作品タイトル不明
キ:予定の完了と予習のヒント
久しぶりのシャーロットお嬢様を見送り、披露宴に出席する事を決めた直後。
すれ違うようにして僕らの店に、ある意味待っていた面々がやって来た。
「知恵の林檎下さい。それと、イタコスライムの降霊も」
「はーい」
そう、ガチャ中毒でお馴染み、検証勢の皆さんです。
イタコスライムの降霊はある意味ガチャだからね、君達は食いつくと思っていましたとも。
林檎を飲み食いしては結果をスクショしメモを取り。グミちゃんが呼び出したオバケに簡単なインタビューをしてメモを取る。
うーん、さすが検証勢。言動が実に勤勉。
ゲーマー界隈ってこういう人ちょいちょいいるよね。好きなゲームの研究にのめり込むタイプ。
そんな常連ともいえる面子の中に、いつものアメリカの大学の卒業生みたいな格好を見つけて、僕は声をかけた。
「論丼さーん」
「む?」
ヒラヒラと手招きすると近くへやって来る。
「何だ?」
「これ、どうぞ」
そう言いながら、例の『夢見の薬飴』をインベントリから出して差し出す。そのためにここで店やってたわけだからね。
僕が差し出した飴玉を見た論丼さんは……何故かものすごく驚愕した顔になって僕と飴玉を見比べた。
「なっ……ま、まさかっ!?」
「違います」
コラァー! 絶対いま勘違いしただろー!?
この飴玉作ってばら撒いたのが僕だと思った顔だよそれは!
ちーがーいーまーすー!!
「僕はインベントリに飴玉入れられた側です。なんか調べてるんですよね? 僕らも調べてほしいんで、どうぞ」
「あ、ああ……そうか、スレか何かで見てくれたのか。助かる」
買い取りって話ではあったけど、なんだかんだマナーの良い常連さんしてくれてるからタダでいいよ。
そう言ったら、周りの検証勢も「アザーッス」「助かりまーす」って会釈してくれた。ええんやで。君達ガチャで金欠かもしれないからね。
「この飴を持っているという事は……春イベントの開会式にいたのか?」
「いえ、ピリオにはいて、やってるなーとは思ったけど、人混みには入らないで買い物してました」
「……ほう?」
「へぇ、割とレアケースじゃね」
検証勢のヒトがメモを取るから、ついでにこれも伝えておかないとね。
「で、その日にですね……なんか腰のベルトに瓶を着けてる、錬金術士っぽいNPCとぶつかったんですよ」
「……錬金術士?」
「おっとぉ?」
「他は買い物こそしましたけど、あんまりヒトに近付いてないんで……犯人が透明とかじゃなければ、割とそのNPCが怪しいかなーと思ってます」
「なるほど、森女さんありがとう!」
「おおー、これマジだったら結構有力な情報かもしれん」
「開会式の人混みだと色んなNPCにガンガンぶつかってて絞れなかったからなー」
たぶんだからね?
これで勘違いでミスリードしちゃってたら申し訳ないから、あくまで証言のひとつにしておいてね。
(よし、ミッションコンプリート!)
(……危うく黒幕になる所だったな)
(それなー!)
今度パピルスさんに会ったら論丼さんの勘違い未遂を教える事にしよう。
そんな感じで検証勢の人達と話をしていると、その内のひとりが「そういえば」と声をかけてきた。
「さっきグリラン爺様の孫ちゃん来てたけど……森夫婦さん、孫ちゃんのパーティに出るんです?」
グリラン爺様イズ誰?
って思ったけど……たぶんシャーロットお嬢様の事だよね。って事は自動的に開拓神の聖人やってるお爺ちゃんが『グリラン爺様』かな。
「まぁ出ようかなーとは思ってますけど」
「あー、じゃあ有志wikiに『お貴族パーティの勧め』ってまとめがあるんで、目を通しておくといいですよ」
おお……そんな特集があるんだ?
検証勢の中にはチラホラ参加経験者がいるようで、訳知り顔でウンウンと頷いている。
「リアルは庶民だからさー、ゲームとはいえ金持ちのパーティとかどうしたらいいか分からんくて、世話になったわー」
「手土産とかね、何持っていったらいいのか分からんかったし」
「冒険者は戦闘装備が正装って認識されてるから、普段の装備でオッケーっての助かるよな」
「俺、そのまとめ見てなかったら高いスーツ仕立ててたわ」
「「わかる」」
「カトリーヌお嬢様は普通にドレス仕立てたらしいぞ」
「それはほら、お嬢様だから……」
「お嬢様だからさ……」
うん、わかる。あのお嬢様は素直に正装仕立てて出席しそう。
てかカトリーヌお嬢様のドレス姿も見てみたいわ。絶対似合う。
検証勢達の反応を見る限り、かなり心の準備にも良さそうなまとめだから、それはきちんと目を通して準備したほうが良さそうだね。
「ちなみにそこの内容は、だいたいパピルスからの情報です」
ああ〜、パピルスさんかぁ〜。
あのヒト、貴族になってたもんね。納得。