作品タイトル不明
ユ:とどけ、弱点の光明まで。
脱出後に最寄りの開拓地に着いた時点でクエストクリアの通知が出たので、ロードオブザピッグさんに事情を話して救助したシンドラルさんを城へ連れて行ってもらい、俺は指輪スキルでキーナの所へ飛んだ。
……まさか飛んだ先でキーナが空中に投げ出されてるとは思わなかったけどな。
ひとまず石の足場で風をやり過ごしながら状況を確認する。
何をしたのか知らないが、何故かパーティに入っている大量の味方オバケ達。
対するボスの形態は猛禽っぽい鳥の形をしたオバケ。
サイズはかなり大きめ。
それが……何故か室内でバッサバッサと羽ばたいている。
天井は少し高めな石造りの部屋だが、それでもデカめの鳥が暴れるには狭そうだ。
(ボスの悪霊はLv78か……相棒いまレベルいくつだっけ?)
(50ちょい)
(どっちも50台か……)
味方オバケ達のレベルも似たりよったり。
数こそ多いが……何か策を捻り出さないとちょっと厳しいレベル差かもな。
「とりあえず、相棒はネビュラに乗って」
「助かるー」
「ネビュラは回避しながら敵の周りを回る。敵を挟んで、俺と反対側になるように」
「ふむ、常にあの鳥の霊を挟むという事だな、承知した」
立ち回りを決めて、風が弱まったのと同時に飛び出した。
俺は周りを移動しながら矢を撃ち込み、反対側からは相棒の肩に止まったフッシーが【煉獄の炎】を浴びせかける。……フッシー、回避をネビュラ任せにしたな?
すると、オバケ達も俺達にならって猛禽の周りを回り始めた。
闇雲に突っ込んでは下がっていたのが、回避行動からの反撃がスムーズになって攻防が安定する。
叩きつけるように繰り出される翼を掻い潜り、暴風を突き崩すように【風魔法】に乗せて矢を撃った。
さて次は……猛禽……となると、目と耳が良い動物って印象がある。
とりあえずその強みを削るか。
「……【サンダークリエイト】」
イメージはボールライトニング。
閃光と雷鳴を発する雷の球を飛ばす。
時々感電もするから実にウザいぞ。
部屋の中を飛び回り始めた球状雷をボスの猛禽オバケはうっとうしそうに睨んで威嚇し始めた。
MPを全力で使っておいたから、そこそこの長さ保つはずだ。
(相棒もなんかない? ボスへの一手)
走りながらMPポーションを飲みつつ念話で訊くと、若干困ったような声が返ってきた。
(ん~、ずーっと考えてはいたんだけどねぇ……どうもオバケ相手だとピンとこなくて……)
(ふむ)
(……あ、日の光に弱いわけだし、ここ地下っぽいから、天井でもぶち抜くとか?)
(ああ、いいんじゃない?)
逃げ場らしい逃げ場のないここなら、割と有りな作戦じゃないか?
真上がピリオノートや開拓地って事は無いだろう。
ピリオノート地下はワイズラット族の街があるはずだし、他プレイヤーの開拓地の真下に爆弾のような敵対NPCのアジトを置くとは考えにくい。
拉致されて現在位置が分からないプレイヤーを送り込むには、あまりにも他に迷惑がかかるリスクが高いからな。
(どうやってぶち抜く?)
(相棒の【土魔法】とか【石魔法】とかで支えを無くして落とす、とかかな……)
(【火魔法】で爆破は?)
(どう爆破したら天井落ちるかピンとこないから自信無いかなー)
(オッケー)
それなら……そうだな、ボスの真上の天井を落とすとして、落とす部分をくり抜くように溝を作るイメージにしよう。属性は土か? 石か? ……両方使っておいた方が無難だな。
「……【ダブルクリエイト】」
── ズ ッ ……
頭上から、硬いものが割れてズレる音がした。
「全員下がれ!!」
「下がってー!」
「「「「!!」」」」
俺とネビュラとオバケ達が、一斉にボス猛禽から距離を取る。
ボールライトニングに気を取られていた猛禽は反応が遅れた。
困惑する猛禽は、上を見上げるキーナを見て、一拍遅れて天井を振り仰いだ。
見えた時には、そのクチバシに天井だった物がぶつかる寸前だ。
「──ッ!!??」
響く轟音。
降り注ぐ、岩と土の塊。
直撃した猛禽オバケは、あっという間に土煙に飲み込まれて姿が見えなくなる。
「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!」
「ギャー!!」
「ウワー!!」
「うおおおおお!?」
「無茶苦茶だぁー!!」
「生き埋めはご勘弁ー!!」
崩れ落ちる破壊音の合間に響く、キーナとオバケ達の悲鳴。
そんなパニックの中で、魔法を唱える俺の横を慌てて逃げていく数匹のミミック。いたのかよ。
俺は部屋が完全に埋まらないように【土魔法】で土砂を逃がし、安全地帯を作っていた。
それなりに深い所の部屋だったのか、落ちてくる石と土がそれなりに多かったな……
パラパラと落ちてくる土砂が止まり……うっすらと日の光が差し込んだ。
「……んーと、混ぜたほうがいいかな? ……【ダブルクリエイト】」
パニックが落ち着いたキーナの魔法。
降り注いだ土砂で酷い有様の部屋の中に、メキメキと暗い色合いの木が生えた。
「光がイヤなオバケちゃん達おいでー、とりあえず日除け作ったから」
呆然と崩壊後の天井を見ていたオバケ達は、我に返ったようにのそのそと木陰に集まってくる。
……そこへ、中央の土砂の山が蠢いて、ボスの猛禽オバケが息も絶え絶えな様子で這い出てきた。
「おのれ……ぁ、あぁ……アアアアアッ……!」
日の光がトドメになったんだろう、色んなモノが混ざって出来たような猛禽のオバケは……光の中で、ゆっくりと輪郭が溶けて消えていった。
「……勝った?」
「……たぶん?」
キーナとオバケ達が顔を見合わせる中、その肩に乗ったフッシーがバサリと翼を広げた。
「うむ、まさに完全勝利というものよ! これにて、一件落着!」
「「「「「オオオー!!」」」」」
高々と告げられた勝利宣言に、大量のオバケ達はワッと沸き立ち、イエーイ!イエーイ!とハイタッチをし始める。ミミックまで混ざってハイタッチしてるのは何でだよ。
そんな賑やかな様子を見ながら……俺はとりあえずキーナの近くへ寄って、その肩を抱きしめた。
「はー……補充補充……」
「うん、来てくれてありがとうね」
「いいよ……そんな事より」
「うん?」
「……何がどうなってこんな事になってたのか教えて」
なんなんだこのオバケの大群は。
百鬼夜行かよ。