軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:とても意欲的なアンデッドドラゴン

思いがけずに大物と出会ってメインクエストにも関わりそうな話を聞いた。

あまり放っておかない方が良さそうな内容には、残念ながら手が出せなかったが。

「ごめんね力不足で」

「構わぬ、いずれ打てる手が増えた事に変わりはない」

「強くなったらまたやってみて欲しいトゲ」

キーナの封印も失敗したし、これは後で考えるなり相談なりした方がいいだろう。

そんな感じの事を考えていると、骨のドラゴンが『やれやれ』といった様子で嘆息した。

「結晶に封じて済んでいたのなら、そろそろ生まれ直しに行くつもりだったのだがな。この分ではまだ先になるか」

するとハリネズミ幻獣が「トゲェッ!?」と悲痛な声で鳴いた。

「そ、そ、それじゃあ……亡骸の結晶化の続きは……っ!?」

「延期に決まっておろうが。アンデッドとなった今、お前の欲望のためにジッとしているつもりはないぞ」

「トゲェ〜……」

目に見えてしょぼくれるハリネズミ幻獣。

それを横目に見ていた骨ドラゴンは、諦念を滲ませながら俺達に頭蓋骨を向けた。

「……せっかくだ、そこなヒトの子らと死の精霊よ。少し寝起きの運動に付き合え」

「うん?」

「……俺達ですか?」

「そうだ。お前達が強くなれば、その分早く封印とやらも成せるやもしれぬであろう。アンデッドの体になるのは初めて故、それを試す意味もある」

そう言いながら、骨のほとんどが黒い結晶になっているドラゴンがゆっくりと立ち上がる。

寝起きの運動とは……つまり戦闘だ。軽く訓練のような模擬戦がしたいって事だろう。

今まで通常のNPCと同じだった骨ドラゴンに、エネミー表記が出る。

メララックス・ブラックダイヤスケルトンドラゴン Lv117

名前が長ぇ、そしてレベル高っ。

「おおー、ブラックダイヤなんだー」

「そうトゲ! やはり闇の属性を持つブラックドラゴン様の亡骸ともなれば、高貴な煌めきをもつブラックダイヤモンドこそ変質後の結晶にふさわしかろうとハリネズミ幻獣は判断したトゲ!」

「へぇ~、ドラゴンさんって闇の属性?」

「左様」

「そして今はアンデッド?」

「その通り」

「……僕ら、死霊魔法使いと死の精霊の契約者だからアンデッドに有効打無いけど、お互い弱点つけなくて泥仕合にならない?」

うん、確かに俺達と属性が思いっきり被ってるな。ここに来れたのも、なんとなくメタ的なフラグを踏んだ気配を感じる。

しかし相棒、たぶん泥仕合にはならないぞ。

レベル差がありすぎるから、俺達が一方的に蹂躙されて終わる。

ドラゴンは、そんなキーナの言葉を聞くと不思議そうに首を傾げた。

「……アンデッドの弱点が突けぬ? なんの冗談だ」

「え? だって【光魔法】無いから」

「……一応【火魔法】はあるけどな」

「属性の話ではない。……ヒトの子は、力の流れを見る事は出来ぬのか?」

「えーっと……魔力を見る【解析】の事?」

「それだ、やってみろ」

キョトンとしたキーナが、半信半疑といった表情のまま「【解析】」と唱える。

そしてドラゴンを見て、納得した顔になった。

「あ〜、なんか色が濃い所がある?」

「それだ。アンデッドは既に肉の体が無い。故に肉体的な急所は無いが、霊となった魂が存在を維持するための芯となる部分はある」

「へぇ~! 今までオバケに【解析】してなかったから気付かなかった!」

なるほど、それなら転職条件の候補に【死霊魔法】がある魔女が【解析】を覚えるのも納得だ。

「スケルトンのように、何かの仮初めの体と霊魂が入っている場合も、それで魂と仮の体を結びつけている場所が見えるはず」

「ふむふむ」

「そして霊魂を扱う術を得ていると言うのなら、それを混ぜた炎を用いれば良い。死霊がしがみつけぬ程に、死の海の冷たい癒しを求める程に焼き尽くすのだ。牙や爪……ヒトの子には武器といった方が良いか? 武器にその炎を纏わせるのも良い……というか、死の精霊はそれを知らんのか?」

キーナと一緒に『へぇ~』って顔をしていたネビュラは、唐突に話を振られて……そっと目を逸らした。

「……死の精霊の仕事は死の海の管理ぞ。霊蝶ならばともかく、好きで現世に留まる霊魂を問題にした事は無い」

「噂には聞いていたが、本当に死の精霊は死の海から滅多に出てこんのだな……」

うん、実は引きこもりなんだよな、死の精霊って。

……まぁそれは置いておいて。

対アンデッド戦のコツを教えて貰えたのは素直に助かった。

敵対死霊使いと戦った時はそこそこ大変だったからな……地下で天井をぶち抜いたのは流石に力技すぎたし、割と俺達も生き埋めが危なかったから、普通に有効打を得られるならその方がいい。

俺達が素直に喜んでいると、ドラゴンは『これでよし』という雰囲気で前足をワキワキと動かした。

「よし、全力で撃ち込んで来るがいい。死なん程度に手加減はしてやろう」

「うっかりドラゴンさんが死の海送りになっちゃったりしない?」

「それ程にヒトの子が強いのならば安心して生まれ直せるわ。遠慮はいらん」

そして俺達のやり取りを見ていたハリネズミ幻獣が、まだしょぼくれたままの様子で口を挟んだ。

「せめてハリネズミ幻獣の作業場じゃない所でやって欲しいトゲェ……」

それはそう。

そして別の場所で始めた模擬戦ならぬ訓練は……まぁ予想通り、それはそれは丁寧に指導されたとだけ言っておく。