軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:魔導書の中身を読み解いて

恋の女神の使者が帰ってから、掲示板で情報集めをしていた俺は、ひとまず満足してウィンドウを閉じた。

無詠唱については他のプレイヤーの進捗も俺達と似たり寄ったり。特にダンサースキル以外に新しい方法は見つかっていない。

俺達は意図してクエストをダッシュこそしていないが、たまたま休日と重なったから突破タイミングは早い方だろう。

だから、運用例の動画なんかも、まだ上がってはいないらしいな。

一方でキーナの方も、理の女神が書き込んだ魔導書を読み終えた。

チラッと見た感じパズルのような雰囲気があったから、パズルゲームがあまり得意じゃない俺は、読むのをキーナに任せていた。

「はー……なるほどねー」

「どんなだった?」

「理の女神様も技術神様も初恋同士ですったもんだしてて大変かわいらしゅうございました!」

「なるほど?」

魔法の方は?

「魔法はねぇ〜……確かにこの仕様だと聖人聖女さんは大変だっただろうなぁ〜って感じ」

「ほう?」

ソファの隣に座るキーナは、パラパラとページを繰り、小さな刻印のような物がズラリと並んだページを開いて見せた。

「昔の魔法は効果ひとつひとつに名前をつけて登録して、皆でそれを使ってたって話だったじゃん?」

「うん……確かそんな話だった」

「つまり、名前が被っちゃいけないわけよ」

「それはそう」

昔の仕様だと、同じ名前の魔法が二つあるとどっちが発動するか分からない。だから同音異義の魔法は無かったのだろうと推測できる。

「それはつまり、その名前さえ世界に対して示す事が出来れば、その魔法を発動させる事が出来るって事だったみたいなのね」

「あー……まぁそうだね」

昔の魔法は、『どんな事が起こるか』をあらかじめ世界に登録してある状態だった。

だから、それに対応した言葉がスイッチとして、どんな方法でもいいからそのスイッチを押せば、その魔法は発動する。そういう物だった。

「だから、コレ。この小さい円形の模様は、それぞれ50音とアルファベットに対応してて、これを重ねて魔法陣を作る事で詠唱と同じ効果を得ていたんだって」

「へぇ~……確かダンサースキルの『ボディランゲージ』も振り付けで文字を表して詠唱する物だったな」

「考え方は近いね。模様を書くか、体でポーズを取るか、どっちかって感じ」

「だな」

「魔道具の元の元って感じの物だったみたいだよ。これを大元にして『保護』とか『癒し』とかの固有効果を持つ【刻印】が作られたらしいから」

「なるほど」

使い方は……まず『何をしたら発動するか』という部分を指定する模様を用意するらしい。『書き上がった模様を叩いたら発動』とか『出来上がったら即発動』とか、そういう発動条件を決める大きな円の模様を書く。

その円の中に、発動させたい魔法の詠唱を、さっきの表を元に模様を使って書き込む。

後は目的に合わせて発動。

1番簡単な使い方はこんな感じだった。

「昔々の聖人聖女さんは、絶対に前に登録した魔法と名前が被らないように全部確認しないといけなかったらしいよ」

「……そりゃキツいわ」

魔法が増えれば増えるほど地獄だ。

そして『古い魔法はいらない』って言われた時に、この辺の技術が消された理由もなんとなくわかった。

【◯◯クリエイト】っていう共通の文言で勝手に個人のイメージを読み取って発動するようになったから、固有の魔法の名前を言う必要が無くなったんだ。だからそのための 模様(言語) がそもそも不要だろうって女神は思ったんだな。

「注記によれば、今の僕らがこの技術を使う場合、自分で考えて登録した魔法じゃないと使えないそうです」

「あー……俺だと【追い風撃ち】とか?」

「そうそう」

昔の技術だけど、今の魔法の個別登録対応はしてくれるんだな。そこはまぁ、ゲームのご都合主義か。

「ただし、魔道具と違って作った本人じゃないと使えない」

「ふむ……?」

「個人で登録してる魔法を詠唱してるだけだから」

「ああ、なるほど」

そこが紐付けされてるのか。

じゃあ本当に詠唱を外部の模様でやってるだけなんだな。

「いやぁ〜、そこら辺のページに書いてあったんだけど……まだ幼児の技術神様がヒトと一緒に考えた魔法の法則を一生懸命にたどたどしく理の女神様へ伝えてた思い出とか、微笑ましくてたまらんね!」

「……技術神にはとんだ羞恥プレイでは?」

しかもそれを絵本にしてフリマで売るつもりなんだよな……まぁ止められてないからいいのか……神話だしな。

「この本読んだらね、本に書かれてる模様も【刻印】のテンプレに追加されたよ」

「へぇ」

なるほど、システム的な扱いは【刻印】になる、と。

キーナは【刻印】のレベルを実用段階まで上げてあるから、他の紋様と同じようにスタンプ感覚で扱えるわけだ。

「うん……これはあれだね。カッコよく魔法陣から魔法がドカーン!みたいな事が出来るようになるやつでもあるね! 厨二心が疼きますなぁ!」

「よかったね」

楽しそうで何よりだ。

そんなキーナは、ほくほく顔で本の表紙を撫でながら……俺に目線を向ける。

「相棒は、無詠唱はどんなのにしたいの?」

「ん、俺?」

「うん。これはこれで色々使い道はあって楽しいけど。それはそれとして、普段の戦闘で相棒が使いやすそうなのを作るのは全然有りだからさ」

「ふむ……」

俺は今回入手した魔法の内容を吟味し、自分の戦闘スタイルを少し考えた。

「……いや、今回の魔法でちょうどいいかな」

「そう?」

「うん」

割と俺の戦闘スタイルとは相性が良さそうだ。

まずはゲームによくあるスクロール系のアイテムでも作ってみるか。