作品タイトル不明
キ:ちょっと通りますよ
ダンジョン扱いとはいえ、こんなに綺麗な宮殿なんだからゆっくり見て回りたいのはやまやまだけど。
「まずは妖精女王様に会った方がいいよね?」
「まぁ家主だしなぁ」
わざわざ場所も教えてもらったしね。
というわけで、僕と相棒は赤い花の咲いている扉の前へ。
ただ、ボスがいるって話だったから、小さな扉をそーっと開けて隙間から中の様子を窺った。
(あー、いるねぇ。なんかでっかい亀? ドラゴン? みたいなの)
(亀っぽいドラゴンか)
広い部屋の奥には僕らから見ても大きめの扉があって、その扉を守るみたいにしてゴツい甲羅のあるドラゴンがデーンと鎮座していた。
ラージトータスドラゴン Lv65
最近出会ったボスと比べるとレベルは低めだけど、どう見ても硬くて丈夫そうだし。相棒が調べた所によれば弱点属性以外の魔法は通りが悪いはず。
しかも弱点属性が変化するって話だから、レベルだけで判断すると痛い目を見るやつだね。
(スレで見た抜け道は……アレかな? 扉の横の壁に赤いの見える)
(場所、結構高いな……)
(ネモで坂道でも作ろうか)
(頼んだ。あとは、いつ薬を飲むか……)
(……落ち着いて飲みたいねぇ。慌てたら落としそう)
(じゃあ先に飲むか)
【ミニミニ丸薬】…品質★★★
1粒飲むと、体が小人の大きさになる丸薬。
一定時間経過すると元に戻る。
6粒ある薬を、一粒ずつ飲む。
ゲームだから飲み込んだら効果はすぐ出た。体が縮んで、僕らは小人サイズになる。
(装備も一緒に縮んで良かったね)
(それはそう)
装備のサイズに関してはゆるいゲームで安心。
この身体の大きさなら小さな扉も普通に潜れる。ただし歩幅が小さいから、走って目的の壁までたどり着くには距離がある。
というわけで相談の結果……僕は霊体状態になり、相棒に後ろから抱き着いて連れて行って貰うことにした。
「……【モルテム】」
相棒とネビュラが同化する。これで相棒の俊敏が大変な事になる。そこへオバケの僕が後ろから首に抱きつく。
そして……扉の隙間から、2人で亀ドラゴンに向かって魔法を唱えた。
「【ダークネスクリエイト】」
「【サモンネクロマンス:ポルターガイスト】」
相棒の闇で亀の周りを暗くするのと同時に、僕が呼んだポルターガイストちゃん達が反対側の壁でガンガンと音を立てて囮になってもらう。
……隙のなさそうな門番の亀さんに【だーれだ?】とか効く気がしなかったからね。今回の目隠しは相棒の【闇魔法】です。
発動と同時にネモを呼び、入口から抜け道まで壁に沿った長いスロープになってもらう。
そして、僕は相棒に取り憑く完全お任せバフ状態。
この体勢が完成するのと同時に、相棒は僕をくっつけたまま部屋に飛び込んで全力ダッシュ!
(一応【隠密】してるからじっとしてて)
(イエッサー)
速ぁあああい!!
すごい速さで部屋を横切る相棒。かっこいいー!
横目で亀ドラゴンを確認すると……その甲羅の色がなんだか白い色に変化していく。
甲羅が綺麗な純白になると、亀の周りにポワポワした光が現れて……目眩ましの闇が相殺された!
(目隠し消えた! こっち向いたよ!)
(マジかよ!)
今いる所はまだ半分!
僕は咄嗟にしがみついたまま取り憑きバフ状態を解除した。
「【だーれだ?】!!」
ピョコンと出てきて亀ドラゴンの目を覆い隠したのは、ぷにぷにしてそうなでっかいクラゲのオバケ。
ちょっとでも時間稼ぎになればいい!
なんて思って呼び出したけど……亀ドラゴンは口を動かして何かゴニョゴニョと鳴き声を出した。
……と、同時にクラゲのオバケが消えていった。
((当てた!?))
亀ドラゴンさん正解! スーパーフランゴ君人形獲得!……しないけど! まさか当てると思わなかった!!
え、僕も正解気になる。あのクラゲちゃん、なんて子だったんだろ。
しかし亀ドラゴンは待ってくれない。
再び変化した甲羅の色は青。
パカリと開いた口の中に、ズゴゴゴッと渦巻く大量の水!
「っ! ……【ウィンドクリエイト】!」
【風魔法】で加速した相棒。
その背中にいる僕の背後に、激しくぶち込まれる極太の水鉄砲。
「こっわ!!」
「あと少し!」
バカスカとリズミカルに撃ちこんでくる水を避けながら、相棒は壁の窪みに滑り込んだ。
「隠し通路……扉!」
「【ミラークリエイト】!」
思いっきり窪みに打ち込んできた水鉄砲を僕が【鏡魔法】で打ち返して、その間に相棒が小さな扉を蹴り開けた。
「急げ!」
「わぁああ!」
相棒に引っ張られて、バランスを崩した僕はそのまま抱き込まれて一緒に扉を潜る。
僕らはどうにかこうにか奥の部屋に転がり込んだのだった。