軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:牧羊犬に定評のある夫婦

(タイミング良かったねぇ)

(それな)

戦況模型を見に行った俺達は、そこに夾竹桃さんの姿を確認し……直後にピリオノートの南西からわらわらと敵が湧いているのを見て、慌ててネビュラに飛び乗り駆け出した。

ベロニカに場所を確認してもらいネビュラの案内を頼めば、現地に着くまでの間に掲示板の確認が出来る。

(大規模な防衛戦だから、一応、ある程度の山火事はお目こぼししてもらえるって)

(おおー、よかった。それなら【火魔法】思いっ切り撃てるね)

到着前に『夢繋ぎのMPポーション』を飲んで、俺と相棒のMPを共有にしておいた。これで俺のHPも含め、お互いがお互いのMPタンクになれる。

「そろそろ接敵よ!」

ベロニカの声に促され、俺は敵のいる方角へ視線を向けた。

戦況模型を見ている実況妖精によれば、オープンダンジョンを中心に全方向へと広がっていた植物系の敵は、ある程度数を増やしたあたりでカタツムリボスとの戦場へ向けて増殖の方向性が固定されたらしい。

他のプレイヤーの姿は見えなかった。

まだ誰も来ていないのか、それとも既に轢き殺された後なのかは分からない。

どう戦うにしても、まずは相手の情報が欲しい。

「飛ばすからしっかり掴まってて」

「オッケー」

「【ウィンドクリエイト】」

「行くぞ」

【風魔法】の加速を追加して、森を駆け抜けるネビュラの全速力。

並走するような角度で木々の隙間に現れたのは、凶悪な牙を持つ植物や、棘を持った植物のうねり、そして不気味なニヤニヤ笑い。

ピラニアヒョウタン Lv36

ポイズンウィップソーン Lv31

ニヤニヤランナー Lv40

((ニヤニヤフラワーが走ってるー!?))

植物が二足歩行でエッホエッホ走るな。

他の草は明らかに植物として茎を伸ばして地表を覆うように進軍してるのに、なんでお前だけ徒歩なんだよ。

……いや、そんな場合じゃない。

レベルは確認した、これならそれなりに善戦できるだろう。

まずはインベントリから出した こ(・) れ(・) が効くかどうかを確かめる。

「【アクアクリエイト】」

粉末を投げながら、【水魔法】を詠唱。

投げたのは『迷宮夢の粉薬』。

吸い込むか飲むかすると効果が出る薬を植物に摂取させるなら、水に溶かして撒くのが1番だ。

霧雨となって降り注ぐ睡眠薬。

効くかどうかは正直賭けだったが……植物達のいくつかは花を閉じたり蔦を丸めたりしてその場に止まった。

(よし、効いた)

(やった!)

もちろん、大量に押し寄せてくるモンスターの群れは、眠った奴らを追い抜いて進軍を続けてくる。……だが、この薬の狙いは足止めじゃない。

次の一手。

キーナが杖を構える、魔法の詠唱。

「【ドリームクリエイト】」

コツコツと経験を蓄積させてきたキーナの【夢魔法】で、眠っている植物達のステータスを一時的に吸い上げる。

(お……おおー! 来た来た来たぁー! すごい、めっちゃ【草魔法】のレベル上がる!)

(……魔力ステは?)

(それなりに。精神と筋力ステの方が上がり幅でかい)

(そっかー)

……まぁ、この植物共は脳筋的な物理攻撃だもんな。

俺はMPポーションを飲んで次の手に備える。

植物達の進みはネビュラほど速くはない。

狼精霊の脚で駆け抜けて、俺達は植物の群れの正面に出た。

(そんじゃ行くよー!)

(どうぞ)

「【ダブルクリエイト】!」

投網のように広がった魔法による蔦。

吸い上げた【草魔法】による植物は早くて強靭だ。

植物達を飲み込もうとするかのように広がった蔦は草と炎の合成魔法。一拍置いて茎が裂け、時間差で囲いの内側へ爆炎を引き起こした。

網の目状の可燃物によって、ただ薄い炎の壁を伸ばすよりも燃費と威力と持続性が高い炎上エリアが出来上がる。

「【ウィンドクリエイト】」

炎を強くするイメージで【風魔法】を追加してやれば、あっという間に正面一帯が軒並み炎上した。

耐久の低いらしいポイズンウィップソーンはほぼ即死。

ピラニアヒョウタンは表面が黒焦げになりながらもキーナへ反撃しようとするが、炎の勢いに勝てずに崩れ落ちていく。

ニヤニヤランナーはニヤニヤ笑っている花に火がついて、ニヤニヤ笑いのまま慌ててバタバタと走り回っているだけだ。

(あー、やっぱり寝てた草も燃えたから、略奪してたステータスも戻っちゃった)

(まぁ仕方ない)

とりあえず進軍は止まったからな。

目の前には、広大な焼け野原。

だが倒したのは氷山の一角だ。

それでも植物達のヘイトは俺達に向いた。

キーナが駄目押しとばかりに【火魔法】で薄い炎の壁を作り、ボス戦場への方角を塞げば尚の事。

燃え盛るフィールドを迂回した植物達が俺達めがけて凶悪な緑を打ち鳴らしながら迫りくる。

速度を上げるネビュラは、敵の正面から側面へと向かって走り抜けた。

それを追ってくる植物達。

つまり植物達は、Uターンしてボス戦現場から離れ始めた。

(僕ら敵引っ張るの上手いよね)

(……まぁ、実績はあるな)

交代でポーションを飲み、再チャージされる2人分のMP。

そこへ輝くシステム通知。

手早く読めば……どうやら俺たちよりも遥かに殲滅向きのヒトがログインして現場に到着したらしい。

敵の群れをUターンさせる……つまり敵の後続の脇を駆け抜けている俺達は、群れの中心に恐らくボスだろう巨大な植物がいるのを確認した。

ヒュージニヤニヤランナー Lv60

……うん。種類はともかく、群れにボスまでいると俺達だけじゃ倒しきれないかもしれないな。

素直に援軍の方へ誘導しよう。