軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:襲撃終了後と帰還してから

ゲコリン村の襲撃は無事に防衛完了した。

俺達は大した事してないんだが……最後のボス枠のデカいナマズがやや面倒な相手だったらしい。

防衛参加の報酬をと言われ……とはいえ大した事してないから遠慮して……最終的に木彫りのゲコリンをお土産に貰う事になった。キーナが喜んでたから、まぁいいか。

「襲撃は……敵対組織とは関係なかったと思いますか?」

「恐らく無関係かと。内容もこの村に来る普段通りの襲撃でしたし、時期的にもおかしくはありません」

敵対組織が何かした結果の襲撃の可能性も考えたが、タイミングも微妙だったし、怪しんでいるNPCは特に木材を盗んだりすることもなく逃げた。だから多分関係無いだろうと俺達は結論付ける。

そして、逃走した疑惑のNPCについては。

「……とりあえず、使い魔に追跡させたんで、その結果を後でお伝えします」

「ありがとうございます。こっちもスクリーンショットは撮ったので、それを元に情報を集めてみますね」

「……スクショって、NPCは見れないですよね?」

「ええ、NPCは見れません。ですが、掲示板や個人メッセージには貼れるので……」

「……あ」

「似顔絵の上手い方に伝手もあります。こちらは任せてください」

「……はい」

そういう事なら、パピルスさんに任せよう。

反応を見るのに使った木材も、そのままいつも通りに買い取ってもらった。

パピルスさんはジギタリスに名刺を渡しているから、『買い取ったパピルスさんの店に木材がある』って認識をNPCは持ったはず。

だから、敵対NPCが釣れないか、店の倉庫に置いて試すらしい。

(もしかして、ミミックちゃんの出番なのかな?)

(かもね)

お互い得た情報は魔術師団長への報告を兼ねて、城経由でやり取りをする事になった。

怪しい錬金術士が本当に敵対組織なのかどうか、こうやってコツコツと確認していく事になる。

「節奏レンジュさんもお城でお話聞けるように手配しましょうか?」

「いえいえ、拙僧は結構」

節奏レンジュさんは、使徒関係にはあまり興味が無いらしい。

「ですが、何かお役に立てるのなら、お呼び立ていただければ協力は惜しみません」

「では何かあれば是非」

……そしてアヤカシとして生まれていたゲコリンについてだが……キーナは何故か、村の子供にこっそりとコンコン窓のおまじないを教えていた。

「こんこんまど?」

「そう、大人には内緒だよ……」

どうして。

変装してるからホラーとかダークファンタジーの怪しい通りすがりみたいになっている。

(やっぱりこういう存在と出会ってハートフルなあれそれをするのは子供じゃない?)

(……まぁ、定番だけど)

(そして大人に信じてもらえなくて『ほんとにいたんだもん!』ってムキになるところまでワンセット)

世界観がファンタジーだから普通に大人も信じるんじゃないか?

……まぁ、そう遠くない内に節奏レンジュさんにもコンコン窓の噂が届いて、ゲコリンを目視する事になるだろう。誤差みたいなもんだ。

そんな風に襲撃のアフターを終えた俺達は、ゲコリン村で現地解散。

俺とキーナは、パピルスさんと節奏レンジュさんに見送られながら、オーブを使って拠点へ帰還した。

* * *

拠点へ帰還して俺達が最初に思ったのはこれだ。

「「……めっちゃ静か」」

カエルの声がしない。これに尽きる。

……もう最後の方は脳がカエルの声を認識しなくなっていたが、やっぱり煩いよなあの村のゲコポウル……

住民NPCから苦情が出たりしないんだろうか……するわけないか。ゲコリン土着信仰にガッツリ関わってるもんな、ゲコポウル。

ベロニカを呼び戻すのは日が暮れてから。

それまではゆっくりするかと家に足を向けた。

……が。

「……あれっ!?」

ベロニカが、すでにいた。

「あれー? ベロニカちゃん、なんで?」

何やら小粒達に覗き込まれながら、ジャックの腕の中で宥められるように撫でられているベロニカは、俺を見つけると悔しそうに顔を伏せた。

「……不覚をとったわ」

「……まさか死に戻った?」

「クァ〜〜〜ッ! あんの怪しい奴ぅ〜〜〜ッ!!」

「ワー! 落ち着いテ!落ち着いテ!」

カァカァと荒ぶるベロニカを宥めて聞いた所によると……

ジギタリスと名乗ったNPCはダチョウのような従魔に乗って沼を北方向へと走り抜け、鬱蒼とした森に入ったらしい。

木々が生い茂る中、見失わないように注意しつつ追跡していると……ターゲットがふと立ち止まった。

咄嗟に近くの背の高い木を選んで止まり、木の葉に隠れつつ様子を窺っていると……何者かがジギタリスの元へとやって来た。

接触してきたのは、森の中に不似合いな身なりの男。

燕尾服をキッチリと着込んだ、貴族の従者のような姿だったらしい。

「流石に何を話してるのかは聞こえなかったわ……でもこっちの存在を悟られない方が優先だと思って、そのまま観察してたの……なのに!」

燕尾服の男は、にこやかにジギタリスと話をしていて……何の前触れもなく、突然ベロニカに向かって攻撃魔法を放った。

弾速の速い攻撃をもろに受けて、ベロニカは撃沈。

最後に落下している時……その燕尾服の男がベロニカに視線を向けてフッと笑ったのが見えたらしい。

「ああ〜〜〜〜っ!! ムカつくぅううううう!!」

「……なるほど、それで荒れてるのか」

「そうミタイ」

「ありゃりゃ」

「やむを得ん……今日は取っておきの食材を出すか……」

そう言ってキッチンへ向かうと、肩にヒョイとベロニカが乗ってくる。

「美味しいやつよ! 不味かったら承知しないんだからー!」

「まかせろ」

「……失敗して悪かったわね。全然情報取れなかったのは申し訳ないわ! でも次は失敗しないんだからー!」

「うん」

「こんなベロニカちゃん初めて見た」

荒ぶるベロニカにお疲れ様のご馳走を用意して……そのまま拠点全体のパーティのようになって、その日は終わったのだった。