軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:鮮度が命の情報は、速やかにお届け。

気配が近付いてくると言われて、咄嗟に天井まで逃げましたキーナです。

ちょっと上がり過ぎたかな? でも昔どこかで高い所は見つかりにくいみたいなの読んだ気がするんだよね…… エフォ(EFO) でも適用されるのかは分かんないけど。

ん〜、でも怪しいヒトが来るなら会話とかしっかり覚えておきたいなぁ。メモとかとりたいけどペンで書く音とか聞こえたら困るし……最悪ペンを落としたら取り返しがつかない……あ、そうだ。

僕は気配がまだ部屋に来ていないのを確かめてから、ネモの入った籠型のペンダントに口を寄せて、出来るだけ小さな声でお願いした。

「ネモ、これから来るヒト達の会話を覚えておける?」

ネモは僕の耳元に小さなコウモリを生やして返事をした。

「デキるヨ」

「デモ」

「覚えテる間、他のコトできナイ」

「それでいいから、お願い」

ネモはニュッと小さなコウモリが籠から伸びて、僕の目の前の梁に止まって下の様子を窺うような姿勢で静止した。

うん、光源は1階のロウソクだけで梁の上は暗い、影みたいなネモは見えにくいから大丈夫だと思う。

僕は光学迷彩モードでジッとしながら、聞こえてきた足音に息を潜めた。

ガチャリ……扉が開く。

入って来たのは2人……僕の位置からじゃ人相は見えないや。でも服装の感じは前に見た怪しい錬金術士と似た感じっぽいかな。

その二人組は、なんだかダルそうな雰囲気で会話を始めた。

「だよなー、今日もいないよなー」

「やっぱりあのやり方だと初日と次の日がピークよねー、特に今は昼間だし」

声の感じは若い男女の二人組かな?

診察台みたいな台を見て愚痴みたいに言葉をこぼし、男の方は診察台に座ってくつろぎ始めた。

「それにしたって少なすぎだろー。想定を大幅に下回りすぎだ」

「原因はわかってるでしょ、あの忌々しい新聞のせいよ。あれが飴玉の注意喚起なんて書いてばらまかなければ、次の日に見つけた馬鹿も何も考えずに口に入れたってのに」

おおー、なるほど。プレイヤーがやってる新聞に『怪しい飴玉は食べないように!』って書いたから被害が控えめで済んでるんだ。あの新聞、NPCも読んでるもんね。

「あの新聞社、何か対策した方がよくね? 確実に邪魔になる……っていうか既に邪魔になってるじゃん?」

「上はその方向で検討中よ。手段が決まり次第、何かしら動くでしょー」

おおっと、これは新聞社さんに伝えた方がいい内容。それこそ検証勢のヒトに伝言頼みつつ投げた方がいいかな。

女性の方は棚で何かしているらしく、時々カチャカチャ音が聞こえてくる。

……相棒が見つからないかハラハラするなぁ〜! まぁ僕みたいなウッカリはしないだろうから、大丈夫だと思うけどさぁ〜!

僕の心配を他所に、相棒が見つかったような様子なんて欠片もないまま、ダルい雰囲気の二人組はお喋りを続ける。

「てか本当なら次の飴玉作って適当に撒くつもりだったのによぉー! 新聞のせいで効果は薄そうだし、挙句に蜜が部屋ごと盗まれるとかどうなってんだよ?」

「アタシが知るわけないじゃない。意味わかんないわよ、素材もメモ書きも機材も、ちょっと留守にしただけで1部屋丸ごと空っぽとか! 本当意味わかんない!」

((デショウネ))

僕もちょっと出かけて帰宅したら家の中身が家具ごと消えてたら倒れると思う。

フフ、危ない危ない、うんざりな二人組の声に吹き出しそうになったよ。

「ま、対策はもう済んでるし? 次からここの物持ち帰ったら白夢草の根が着いていくんだろ?」

「そうよー、よく考えれば向こうから懐に入れてくれるなんて絶好の機会なのよね。むしろ囮用のお宝でも置いて、ドンドン空き巣に来てもらえばいいんだわ」

わーお、これはもう空き巣は危ないからやめたほうが良さそう! パヤヤちゃん持ちのヒト達にも警告しないと。

二人組は用事を終えたのか、『はー、ヤダヤダ』みたいな空気を漂わせて元来た扉へと戻り始めた。

「使えるかもって言ってた木はどうなったのかしらねー」

「あー、アレは市場価格が高すぎて厳しいってよー。となると……やっぱあの薬の完成を急がないと……」

「ちょっと、それは5番ラボの外では話題に出すのも禁止でしょ」

「固いこと言うなって、大体……」

ガチャリ……二人組は扉の向こうへと消えて行った。

(空き巣被害で材料不足かぁ〜、大変そうだねぇ〜)

(本人が言うか)

もう効果覿面でニコニコしちゃうよ。

(でもそっかー、やっぱりこの程度で諦めたりはしないかー)

(それはそう。あれ1回で敵の組織がひとつ脱落するのは、ゲーム的にも歯応えが無さすぎる)

(だよねー)

まぁ、わかってた事だけどね。

それならそれで、嫌がらせを継続するだけだよ。

(とは言っても、もう空き巣はやめた方が良さげだよね)

(だな……相棒、気配が範囲外になったから、ちょっとこっち降りてきてくれる? 写本作って欲しい本が棚にあった)

(はーい)

ネモを戻して、再び1階に下りる。

写本は……あ、この名簿みたいなやつね、了解。

(写本作ったらどうする? もっと奥まで行ってみる?)

(……いや、1回戻ろう。空き巣行為が危険になった事と、新聞社が狙われてるかもしれない事は、早く伝えた方が良いと思う)

(オッケー)

まぁ、見つけたから僕らはいつでもまた来られるしね。

* * *

スクショを撮ったり、写本を作ったりしてから、夢路を通ってアヤカシちゃん達の所へ戻る。

「ただいまー」

「おかえりなさーい!」

「我々しっかりと役目を果たしておりました!」

「根っこが入って来ようとしてたから、えいえいって叩いて追い返しておいたから!」

「げ」

「……マジか」

わぁお、本当に逆流みたいな事しようとして来てたんだ?

これは中継地点になってもらって正解だったねぇ。

「……ねぇアヤカシちゃん達。もしも他の人が同じようにここからあの夢に行かせて欲しいって言ってきたら、それはオッケー?」

「もちろんですよ?」

「ヒトの子お助けキャンペーン中なので」

「なんなら我々、時々さっきの夢を覗いて、ヒトの子が連れ込まれたら助けようかと思っておりました」

「そして『あのアヤカシのナニガシは、夢の中でも助けてくれるアヤカシらしいぞ』といった噂になろうかと!」

おおー、有名になる事への下心が相変わらず強ーい。

でもこれなら、他の人があそこに潜入しようと思った時はここを使えば安全そうだね。

「じゃあここの事も含めて、戻ってから内容まとめて検証勢とお城に提出しようか」

「……あ、お城にも出すんだ?」

「禁制品あったから、一応?」

「……ああ、そうだった」

宿題としては、良い所まで達成したと思う。

徐々に包囲網を狭めて行けるといいねぇ。