軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:ログインしてビックリ

ログインしました!

よっしゃー! 相棒と2人で誘拐犯のアジトをぶっ潰してやんよー!

……なんて意気込んで起床したのも束の間。

目が覚めたのは、どう見ても地下牢って感じの、壁の一箇所が鉄格子になってる石造り部屋。

そこに……僕ひとり。

「……あれ? 相棒?」

相棒が……いない!?

「んんんんんんん~~……」

よし、落ち着け僕。

ビークール、ビークール。

ちょっと怖いけど、大丈夫、学習した。ハロウィンパレードの時みたいなパニックは起こしませんことよ?

まずは落ち着いて状況確認。

えー、森女姿の僕は現在、手足を縛られた状態で地下牢の床に転がされている。両手は後ろ手。

寝返り打つようにして大して広くない牢の中を確認するけど……青白いロウソク?にゆらゆらと照らされてる牢屋に僕以外の人影は無かった。

うん、相棒いないね。僕ひとりだ。

次に、システムウィンドウを開く。

ゲーム内でどんな状態でも、システムウィンドウは開ける。システム関係だからね。開けないと緊急時に困るから。

……うん、エラーとか家族VR機器の緊急通知は特に無し。

って事は……ログインはしてるけど、別の場所にいる可能性が大!

(相棒〜、どこ〜?)

ダメ元で念話。

装備はそのままだからテレパスイヤーカフスもあるし、ワンチャンいけないかなー?って。

(…………)

うん、いけなかった。

……わー!? なんでー!? なんでぇええええ!?

相棒がいなぁあああい!!

え、つまり何?

拉致されてから、僕ら別々の場所に運ばれた!? なんてこった!

ええい! 僕らがニコイチにおいて最強と知っての狼藉か!? 知っての狼藉なんだろうなー! ヤダー!!

そんな感じに1人でジタバタしていると、複数人の足音が近付いてくるのが聞こえた。

そうだ、状況説明NPCが来るって言ってたっけ。

たぶんアレでしょ、『ククク……良いザマだな』とか見下してきて、『お前はこれから〇〇の生贄になるのだ』とか自慢げに言って、『助けを求めようとしても無駄だぞ』からの部屋の仕様を教えてくれる感じ。説明乙です。

なんて思って待っていると……鉄格子の向こう側に、骨の籠をいくつか身に付けたローブ姿がやってきた。

うん、僕が運ばれる先は死霊魔法使い達の所だよね。そんな気はしてたよ。

ローブ達の数は8人くらい。

……多くない?

いや、お付きを引き連れて偉いんだぞアピールしてるパターンかな?

ぞろぞろとやってきた集団のうち、1番ローブの装飾が派手な禿頭しかめっ面の男が口を開いた。

「コイツか」

「はい、間違いなく」

男は忌々しそうな様子で僕を見下ろす。

「貴様が【死霊魔法】を世に広めたらしいな。どうやって我らの秘伝を盗んだ! 言え!」

……あ、この人達って、僕がこの人達から技術を盗んだと思ってるんだ?

全然そんな事ないんだけどなー、ただの思い付きがビンゴしただけで。

……でも、返事したくないなー。今って、声変わりシロップの効果切れてるから、こいつらに声聞かれたくない。

僕の沈黙をどう捉えたのか、禿頭の男は「フン」と鼻を鳴らしてふんぞり返った。

「だんまりか? ならば言いたくなるようにしてやろう」

そう言うと、男は自分の籠から大きな蛇のオバケを呼び出した。

あ、かわいい〜。

鱗の一部がたてがみみたいに逆立ってる。エリマキトカゲみたいで愛嬌があるね。

蛇オバケちゃんはめんどくさそうにズルズルと鉄格子の隙間から僕の方へとやって来て、グルリと僕の体に巻き付いた。

リアルだったら命の危機を感じる所だけど、ゲームだったらこんなゆっくり巻き付いてくるのはただのご褒美だよ。

「蛇ちゃん、かわいいねぇ」

ついつい蛇オバケちゃんにだけ聞こえる声量で言うと、ちょっと驚いたあとドヤ顔をして、巻き付く強さを少しだけ緩めてくれた。かわいい〜。なんとなく エフォ(EFO) では蛇と縁が多くて嬉しいね。

この子だったら伝言してくれるかな?

蛇オバケちゃんにだけ聞こえる小声で話しかけてみよう。

「蛇ちゃん、僕ね、声が変化するお薬飲んでないと知らないヒトとおしゃべりしたくないんだよね。よかったらあの人達に伝えてもらえる?」

蛇オバケちゃんはなーんだって雰囲気で頷いた。

「ご主人様」

「なんだ」

「この者は、声を変える薬があれば話をすると申しております」

「…………」

男は一瞬ヒクッと顔を引き攣らせたけど、部下っぽい周りのヒトを顎で使って、声変わりシロップを持ってこさせた。

変装ロールプレイを尊重してくれる流れ、とても助かります、ありがとう。

鉄格子の中に投げ込まれたそれを蛇オバケちゃんがキャッチ、器用に蓋を開けて、僕に飲ませてくれた。

「お手数おかけしまして」

「まったくだ。……では質問に答えてもらうぞ。貴様、どうやって我らの秘伝を盗み取った!」

「別に盗んでないよ」

「嘘を付くな! そうでなければ骨で籠を作り、そこへ魂を招こう等と考えつくはずがない!」

「え、まさか自分達のアイデアが他の誰にも思いつけないとか思ってたの? 人類どれだけいると思ってるの? アイデア被りなんて世の中でいくらでも発生する事じゃん?」

お前は何を言っているんだ……

恫喝された内容にビックリして逆に聞き返しちゃったよ。

え、だって、骨で鳥籠を作るとか、創作ファンタジー界隈ではそこまで珍しい話じゃないと思うけどなー? まぁこの世界では違ったのかもしれないけど。

「こちとら肋骨が鳥籠っぽいなーと思って作って、鳥籠なんだから誰か住むかなーと思って住人お招きしたら、骨の持ち主が来たってだけだよ? 今まで誰も思いつかなかったにしても、今回がそうだったってだけでしょ。……てか、そもそも使う刻印がそっちと僕とで全然違うじゃん」

「そこもだ! 貴様、まるで我らへの当てつけのように『捕縛』も『隷属』も使わぬなど……!」

「気の合いそうな子が来てくれたんだから、大事にしようと思っただけですが何か?」

すーごい噛み合わない!

本当に真逆の方向性から【死霊魔法】に着地してるんだね。

僕の返答に、男はどんどんヒートアップして鉄格子をガシャンと殴りつけた。

「ふざけるな! 【死霊魔法】とは、魂を統べるべき者が持ち得る偉大な能力! 全ての霊魂が平伏すべき不死の王へと至る資格なのだ! 全ての魂は我らが奴隷!! そのように甘っちょろい 志(こころざ) しで扱う事が許されるモノではない!!」

「……そんな扱いしてるから、ちょっと籠無効にしただけでオバケにボコボコにされるんじゃないの?」

「我らが伝統の術を愚弄するか!!」

「いや別に、伝統とか風習とかを否定するつもりはさらさらないんだけどさ……何かを積み上げるために誰かを踏みつけて土台にしたら、踏みつけられた誰かがそれを拒否した時に全部崩れるのは当たり前の事でしょうよ」

って、僕は思うんだけどね。

他はどうだか知らないけど、少なくとも僕だったら、隷属させられてた相手に解放後も従うなんてまっぴらごめんだよ。

そんな風に呆れてやり取りをしていたら、禿頭男は顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。

「黙れ黙れ! 黙れぇええええ!! 貴様は許さぬ! ここで悔いる時間も与えはせんわ! 今すぐにその命、我らが道具に変えてくれる!!」

あ、いかん。ちょっと脳直で会話しすぎた。

トークスキルの低い僕が売り言葉に買い言葉で返してたら、牢屋の脱出チャレンジが無しになっちゃったよ。なんてこった。

鉄格子の扉が開けられて、僕に巻き付いてる蛇オバケちゃんが、そのまま僕を持ち上げて移動を始めた。

ログイン前の作戦会議が完全に無意味になりましたねぇ〜。

……まぁいっか。

そもそも駆け引きとか得意じゃないから、こうなるのは必然だっただろうし。もしも儀式されるなら試してみたい事もあったしね。

大人しくこのまま、魔法陣の部屋まで運ばれることにしよう。