軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:夢のお休み処、完成。

「「……ハァ〜」」

画廊で色々あった俺達は、その色々を一応城に報告してから拠点に戻ってきた。

謎のイベントだったな……?

まぁ種族なんて普通は見た目で分かるものだし、デミ・レイスだっていずれ広まるだろうからいいと言えばいいんだが。

城に報告して、念のため証拠品として絵は必要か訊いたんだが……その時その時で描かれるものが変わる絵で、キャンパスにも特に珍しい特徴は無く、しかもサインなんかも無いとくれば何の手がかりにもならんということで……絵はそのまま俺達が持ち帰ってきた。

「……結局、風景画買いそびれたな?」

「それなー」

「どうする?」

「う〜ん……」

キーナが唸りながらインベントリからキャンパスを取り出した。

そこには、拠点に佇む森夫婦状態のキーナの姿が描かれている。

「……それ飾る?」

「いやこのまま飾っても1番近くのオバケなんて僕になっちゃう事が多いだろうから、つまりただの僕の肖像画じゃんすか。リンゴジュース出す時点で『森夫婦の作った店』ってのは分かるんだから、そこに自分の肖像画ってどこのお貴族様よってなっちゃうよ」

「それな」

しかも拠点では変装無しで過ごしているから、その状態が絵に出た場合、身バレの可能性が高いんだよな。

夢の中の店で1番近い判定がどこになるのかは分からないから、ワンチャン他のオバケが描かれる可能性もあるが、常に張り付いてチェック出来るわけじゃないからそのまま使うのは危ない橋が過ぎる。

キーナはうんうん唸って、スッと箒型の杖を取り出した。

「オバケが描かれて変化する絵ってのは……まぁ エフォ(EFO) ならそんなに怖い絵にはならないだろうから、面白いし採用したいので〜……仕様を変えてみよう」

「どうやって? ……ってそうか、その絵に使われてるのは【死霊魔法】なんだっけ」

「そ。 ……【ネクロマンスクリエイト】」

絵に杖を当てながら唱えられた魔法の言葉。

それに応じるように、キャンパスはほんのりと紫色に輝いて……描かれている絵がガラリと変わった。

「「おおー」」

描かれたのは、紫色の海……死の海の中だ。

その海の底で……まったりと横たわってヒドラのような手のようなモノにマッサージを受けているダラダラとした色んな生き物達の霊が描かれている。

「……ゆるい絵になったなー」

「大成功。『近くのオバケ』から『近くの死の海の中のオバケ』って感じに指定を変更したから、僕らの事は描かれなくなったはず!」

「うん、失敗エフェクト出なかったから大丈夫だろ」

怪異的な雰囲気はゼロになったけどな。

「水族館みたいな雰囲気あるし、これなら飾ってもいい感じになると思うんだけど。どう?」

「まぁいいんじゃない?」

のんびり休憩するだけの店だから、雰囲気はあっていると思う。

ヒドラっぽい手がちょっと不気味だが……まぁ変な夢に出てくる絵なら別におかしくもないだろ。多分。

絵を一度インベントリに入れて自室へ戻り、眠って夢の中の店へと入る。

「ふぁ〜……よく寝たモン」

「おはようモモンちゃん」

ちょうどよく起きた夢のモモンガ幻獣にキーナはクルミをひとつ。

そして俺はインベントリから絵を出して、額縁を【木工】スキルで調整し、壁に飾った。

「あぐあぐ……これ死の海かモン?」

「うん、見たこと無かった?」

「そりゃ死の海に入ったら死ぬモン。モモンはまだ覚醒世界で死んだ事ないから初めて見るモン、面白いモン」

「そっかー」

ダラダラとカウンターに座ってクルミを齧るモモンガ幻獣を置いておいて、俺達はグルリと店全体を見回す。

装飾は整った。

棚に商品を置いたし、無人販売所らしく代金を入れる箱も置いた。

幻獣のひとやすみする場所も作った。

「……完成?」

「だね、後は最後の仕上げ」

そう言うと、キーナは丸い木のトレーのような物を作り、その中央に四つ葉のクローバーを描いた。

その四つ葉の周りを囲むように、何本か短い木の棒を立てる。

そして、それを壁にかけた。

「クラウーン、おいでー」

そこら辺をウニョウニョしていた白夢草のクラウンが呼ばれてやってくる。

「誰かを呼んでる時は、ここが待機場所ね」

クラウンは言われた通りトレーに近付いて、短い木の棒を支えに、中央の四つ葉を囲む花輪のような形態で落ち着いた。

「その支えで大丈夫そう?」

クラウンは体の1部を『OK』の手のジェスチャーのようにして返事をした。

「……今のジェスチャー、教えたの?」

「うん、喋るの苦手ならジェスチャーの方が楽でしょ」

「まぁ確かに」

これで準備は完了。

最後に、クラウンに言って夢のルールを再設定する。

自分で寝入った元気な冒険者だけを、ランダムで夢に招く事。

招いた事のある冒険者よりも、来た事のない冒険者を優先する事。

何かを使って自分からここへ入り込もうとするのは拒否する事。

招き入れる限界は、昼に1人、夜に1人の1日2人まで。ゲーム内の1日でだから、リアル1日で6人だ。

一度に招き入れるのは1人だけ。

招いた誰かが滞在している間は次を呼ばない。居座り防止に、ゲーム内で9時間経ったら夢から出して目が覚めるようにする事。

「う〜ん、設定が多いねぇ」

「まだまだ足りない、後は……」

装備は着たままでOK、インベントリは使用可。

掲示板は使用不可。

商品の購入ルールを破ろうとしたり、何かを盗もうとしたり、店で暴れたり、物を壊したり、何かに攻撃したりしようとしたら、すぐに夢から追い出す事。

代金以外の何かを残していこうとしたら、本人のインベントリへ返す事。

「あ、僕らはその条件からは除外してね。……よし、プレイヤー相手はこんなもんかな」

「後はそれ以外について」

扉は誰かが通る時だけ、夢の牢獄坑道へと繋ぐ。一方通行で、店から牢獄坑道への移動はOK。牢獄坑道側は、繋いでいない時は扉を消して、坑道から店への移動は不可。

夢の幻獣は、俺達の情報を誰にも話さないと約束出来るモノだけ、出入り自由にする事。変装していない姿とか、おしゃべりされると困るからな。

そしてクラウンに、ここへ来た相手と会話をするのは構わないが、俺達の情報は絶対に話さない事を言い含める。

後は念のため……もしも飾ってある絵が死の海以外の景色を描いたり、何かがこっちを覗き込むような絵になったら、誰にも見られないように隠しておく事。

「う〜ん、ルール設定って大変!」

「……敵対錬金術士の夢のアジトとかどうしてるんだろうな」

「白夢草に都度対応してもらってるだけなんじゃない? 侵入者を認識してその時だけ禁止事項増やしてる感じだったじゃん」

「過信してるなぁ……まぁそうじゃないとゲームにならないか」

「本気のセキュリティされるとスニーキングミッションで遊べないからね、『何でこいつらこうしないんだ』はゲームあるある」

……と、いうわけで、俺達なりのセキュリティ設定は完了だ。

「はい、夢のお休み処『四葉亭』の完成〜!」

「おー、あとはやってみてどうなるか」

まぁこの内容ならまずいことにはならないだろう。

完全に趣味の店だ。駄目だと思ったらすぐにやめればいいだけだしな。