軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:冬イベントの終了

ログインまだです。

年越し花火を見て、その次のログインで、僕らはお年玉を受け取った。

内容はちょっとしたリリーと、お手紙。

思った通り、差出人は魔術師団長さん。

……ただ、その手紙が問題だった。

「……むぇ〜?」

「どうした?」

「めっちゃ注意喚起」

「どんな?」

「……なんか、『本国の方で取り締まり対象になって逃げてる悪い死霊魔法使い達が、よろしくないヒトの手引きでこっちに来てるっぽい』って」

「うわ」

「だから……『逆恨みで狙われるかもしれないから気を付けろ』って」

「ああ、うん。それは狙われるやつ」

「ですよねぇ〜」

大霊廟の時といい、なんて迷惑極まりないやつらなんだ!

「……まぁ、気を付けるも何も、俺達の拠点はたぶん来られないだろうけどな」

「まぁね。……相棒のお年玉はどんな?」

「俺のは、『仕事頼むかも』って来てるから……それこそこっちに来た敵対NPC関係のクエストが来るかもしれない」

「あー、ありそう」

隠密できるタイプは確かにそういう依頼来るかもしれない。

お年玉がそんな内容だったから、しばらくお出かけは変装無しで、ピリオノートに行っても露店広場で買い物する程度にしていた。

だからなのか、今のところ僕はなんともないんだけど……

「石板NPCが襲われたらしいよ」

「え、あのお爺ちゃん?」

「そう」

誰かのお年玉で注意喚起されてたNPCが、ちょっとの間を狙って襲われたんだって。

死にはしなかったみたいだけど、あとひとつふたつで完成しそうだった石板が奪われた。

「NPCが言うには……吸血鬼を崇拝するカルトの仕業らしい」

「ん? 死霊魔法使いじゃないんだ?」

「違う」

「別件かぁ〜……悪い集団、こっちに来すぎでは?」

「それな」

そんな不安もありつつ、お正月が終わったあたりで冬イベントも終了。

フランゴ君懐柔チャレンジは、仕様が仕様だから後半失速していたけど、戦闘勢が職人のパーティに参加したりして、期間内に必要数に到達していた。

『良いか! オレ様は決して美味い飯に釣られたわけではないぞ! お前達ヒト族の力をある程度認め、滅びを消耗させる罠として使うだけだ! 断じて絆されたわけではないと脳に刻んでおけ!』

動画化されたノルマ達成時の挑戦者達は、フランゴ君のツンデレめいた言葉に生温かい表情を向けていた。

「すごい絆されてるじゃんね」

「ツンデレかよ」

相棒による滅びの耐性アップチャレンジも何回かやって、フランゴ君が『それなりに強くなった気がする』って言ってたらしいから、たぶん効果はあったでしょう。

イベント終了後は、フランゴ君は他の天使達と同じ天界に行くんだって。ラウラさんの拠点のあたりなのかな? もしかしたら会いに行けるかもしれないね。

「……そういえば、もう冬イベント終わるけど」

「うん?」

「あんまり雪関係のイベントは観光に行かなかったけど、良かったの?」

「んー? 雪は……まぁ大して珍しくないし……」

リアルは雪の多い地域に在住だしね。

「雪像とかより、ファンタジーな街並みの雪化粧の方が好きかな」

「そうか」

そんな感じで冬イベント終了の今日。

公式ムービーが出たので、ログイン前に雄夜と一緒に視聴する事に。

ソファに並んでくっついて座り、肩を抱かれて幸せを味わいながらタブレットで動画を開く。

ムービースタート。

……画面は、不穏なBGMが流れる中、天使になったフランゴ君をチラ見するような映像から始まった。

──『アレを手懐けた所で、何が変わるわけでもない』

けれど、声は聞き覚えのない男性の物。

フランゴ君のとは違う声で、誰かが語っている。

──『ヒトは愚かな存在だ。ほんの少し、それを煽ってやれば……相応しく自滅し“破滅”する』

誰かの語りを流しながら、映像は次々と切り替わる。

どこかの豪華な部屋で、ニヤリと笑ってワイングラスを傾ける口元のアップ。

夜の荒野を駆けていく、大荷物を抱えた集団らしき影。

襲いかかる肉食獣を手下のアンデッドで撃退する、腰に小さな籠を吊るした魔法使い達。

──『お前達は、我らが手を下さずとも、自らの首を絞めて滅びるのだ』

どこかの暗い空間でたくさんのロウソクを灯し、組み合わせた石板の前で祈るローブ姿の人々。

……そして石板の奥から、従魔が進化する時と同じ光の輪に包まれながらゆっくりと立ち上がったのは、コウモリのような翼を持つ人影。

アップになった口元に、長い犬歯がぬらりと煌めいた。

……そこへ、突然別の声が割り込む。

──『“混沌”の手助けは必要かい?』

切り替わった映像。

手前に一部だけ見切れて映る、見たことのない滅びの使徒と、奥に黒いマントで全身を覆った誰かの姿。

深いフードの下から、嗤う口元だけが覗いている。

手前の使徒は、ガラス玉のような目を細めて言った。

──『私の“破滅”にお前は必要ない。失せろ』

言われた黒マントは、僅かに肩をすくめた。

──『それは残念』

そして黒マントの姿はかき消える。

後に残った使徒は、舌打ちをひとつして忌々しそうに眉間に皺を寄せた。

──『……手助けだと? 引っ掻き回すの間違いだろうが』

……そして最後に、 エフォ(EFO) のロゴが表示されてムービーは終わった。

「意外ー! 知らない使徒出てきたね。てっきり次はフランゴ君を不意打ちした使徒がメインなんだと思ってた」

「……ああ、うん」

「なんかあった?」

「……使徒の後ろにいた黒マント、アイツも関わって来るんだろうなーって」

「あー……」

これは僕だけじゃなく相棒も狙われたりするのかもしれないね。

あの黒マントの目的、さっぱりわかんないけど!