軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:スライムハウスの大パニック

オヤスモースライムを抱えて湿気の多い洞窟に入ると、門番役をしていたラージモススライムの姿が消えた。

……つまり、このスライムの巣はダンジョン扱いなんだろう。

もしかしたらあの門番スライムも、俺達のクエスト専用で一時的にいたスライムだったのかもしれない。スライム情報サイトに何も書いてなかったしな。

先へ進むと……チラホラとモススライム達の姿が見え始めた。

天井を覆う木の根の隙間から差し込む僅かな光で、洞窟内はうっすらと明るく、そこら中に苔が生えている。

その苔とそっくりな色のスライムが、暗がりに隠れるようにジッとしたまま俺達に視線だけを送っていた。

エフォ(EFO) のモンスターは、フィールドとダンジョン内とで、アクティブとノンアクティブが逆になる場合が多々あるってどっかで見た記憶がある。

もしかしたらここのスライムも、今はクエスト仕様のマップになっているだけで、普段は襲いかかって来るのかもしれない。

警戒混じりにジッと見てくるモススライム達へ、オヤスモースライムに頼んで敵意が無い事を伝えて貰う。

……すると、その中のモススライムが1匹、『ああん?』みたいにオラついた雰囲気で俺達ににじり寄ってきた。

(なんだなんだ……?)

(……『敵じゃないなら何しに来やがったんだぁ?』とか?)

(あぁ……)

静かな見た目に反して、意外と血の気が多いな……

キーナはインベントリから、預かっていたチェンジリング被害者のスライム卵を取り出した。

「この子を親の所へ返しに来たんだけど……」

「モォー」

モススライムは卵を見て目を見開き、オヤスモースライムの鳴き声を聞くと、驚いたようにピョンと跳ねた。

そして卵とオヤスモースライムを引っ掴むと、大慌てで洞窟の奥に走っていく。

「え、ちょ、待ってー!? うちのこ連れて行かないでー!?」

「追いかけるかぁ」

後を追って駆け出す俺達。

そんな俺達を囲んで走り出す他のモススライム。

スライムが大して速くないから、キーナは俺が手を引くだけでなんとか速さに追いつけた。

ドタドタと奥へ走り、俺達を見て慌てて隠れるスライムや、立ち塞がってみたものの仲間のはずのスライムに跳ね飛ばされて吹っ飛ぶスライムなんかを横目に見ながら……俺達は目的地だと思われる広場に到着した。

陽の光が一筋差し込む、水の流れる音が微かに聞こえる場所。

そこには、深皿のような形になって鳥の巣のように卵を何個も包んでいるスライムが何匹かいた。

「プニプニプニョー! プニプニプニョー!」

先頭を走っていたスライムが、広場のスライムに呼びかけるようにして、俺達が持ち込んだ卵と、虚無の顔になっているオヤスモースライムを掲げて見せた。

「プニィイイ!?」

「プリャニョプルルプニョピー!!」

「プニラプニラ!」

「プニャー!?」

途端、卵を抱いていたスライム達が大騒ぎしながら集まってくる。

そして泡を食ったように自分達の持つ卵と持ち込まれた卵を必死に見比べているようだ。

……だが。

(……あれ? 違う卵、無くない?)

(……だよな?)

豆ニワトリの巣箱に托卵されて気付かれなかったって事は、少なくとも鶏卵に似た形をしていると思っていた。

だが、スライム達が抱いていた卵はどれもこれもスライムの卵に見える。

スライム達も、違いがわからないのか徐々に途方に暮れ始めた。

ああ、もしかして……

「相棒。【解析】とかで、違い見えたりしない?」

「あ、やってみよっか」

【解析】を起動したキーナが、親スライム達の所に近付いていく。

親スライム達は一瞬ビクリと震えたが、オヤスモースライムが持ち上げられたまま「モォー」と鳴くと、プルプルと震えはするが逃げたりはしなかった。

「……たぶん、コレかな?」

キーナがひとつの卵を指す。

その卵を載せていた親スライムは、恐る恐るその卵を地面に置いて軽く転がした。

卵はコロコロと洞窟の地面を転がり……適当な窪みで止まる。

しばらく沈黙と困惑の視線が卵に集まり、スライムの洞窟は緊張に包まれた。

そして……

その卵が、塗料を流し落としたように、スライムの卵の見た目から銀色の玉のような見た目へと変化した。

「「「「「「「プニャアアアアアアアア!!??」」」」」」」

スライム達の悲鳴が洞窟に響き渡る。

卵を載せている親スライムは、ひとまとめに身を寄せ合ったまま壁際までザザザザッと下がった。

何匹かのスライムはパニックを起こして走り回り。

さらに何匹かのスライムは動かない卵へ向かって威嚇のつもりなのか体を大きく広げていたり。

ついでに少数のスライムは気絶したのかペちゃりと地面に伸びて広がった。

(いま脳内で、コントで大変な事になってる時の曲が流れてる)

(わかる)

最終的に、托卵されていた卵は勇気あるスライムによって俺に押し付けられ……そのまま俺達は一丸となったスライム達によって洞窟の外へと押し出された。

「プニラッ!」

ついでに苔の塊のような物を投げ?つけられる。

【デリシャスゴケ】…品質★★

綺麗な水を浴びて育った、ミネラル豊富で美味しいコケ。

モススライムの好物。

……これは一応、お礼なんだろうか。

そして門番をしていたラージモススライムが、神妙にお辞儀のような動きをしてから洞窟内へ消えていったのを合図にしたように、システムメッセージが表示された。

──クエスト『迷惑チェンジの迷子托卵』をクリアしました。

「……終わった、ね?」

「……終わったなぁ」

まぁ、卵が無事に返せたからよしとしよう……

そう思いながら、俺は押し付けられた托卵の卵を確認した。

擬態が解けたからか、名前と仕様が浮かび上がってくる……

【ミミックの卵】

ミミックの卵。

卵を持つ親の生き物のそばにあると、その親が産んだ卵に擬態する。

……は?