軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:二杖流のススメ

「素晴らしい素材ですね」

「素材?」

「そうです。この 微睡(まどろみ) の木が杖に向いている。なのでスキルが低めの手慰みでもそれなりの仕様になっている感じかと」

「おおー、なるほど……適当に拾った枝の方が強くて、初期杖が1回も使わないままお蔵入りしましたからね」

「ご無体な」

「そしてその枝を改造したのが今の杖です」

「実質初期武器じゃないですかー!」

オーダーメイドのためのヒアリングにて。

今使っている自作の杖は製作者名が入っちゃってるから……代わりに仕様が近い製作者名無しの箒を見せて説明すると、シカディアーさんはまた五体投地してジタバタと感情のままに荒ぶった。

シカディアーさん面白いなぁ。

「よいしょっと……では、今回のオーダーメイドで具体的なご希望はありますか?」

「んー、そう言われると割とノープラン……かも? 変わった結晶とか入手したんでそれ使えるかなーとか……あと【死霊魔法】を使うから籠は付いてて欲しくて……あ、それから空を飛ぶから箒っぽくもなってて欲しい? ……でも、どんな杖がどんな戦い方に向いてるのかよく分かんないんですよね」

僕のふわっとした内容を聞くと、シカディアーさんは慣れた様子で頷いた。

「では、そうですね……杖を使う戦い方をザックリ分けましょう。『杖で殴って戦うスタイル』と『杖は持つだけで魔法で戦うスタイル』と『杖で殴りながら魔法も使うスタイル』、どれが一番近いですか?」

「あ、武器で殴ったりは全然しないです。魔法オンリー」

「魔法オンリーですね。じゃあ魔法オンリーのプレイヤーが使う武器について軽く説明します」

おお、助かる。

何が出来るのかもよく分かってないからね。

「まず魔法使いの武器には『魔攻』と『魔防』があります。これはそのまま、魔法を使った時の威力や魔法を受けた時の防御力に加算されます。そして使う素材や仕様によって、これ以外の要素がさらに加えられます」

うんうん、僕は改めて自分の杖を見る。

【 微睡(まどろみ) の 魂籠(たまかご) 杖・S】…魔攻+12、魔防+2、死霊魔法威力+3

微睡(まどろみ) の森の木の枝に、魂を入れる籠を付けた杖。

籠に入れた魂の力を借りることができる。

製作者:キーナ

『死霊術威力』が追加されてるね。

でもこれは、枝だった時には付いてなかったから……オバケを入れる籠を付けた事による効果かな?

そう言うと、シカディアーさんは「その通りです」と頷いた。

「魔法使いは、自分がメインで使う魔法を強くするために、武器にもそういう効果を求めるのが分かりやすい強化の方法です」

「ふむふむ、分かりやすい」

「そうです、分かりやすく行きましょう。では次に、分かりやすい属性魔法について。……森女さんは、属性魔法は使用しますか?」

「まぁそれなりに」

「まぁ召喚だけに絞ったサモナーでもなければ使いますよね」

1人……【星魔法】を覚える事で他の属性魔法が使えなくなったアルネブさんを知ってるけど、黙っておく。

「属性の素材を使えば、属性は割と簡単に付きます。ただ、相反する属性を同時には付けられません」

「相反する属性って……光と闇とかです?」

「そうです。あとは火に対して水と氷、それから風と雷は土と石が相反属性です」

「……無関係な光と水とかなら一緒に付けられるんですか?」

「そういう事です。素材さえ揃えば相反していない属性は複数付けるのは割と簡単です。ただ、火属性だけは光よりらしいので、闇とは一緒にしない方が良いですが」

「「へぇー」」

あぁ、結晶とか魔石っぽいのがいくつも杖に付いてる魔法職をちらほら見るのはそういう事かぁ。

「じゃあ……例えば【火魔法】と【水魔法】が得意だったら、どっちかしか強化出来ないんですね」

「と、思うでしょう? 抜け道があるんですよ」

「ほほう?」

その抜け道とは?

ドヤ顔っぽい声のシカディアーさんを促すと、「慌てないで下さい」とニヒルな笑みが返ってきた。口元しか見えないけど。

「近接武器で例えます。大剣で敵を斬る場合、大剣の威力が加算されますね?」

「ですね」

「では、大剣を背中に背負った状態で短剣で敵を斬ったら……それは大剣の威力は乗りませんね?」

「ですね」

「魔法と杖でもそれと同じ事が起きます」

「……えっ……つまり、杖を2本使う?」

「そうです。つまり、二刀流ならぬ二杖流!」

「なにそれカッコいい!」

なるほどー!

片方の杖に光と火と風を付与して、もう片方の杖に闇と水と土を付与するー、みたいな事が出来るわけだね!

まぁ闇と光は両方持つ意味あんまり無いかもだけど。

「ただし、これにはひとつ欠点があります」

「はて?」

「使い手の意識に負担が増えるんですよ。魔法を使う時に魔法をイメージするじゃないですか。その時に……いちいちどっちの杖を使うかのイメージを追加しないといけなくなります」

「あー……それは……」

「……人を選びそうですね」

「その通り。登録しちゃえばいいんですけど……咄嗟の応用の難易度は間違いなく上がりますので、イメージが苦手な人にはお勧めしません」

なるほどねぇ、一長一短だなぁ。

「以上を踏まえて、属性をどうするかで武器のイメージも変わると思うんですよね。二杖流がいいってなると、形をセットにするかどうかって話にもなるじゃないですか」

「ですねぇ……」

魔法用武器のオーダーメイド……奥が深いね!