軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:それゆけポメベロス

善は急げ、俺達は早速祭壇作りに取り掛かった。

「死の神様の祭壇って、決まった形式とかあるか?」

「形や素材は好きにしろ!」

「大切なのは気持ちだ!」

「死の神サマの紋とロウソクを置いて祈れば、そこは祭壇である!」

意外とフリーなんだな。あの神様の事だから、ガチガチに形式が決まっているかと思った。

……まぁ、地域差で素材が手に入らなかったりしたら困るのか。『死』なんてどこにでもある事だし。

そういう事なら、地下にある俺の作業場に石の台を作り、ちょっとした祭壇っぽく整えた。

「……どう?」

「うん、それっぽい」

「ちょっと小さくないか?」

「いや教会や神殿じゃない場所のはこのくらいだったぞ?」

「ちょうどいいと思うのだ!」

ポメベロスの中で意見が割れるのはやめてくれ。

……とりあえず多数決で『まぁよかろう』となったらしいので、土台はこれでいく。

「ロウソクはあるよ」

「後は死の神様の紋? ……どこに行けばわかるんだ?」

「ふふん、仕方がない!」

「我らが描いてやろう!」

「しっかりと見て覚えるのだぞ!」

ポメベロスはそう言うと、タッタカと庭へと駆け出して……土の地面に、グニャングニャンに歪んだ紋を描きあげた。

「違うのだ! こんなんじゃないのだ!」

「勇ましき肉球にも出来る事と出来ない事があるのだ!」

「適材適所というやつなのだぁー!」

「「「クゥ〜〜〜ン……」」」

「僕、教会に行って紋の写しとか貰えないか訊いてこようか?」

「頼んだ」

キーナが出かけている間、俺はクーンクーンと嘆き悲しむポメベロスを撫で回し、ブラシをかけて宥めた。ご褒美タイム、ありがとうございます。

そう長くかからない間にキーナは戻って来た。

自宅に神棚ならぬ祭壇を置きたいヒトはプレイヤー・NPC問わず多いようで、普通に神殿で各種神の紋の写しを買えるらしい。

そしてポメベロスの毛並みはツヤツヤのフカフカになった。

買った写しをそのままポスターのように貼ってもいいんだが。せっかくだから石板に写して彫り込み、祭壇に設置する。

ロウソクに火を点けると……なかなか雰囲気のある祈りの場が完成した。

「我々の開拓地、最初の宗教設備じゃんすか」

「そういえばそうだな」

せっかくだから、拠点の全員を呼んで、作ったきっかけと趣旨を説明した。

「キャトナちゃん達にとっては……そうだなー……元いた世界の死の神様だから、今のパパとママが、もう痛くなくて安心して眠れるようにしてくれてる神様でありー……」

キーナの説明に、キャトナ達がふんふんと頷く。

「お医者さん、何回かかかって怪我とか病気を診てもらったでしょ? 死の神様は…その忙しいお医者さんを、応援してくれてる神様でもあるんだって」

なんとなく想像できたのか、『へえー』という反応をする小粒達。

「で、その死の神様はめちゃくちゃ忙しくて休む暇も無いらしいから、皆で『死の神様ありがとーう!』『死の神様をお手伝いしたーい!』ってお祈りしたら、お手伝いが出来る悪魔が生まれるかもしれないっていうのが目的です」

「ペンが持てて!」

「文字を書けるやつだ!」

「そうでないのはたくさんいるからな!」

拠点のメンバー全員が『なるほど』と頷いた。

祭壇の上に、片手で食べられるサンドイッチをお供えして、準備は完了。

「では、お祈りー……始め!」

キーナの掛け声で、全員、目を閉じて祈りの姿勢に入る。

……あの多忙すぎる死の神様を助けたい。もう少し仕事が楽になりますように……

……そうして祈っていると、バサッと翼が羽ばたくような音が聞こえて、俺達は目を開けた。

すると、祭壇の上に、デカくて翼が白い鳥がいた。

鳥は普通の翼に加えて、真っ白な翼が1対と灰色の翼が1対増えている。そして頭の上に、天使の輪が光っていた。

「こんにちは。ワタクシはコウノトリの大天使です。一風変わった祈りが見えましたので、立ち寄らせていただきました」

そして感心したようにウンウンと頷きながら、俺達をぐるりと見渡す。

「『神の力となりたい』……天使でもないのに殊勝な心がけ、大変結構。よってワタクシ、お手伝いをする事にしました」

コウノトリの天使は、『気が向いただけなので、毎回こんな事はいたしませんよ』と前置きしてから、クチバシで、翼の間から小さな光をひと粒つまみ上げ、祭壇にそっと置いた。

……すると、光に何かが収束して……コロリと卵がひとつ、転がった。

「はい、これでよろしい。熱意というモノが無い悪魔はあまり好みませんが、その方が都合が良い場面もあるのでしょう」

『あとは普通の悪魔と同じ、この卵の場合は『信仰』を浴びせ続ければ孵ります』とコウノトリ天使は言った。

「ではでは、励みなさいヒトの子よ。今回はワタクシの気まぐれですが、望みに向かってひたむきに動けば、このように良い事があるかもしれませんからね」

「あ、ありがとうございました!」

「……ありがとうございます」

呆気にとられていた俺達が我に返って礼を言うと、天使は満足そうに頷き……いつの間にか祭壇の上に出現していた羊皮紙を1枚くわえると、スゥッと消えて飛び去って行った。

あ、サンドイッチもいつの間にか無くなってるな。

残ってるのは悪魔の卵だ。

すると、ポメベロスがハッと叫んだ。

「死の神サマからの指令が来たのだ!」

「『卵を持って各地の死の神サマの祭壇を巡り信仰を集めよ』!」

「初めてボクらをご指名してのお仕事なのだ!」

「「「やったのだぁー!!!」」」

大喜びするポメベロス。

尻尾をフリフリしながら周りの面々に飛びつき全身で喜びを表現するので、ポメベロスは拠点の全員から『おめでとう! おめでとう!』と揉みくちゃに撫で回された。ポメベロスはご満悦だった。

「よくやったのだ後輩!」

「いずれ死の神サマからご褒美があるやもしれぬが!」

「我々からもご褒美をやろう!」

「「「何か欲しいモノはないか!?」」」

……ほう。

そういう事なら、ひとつある。

「……召喚契約、してくれませんか。先輩方」

なんたってかわいいポメラニアンだ。

また会いたい。

するとポメベロスは、『先輩』という単語に反応して目がキラッキラに輝いた。

「し、しかたないなぁー!」

「後輩の面倒をみるのは先輩の役目なのだぁー!」

「特別だぞぅ!」

やったぜ。

ケルベロスは首と名前が多いので、全部ひっくるめた召喚用の呼び名を何か考えろと言われたので、そのまんま『ポメベロス』で決めた。

召喚契約完了。

「告死獣はお前も知っての通り、【告死】の目を用いながら戦うスタイル!」

「我らケルベロス一派は首が三つなので、三体まで同時に【告死】の紋を付ける事が可能だ!」

「とぉってもお得なのだぞぉー!」

なるほど、相手の数が多い時に呼ぶと良さそうだな。

……でもまぁ、それはそれとして。

「いつでも遊びに来てください」

「のんびり休憩しに来てもいいからね」

「わかった」

「また来るのだ」

「では我々は行くのだ」

マリーが大急ぎで作った鞄に卵を入れて、中の首のアォンの首にかける。

「「「お仕事なのだー!」」」

そしてポメベロスは例の紫色の穴を通って去っていった。

「ポメポメしぃイベントだったねぇ」

「それな」

悪魔の卵関係は、絶対に予定に無いゲーマスAIのアドリブだったと思うけどな。じゃないとあんなコウノトリの天使とか来ないだろ。お疲れ様です。