軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:仮面フリーマーケット、完売御礼!

色んな意味で『ないわ~』って感想しか出てこないナンパ野郎は引きずられて視界から消えた。

はぁ……

僕は溜息をひとつ吐いて、ナンパ野郎の存在を記憶から消す。

顔も体も見えない上に、声出してないから話もしてない以上性格に惹かれたって可能性も皆無。

つまり『女だったら何でもいい』みたいな輩に割く脳細胞は無いよ!

……相棒がヤキモチ妬いてくれたのは嬉しかったけどね。

でも相棒、怒ってたから。

愛する相棒に不愉快な想いはしてほしくないから、やっぱりあーいうのはノーセンキューだよ。

* * *

なんだかんだ、用意した物は良い感じに売れていった。

箒は魔法使いっぽい女の子が買っていくし、刻印付きのアクセサリー装備は男女問わず初心者っぽい雰囲気の人が喜んで買っていく。

相棒お手製の御香は、お客さんの一人が感極まったみたいに捧げ持って、全部まとめて買っていった。なんだろう、睡眠に困ってるNPCでもいたのかな。

そして今は、なんでか職人っぽい集団が大挙して押し寄せている。

「うおおお! 本当に【刻印】の本じゃあああ!」

「写本なんて作って良かったのかよおおお!」

「木材! 木材を売ってくれ!」

「こっちにも木材お願いします!」

「【転写】ってなんだよ初めて聞いたわ!」

すごい、本当に相棒の言った通りだ。

めっちゃ喜ばれてる。

これで【刻印】使える職人が増えて、ゲーム全体の装備の質が一段上がったらいいよね。

僕らだって行きつけの店の装備の品質が上がったら嬉しい。

とりあえず、相棒が言ってた『ゴツいドワーフのオッサンとかがこの本で【刻印】の勉強する』っていうのは現実になりそう。

そして思った以上に 微睡(まどろみ) の森の木材が売れる。

まぁ職人さんだし、珍しい素材はやっぱり確保しておきたいのかな。

そのうち露店広場とかで加工後の品物が見られるかもしれないね。

* * *

店を始めてから相棒は後ろで演奏しててくれてるけど、会場で楽器を演奏してるのは別に相棒だけじゃない。

転移地点の近くには大道芸みたいなことしてる人もいたし、その中に演奏してる人もいた。時々演奏しながら通路を歩いて周ってる人もいる。

それでもまぁ、住み分けみたいになってるのかな、と思っていたら。何故かワラワラと集まってきた楽器の演奏集団が相棒と突発セッションを始めた。

太鼓とラッパとリュートとハープとカスタネットとマラカス。あとは名前を知らない楽器。

最後にオペラ歌手みたいに歌う人がタイミング計ってたみたいに入ってきた。

……ゲームのバードっぽい装備してたらものすごくファンタジーな光景が見られたんだろうなぁ。

今は全員ショ◯カーだけど。

でも匿名じゃないと相棒は乗っかっていかなかっただろうから、やっぱりこれで良かったね。

ちなみに僕は演奏の輪には入れません。

……僕のリズム感はね、致命的に死滅しているもんで。

イイ感じに盛り上がった集団は、僕の作ったリュートをお買い上げして、イイ感じに解散していった。

まいどどーも。オマケにリンゴでも持ってってくださいな。

* * *

はー、楽しかった!

のんびり店を楽しんで、リアルはそろそろ寝る時間。

なんと売り物はリンゴを残して全部売れたよ!

やったね!

リンゴだって売れなかったわけじゃない。リンゴだけ買っていく人はそこそこいた。

ただ、客寄せのガチャポジションに置いて一人一個って制限をつけたから残っただけだね。

つまりは、ほぼ完売よぉ!

商人の才能が無いにしてはよくやったと思う。

ってことは、もう店を広げてる意味はあんまり無いんだよね。

そろそろ帰ろうか。

立ち上がって、相棒と一緒に店仕舞いを始める。

……すると、ススススッて近寄ってくる集団がいた。

「もしや、店仕舞いをされておられますか?」

……危ない、うっかり声で返事しそうになった。

こくりと頷く。

「ならばそのリンゴ、全てこちらで買い取りさせていただく事はできませんか?」

え、Tipsのガチャリンゴ?

そんな欲しいのこれ?

まぁ面白いけども。

リンゴと説明書を一緒に見せて首を傾げれば、集団は揃ってコクコク頷いた。

そこで僕はハッと閃いた。

……もしかしてこの人達、ガチャ中毒なのでは!?

ソシャゲガチャに課金しすぎて家族とかに怒られてMMOにやってきて。それでもガチャへの欲求を抑えきれずにこんな雑学リンゴガチャで欲望を満たそうとしているのでは!?

せ、切なぁ〜い!

なんて悲しいモンスターだ!

この推理は僕ちょっと自信がありますよ。

まぁゲーム内マネーで済むなら健全な解消の仕方なのかな? そういう事ならご協力しようじゃないか!

リンゴで救われる家計があるならね、安いもんよ。

籠ごとリンゴを渡すと、集団は「ありがとうございます!」と声を揃えて何故か僕らを拝み始めた。

なんでさ。

別に僕達ガチャの神様でもリンゴの神様でもないよ。

* * *

さっくり拠点に帰ってきて、黒マントを脱いでホッと一息。

「お疲れー!」

「うん、お疲れ」

「なんと完売です!」

「売れたなぁー」

「最後のガチャ中毒の人達も満足できるといいねぇ」

「うん……うん?」

「で、明日はお買い物だね! 軍資金はバッチリだよ!」

「そだね」