軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ブラッドレッド・カルトの終焉

ログインまだです。

昨日はグミのレベル上げで終わった俺達だが、その裏でヴァンパイアカルトの決戦はつつがなく終わったらしい。

公式ムービーにその動画が上がったので、今日は二人でそれを観ようと思う。

「今日の晩ご飯何〜?」

「今日は手羽先入れて煮込んだポトフモドキ」

「わーい!」

春が近いとはいえ、まだ冷えるからな。

* * *

ムービースタート。

場所はヴァンパイアカルトのアジトに入る地下通路がある小屋の近く。

……お、騎士団長がいるな。

『冒険者諸君! ブラッドレッド・カルトの討伐戦への協力感謝する!』

訓練された兵士は決められているらしい配置につき、プレイヤーらしき冒険者達はバラバラと待機している中で、ラッセル騎士団長が説明を兼ねた演説を始めた。

「騎士団長さんって、こうやって話してる時と、城で魔術師団長さんと一緒にいる時と、かなり雰囲気違うよね」

「だな」

たぶん、こういう公の場はそれ用の雰囲気を作ってるんだろうな。魔術師団長と一緒の時の方が素の感じがする。

騎士団長は、冒険者の参加者が多く来てくれたから、城の……というかNPCの兵士はここで後詰め。

地下通路のトラップは、内部へ潜入していた鍛冶師によって、無効化出来る護符が量産され届いているので、それを受け取る事。

冒険者は各自の判断で突入し、カルトのメンバーを捕縛あるいは討伐。開拓地へ明確に敵対の意思を示しているので生死は問わない。

「まぁ死んだら廃人化して復活するんだけど」

「実質死んだようなもんだろ」

そして注意事項として、昼間は弱体化するとはいえヴァンパイアは飛べるから、一応飛んで逃げないかどうか注意して欲しいという事と、水中はどうなっているか分からないから確認できそうならして欲しい、という話がされた。

後はヴァンパイアは光に弱い事をおさらいすれば、前置きは終了。

高らかに角笛が鳴らされ、戦闘開始。

「あ、グリードジャンキーの人達だ」

「お嬢様のクランもいるな」

チラホラと見知った顔がムービーに映る。

ほとんどのプレイヤーはトラップ無効化の護符を持って地下通路から突入。

数人の飛行可能なプレイヤーと人魚が空と海を確認しに行った。

「カッコいいねぇ〜、ファンタジー映画の戦争シーンみたい」

「だな」

長い地下通路を抜けると、待ち構えていた敵対NPCの従魔が一斉に襲いかかってきた。

蜘蛛や蟻の群と、地下の狭いスペースで激突。

一瞬拮抗したが、グリードジャンキーの小種族達が隙間を縫って奥へ抜け、敵の背後から攻撃。

挟撃の状態に持ち込み、第一段階をクリア。

「すごーい!」

「挟撃に持ち込むのが早いな」

グリードジャンキーはやっぱり強いな。

場面は変わって、海中の人魚が内部に入れる水路を発見。

地下通路の順番待ちをしていた冒険者の内、人魚は水路からの経路を選んで走っていく。

空の視点では、岩壁の中、ほぼ完成間近な黒い城の姿が見えていた。

俺が見た時よりもかなり建築が進んでいるな……襲撃に間に合わせようと運営が急いだのか?

空を飛ぶプレイヤー達は、外へ出てきた敵対NPCの狙い撃ちを始めた。

……と、そこで敵側に動きが入る。

高級そうな服を着たヴァンパイアがひとり、城の尖塔から出てきて空へ魔法を放った。

岩山の内側が闇に閉ざされる。

日の光を遮断したのか……もしかして擬似的に夜を作ったのか? 詳しくは分からないが、少なくともヴァンパイアが複数人、闇の中で堂々と屋外に出てきて、空の冒険者達へ魔法を撃ち始めた。

「おおー、流石に『日の光こわーい』って引きこもってはいないかぁー」

「そんな都合の良い話は無かったな」

また場面が変わる。

今度は、前回のムービーに出てきたヤーンボールシープ愛好会名誉会長になっている女性プレイヤーがメインで映った。

開けた中庭、そこにある石造りの小屋を見つけて駆け寄る。

『ヤーンボールシープはデリシャスタンポポが好物』

『……ジョセフィーヌさん、お待ちしていました!』

『ハンナちゃん! お疲れ様!』

たぶん合言葉だったんだろう……文言を呟くと、小屋の扉が開いて、俺が牢でクエストを受けたハンナが現れた。

「ああ、無事だったか」

「良かったねぇ」

ハンナはヤーンボールシープ愛好会と従魔で手紙のやりとりをして、今回の討伐に向けて補給地点の準備をしていたらしい。

物置小屋の中に物資を隠して蓄え、ジョセフィーヌを待っていた。

「優秀!」

「本当にな……」

鍛冶師のはずなのに、スパイ活動の才能がありすぎる。

他のプレイヤーも小屋へ集まって、神官系のプレイヤー達が【光魔法】で灯りと防壁を作り、前線基地としての体裁を整えた。

アジト前の転移オーブは1人3回までしか使えないから、死に戻りは極力避けたい状況。

危なくなったプレイヤーは、小屋へ下がって態勢を整えている。

「あ、なんかボスっぽいヴァンパイア映った!」

「王冠分かりやすいなー」

ギラギラとド派手な王冠を被ったヴァンパイアが、玉座のような所で荒ぶっているシーンが挟まった。

その雄叫びに呼応したかのように、色んな地点にヴァンパイアの幹部っぽい敵が現れて、戦闘が激化する。

「ヴァンパイアは筋力が高い感じ?」

「魔力も高そうだけどな……身体能力は全体的に高めなんじゃないか?」

昼に弱体化っていう、時間単位のデバフがかかるわけだし。

でも、時々敵がやってる噛みついての吸血みたいな攻撃は、プレイヤーがヴァンパイアになったらどうするんだろうな? センシティブ判定に引っかかりそうだが。

ムービーはプレイヤー達の激闘を映して、幹部が1人ずつ倒されていく。

そして最後。

王冠を被ったボスヴァンパイアが、城の上に浮かびレイドボスのような状態になった。

コウモリのような【闇魔法】のシールドを纏うボスに、攻撃を叩き込むプレイヤー達。

そして、ある程度のダメージを与えた所で、城全体に【闇魔法】のコウモリが解き放たれて大ピンチ……

『行くよ皆ー!!』

……という所で、ヤーンボールシープ愛好会のジョセフィーヌさんが、輪のような武器を前に掲げた。

武器は光を発し、その光で魔法陣を描く。

『【サモンビースト:ヤーンボールシープ・レジェンダリー】!!』

……何かとんでもない詠唱が聞こえたと思ったら、魔法陣からもっととんでもないモノが現れた。

それは虹色の巨大なヤーンボールシープだった。

『メ゛ェ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛〜!!』っと雄々しく吠えながら出現した、一軒家のようなサイズのヤーンボールシープがぶるりと震えると、虹色の毛糸がバラリと解けて鞭のようにしなり、あたりに広がった闇のコウモリを打ち据える。

呆然としたように固まるガルガンチュアさん。

ちょっと嬉しそうな顔で固まるお嬢様。

「アハハハハハハ!! なにこれ! なにこれかわいい! めっちゃすごい! アハハハ!!」

「うわぁ……」

普通に強ぇなこの羊……レジェンダリーなんてついているだけの事はある。

コウモリの群れの危機を脱した冒険者達は、ボスヴァンパイアに突撃。

無事に撃破して……ヴァンパイアカルトのアジトは、こうして壊滅したのだった。

ムービーの最後に エフォ(EFO) のロゴが映されるのを見ながら……真紀奈がひとこと。

「はー……面白かった。……愛好会、名前だけなら入ってもいいなぁ」

「……マジで?」

羊に陥落したか……元々羊好きだもんな、真紀奈は……