軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:なんだこれ?

「ただーいまー」

「おかえり」

「ナナちゃんの具合どう?」

「三人とも寝た」

「あれー?」

「予防だしって三人とも飲ませたら、キャトナもサナも、ナナの心配して見てる間にうとうとしてそのまま」

「そっか」

買い物から帰って来たキーナを外で出迎えて、現状の報告をする。

ナナはまだ熱も出ていない。早めに飲ませて寝たから、とりあえず様子見だ。マリーについていて貰っている。

ケラケラと抑えめに笑うキーナと一緒に拠点に戻り、買ってきた物の確認を始めた。

「ピリオは開会式でめっちゃ混んでたよ。初心者もいっぱいいた……あ、これが【医術】の本ね」

「うん、ありがとう……これとこれと……ああ、『氷ミント』じゃなくて『氷蜜ヒョウタン』にしたんだ?」

「ミント無かった。代わりの材料が何種類かあるの助かるよね」

「アイテムの種類が膨大だから、レシピはある程度重複するんじゃないか?」

「なるほど。……そうだ、これこれ『桜の苗木』、二本買ってきたから後で植えよう」

「いいけど、なんで二本?」

「普通の土栽培と直植え」

「また環境に立ち向かわせる気だな……ん?」

共有インベントリから今回買った物をどんどんテーブルに出していると……薬の材料の間に妙な物が入っていた。

『夢見の薬飴』…品質★★★

食べると飴に包まれた薬によって、中にこめられた夢を見る。

一見して、薬包紙に包まれた普通の飴玉だ。

だが、1個しかない。

キーナが自分用に買ったなら自分のインベントリに入れるだろうから、共有インベントリで1個だけなのは違和感があった。

「飴買った?」

「飴? 買ってないよ?」

「んん? ……じゃあこれは?」

「んえ?」

キーナに飴玉を見せると、眉を寄せて悩ましい顔をした。

「え、何それ。知らない」

「……なんかのオマケ?」

「いや、オマケはクスリンゴ1個だけ……そんなオマケ付きの何か買った覚えは……無いよ? うん、無い無い」

え、怖。

何なんだこの飴……

「……なんかのクエストアイテムか?」

「えー? クリスマスのマッチみたいな?」

「そう」

「んんー、でもそんなの配ってるNPCいなかっ……あー?」

「何?」

キーナは、「もしかして……」と自信が無さそうなしかめっ面を浮かべた。

「……露店広場でNPCにぶつかった」

「ほう?」

「いやでも、関係あるかどうかわかんないよ?」

「うん、それはそれとして、どんなNPC?」

「……腰のベルトに瓶を吊ってた」

「錬金術士じゃねーか」

最近の流れで錬金術士のNPCは疑ってかかった方がいいだろ。

「飴も、中に薬入ってるって書いてあるしな……」

「あ、そっか。錬金術士が作った薬かもしれないのか」

「可能性だけど」

その可能性があるなら安直に食べてみるっていう選択肢は取りたくない。

せめてこれでどんな夢を見るのか分かればいいんだけどな……

夢……夢と言えば。

「……ペタにでも訊いてみる?」

「あー、そうだね。卵に声かけて寝れば会えるわけだし」

ついでに『夢会い草』を使えば俺も一緒に話が聞ける。

ナナ達も寝ている事だし、見ていてくれているマリーにちょっとペタに会ってくると伝えて、俺達は寝室へと引っ込んだ。

* * *

2人で寝入って目を開けると、そこは明るさが反転した寝室だった。初めてペタと話をした時と同じだ、ここでペタに会おうとするとこの部屋がデフォルトなんだな。

2人で部屋を見渡すと、そう間を置かずにペタがベッドの側に現れた。

「ペタちゃーん」

「マスター、何か気になる事が?」

俺達はインベントリから『夢見の薬飴』を出してペタに見せた。

「知らない内に持ってたから、どういう物なのかさっぱり分からなくて。ペタちゃん、これ食べたらどんな夢を見るのかとか分かる?」

ペタは飴玉を眺めて、大きな金色の目をクルリと回す。

「……ペタちゃんには、ヒトの作ったモノの中身は分からない」

「薬の効果とかは分からない?」

「肯定、しかし」

ペタは目を細めて飴玉を睨みつけた。

「閉じ込められているモノから、うっすらと悪夢の気配は感じる」

「悪夢」

「その夢を見るのなら、ペタちゃんを連れて行く事を推奨する」

なるほど?

夢魔が注意喚起するような代物ではあるって事か。

「わかった、覚えておくね。ありがとうペタちゃん」

「助かる」

ペタは満足そうに相棒に撫でられている。

「食べない方が良さそうだな」

「だねぇ。……これってさ、僕らにだけ発生したイベントなのかな?」

「……と言うと?」

「僕、変装しないで買い物行ったから。錬金術士が『木材の業者』を狙ったわけじゃないと思うんだよね」

「そうだね」

「ってなると……ぶつかった弾みで偶然荷物に入っちゃった扱いなのか、それともわざと僕に押し付けたのか……どっちかなって」

ああ、確かに無差別なのか事故なのか分からないな。

「……まぁ今からピリオに行っても、そのNPCが見つかるわけないし……様子見かな」

「だよねー」

どのみち、悪夢とはいえ夢だからな。そこまで危険物かっていうと微妙なラインだ。

即命の危機に直結するわけでもないし、情報が出てくるのを待つのが無難だと思う。