター

Lv15

HP:11

MP:30

筋力:4

魔力:28

強靭:7

精神:20

俊敏:10

ジャックのレベルも11まで上がったみたいだし、経験値は美味しかった。

ジャックのトレインした鹿は結構な数だったけど……MMOのレベル上げって考えれば、ギリギリ捌ける量は効率が良いって事だから適量って言えばそうなんだよな。

でもジャックのレベル的には無謀だったから、一発デコピンはしておいた。NPCのAIはもう少し慎重って聞いてたけどな……死霊のAIは別なのかもしれない。

「鹿皮いっぱいとれたね」

「敷物にでもするか?」

今回もドロップで鹿皮が手に入った。

どう活かせばいいのか分からない性質なんだよな……またグレッグさん行きか?

そして今回は、初めてのガチレアドロップが手に入った。

【夢喰い鹿の皮】…品質★★

夢喰い鹿からとれる皮。

曖昧な場所でも形を失わない性質を持つ。

【夢喰い鹿の角】…品質★★★

夢喰い鹿の貴重な枝角。

【夢喰い鹿の王首】…品質☆

夢喰い鹿の群のボスの首。

希少品。

最後の王首がレアドロップ。

この首は希少品って説明にあるように、モンスターのリーダー個体からのみ低確率で落ちるアイテム。

落ちる物は首だったり鱗だったり角だったりと色々だが、どれも品質は黒星の上扱いになる白星で固定だ。

物によっては装備に使う事もできるが、基本的には設置する装飾品に加工する。鹿は首だから分かりやすいな。壁に飾る首の剥製、アレだ。

開拓地に飾れば開拓地レベルが上がり、NPCへの贈り物にすればそのNPCとの関係性が飛躍的にプラスになり、寝室に飾れば睡眠バフにボーナスが入り、売ると結構なお値段になる。

いくつかあるレアドロップの中でも、わかりやすい高級品ジャンル。

……ただなぁ

「とりあえず壁掛けに加工はするとして……どうする? 飾りたい?」

「いや別に」

ドロップしたのは素直に嬉しいんだけどな。

俺も相棒も剥製を自宅に飾るのが好みじゃない。

「他所のお家とか博物館で見るのは楽しいんだけどね。自分の家にあると、ちょっと落ち着かない」

「それな」

どうしたもんかな……俺達は街を作るわけでもないから拠点レベルを急いで上げる理由も無いし、関わってるNPCはオバケばかりだから剥製贈ってもなって感じだし、睡眠バフにも困ってないし、金が増えすぎると襲撃が危ないし。

「あ、エゴマ亭にでも渡すか?」

「あ、いいかも! あのお宿、鹿の飾りとか似合いそう!」

鹿素材はグレッグさんに変装無しで売ってるから、アッチと関連付けられることは無いはず。

……まだ泊まってもいないのに、俺達は結構あの宿を気に入ってるらしい。

* * *

せっかくの休日でまだ時間もある事だし、俺達は鹿首を渡すついでにエゴマ亭に泊まってみることにした。

転移オーブで、登録済みのエゴマ亭に飛ぶ。

「いらっしゃいませ。ようこそエゴマ亭へ」

カウンターで応対してくれたのは、見た事の無い女性だった。

ゴマ油さんいないのか……そういえば俺達が休みなだけで世間は平日だった。

「一晩宿泊でお願いします」

「お泊りですね、ありがとうございます。お部屋別がよろしいですか? それともご一緒で?」

「一緒でお願いします」

「承りました、こちらお部屋の鍵です。リーフボアの部屋になります。チェックアウトは明日の昼までにお願いします。ごゆっくりどうぞ」

鍵にはデフォルメされたリーフボアが彫られたキーホルダーがついていた。

思わず相棒と顔を見合わせて苦笑いする。

まぁ、あの時俺達がどうなったかなんて誰も知らないしな。

初デッドの思い出を絶妙に刺激されながら、俺達は部屋へと向かう。

キーホルダーと同じリーフボアのレリーフがかかったドアを開けると、中は絵に描いたようなファンタジー風の寝室だった。

温かみのある木の壁、木の床。夕暮れの陽が差し込むガラス窓。

そこまで広くはない部屋だけど、ベッドの他にシンプルな椅子とテーブルもある。

「カワイイ! この辺の梁とかキルトの布団カバーとか最高!!」

「おー、雰囲気ある」

「でもベッドはツインかー」

いや、許可設定しないと接触できない全年齢向けゲームで、ダブルの部屋なんか用意した所で誰が使うんだって。

俺は苦笑いしながら残念がる相棒に言う。

「別に片方のベッドで一緒に寝ればいいよ」

「そうする!」

日が暮れてきたから、備え付けの燭台に火を灯してみる。

小さな灯でも、作業をするわけじゃないから十分に明るい。

「……こっちでご飯食べたら、リアルもちょうどご飯時かな?」

「だね。あり合わせにご飯と味噌汁でいい?」

「いいともー」

燭台の火を吹き消して、一緒に食堂へ向かう。

おお……客が多いな。

ランプに照らされた食堂は朝とは比べ物にならない賑わいがあった。ファンタジー映画みたいな光景だ。

フルダイブVRのゲームはこの異世界旅行感が良い。

空いている席を探して、適当に座る。

「晩御飯はメニューがあるんだね」

そこまで多くはないが、何種類かから選べるようになっていた。

相棒がメニューを眺めてクスクス笑う。

「猪肉の煮込みだって。煮込みレタスとか出てくる可能性がワンチャン?」

「無い無い」

そんな肉詐欺あってたまるか。

結局注文したのは、相棒が鹿肉のブラウンシチューとパン。俺は煮込みハンバーグのチーズ乗せにパンとスープのセット。

「「いただきます」」

……うん、美味しい。

前に朝食を取った時も思ったが、エゴマ亭は飯が美味い。

ゴマ油さんがいなくてもこれなんだから、NPCも料理上手なんだろう。

「ん~、美味しい。相棒、シチューひとくち食べる?」

「食べる」

「はい、あーん」

口を開けた所に鹿肉とシチューを乗せた匙が差し出される。

……うん、美味い。

ブラウンシチューは煮込みハンバーグとソースは同じか? 鹿肉ともあうな。

「じゃあハンバーグもどうぞ……あーん」

「わーい。……うん、ハンバーグも美味しいね」

そうやっていつもの一口味見のやりとりをしていると、しょっぱい顔でこっちを見ている奴と目が合った。

どーも、自他共に認めるバカップルです。

俺は特に何も言ってないけど、顔が勝手にドヤ顔してたんだろう。そいつはうんざりした顔をして目をそらし、酒を一気飲みし始めた。

* * *

一度ログアウトしてリアル夕飯を取ってから。

のんびり一泊して、朝。

俺と相棒は朝食もゆっくり堪能した後、NPCの従業員さんに鹿の首の壁掛けを渡して、エゴマ亭を後にした。

ゴマ油さんとは会えなかったな。リアルが忙しかったんだろう。

まぁ、勝手に押し付けたいだけだから、むしろ好都合だったかもしれない。

NPC従業員は、売却じゃなく寄付って聞いてものすごく驚いてたけど喜んで受け取ってくれた。

「どこかに飾ってもらえるといいね」

「そうだね」

拠点に戻ったら、かなり早いけどログアウトしよう。

最近こればっかりやってるから、体の凝りがヤバイ。

どうせ明日も休みなんだし、少しでも体を動かしてから寝ないとな。