軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:不完全燃焼

……いや、残されても困るが??

俺を庇って死に戻った相棒に、心の中で問いかける。

俺は、同じく生き残った数人のプレイヤー達と同様に、謎の使徒相手に対峙したままだ。

これたぶん負けイベだろ? どうしろと?

生き残っているのは見るからに防御の高そうな装備のプレイヤー数名と、番犬ジョンに庇われていたお嬢様。……ガルガンチュアさんは被ダメ無視して突っ込んでたからか死に戻っている。

……まぁ、負けイベは言い過ぎでも、今戦う場面じゃないと思うんだよなぁ……

俺の立ち位置は他プレイヤーと同様に使徒の視界の中。

迂闊に動いて狙われるのもな……ひとまずは様子見。動きを止めて息を潜めたまま観察を続ける。

他のプレイヤーも同じ考えなのか、突撃していくプレイヤーはいない。

使徒は鼻を鳴らして口を開いた。

「生誕の神だったか……まったく、復活が可能なヒトの子はしぶとくて面倒だ」

この使徒、見た目よりも老獪な雰囲気があるな。

言動が、何千年も存在しているようなキャラクターっぽいような気がする。

……と、ここで俺とネビュラの同化が時間切れで解除された。

ヤベ、動きに反応して使徒がこっちを見た。

……いや、ネビュラを見た。

「……死の精霊。その役目で死を名乗るか……生誕が主神ならばこんなものか。ぬるい、ぬるすぎる」

……なんだ? ネビュラに何か思うところでもあるのか?

緊張した膠着状態……それを打ち破ったのは、【感知】に引っかかるくらい隠れる気も無く走り込んで来た1匹と、それに乗ったひとりのプレイヤーだった。

「てぃやぁあああああー!!!」

森から飛び出して来たのは……うちのニワトリだ!?

走り込んできたダディの背には、夏のイベントで顔を覚えたペンギンデスマッチさんが乗っていた。

「お前かぁあああー! 皆のフランゴ君決戦を邪魔したのはぁあああー!!」

ペンギンデスマッチさんは、勢いのままコケッコの背中から跳躍。

どこぞのライダーよろしく、派手な飛び蹴りで躊躇いなく初見の使徒に突っ込む。

使徒は涼しい顔でそれを避けたが、ペンギンデスマッチさんも避けられる事は想定内だったんだろう。

ブレードの付いたスケート靴のような武器で、格ゲーのように、流れるような連続キックで追撃。

「……煩い」

辟易した顔の使徒が、再びあの言葉を唱えると、再び戦場が沈黙フィールドに包まれた。

……だが。

「……っ! ………!! ……!」

「っ!」

無音の空間で、ペンギンデスマッチさんは連撃の足を止めないまま、難易度の高い踊りのような動きをする。

ブレないステップ。

指先まで整えられた動き。

ペンギンデスマッチさんの体が光に包まれるのと同時に、周囲に氷の槍が数本浮かんでさらに追撃を仕掛ける。

ペンギンデスマッチさん、ダンサースキル持ちか。

なるほど、あれは沈黙に対抗できる手段のひとつなんだな。

呆気にとられていた俺達は、今ならいけると判断してペンギンデスマッチさんの援護を開始。

……すると、使徒は心底面倒くさそうな顔をして、スッと浮上し、空へと退避し……

「……どうせここで死を与えた所で貴様らは終わりはするまい。精々終わりの時まで生き足掻くが良いわ」

そう言い残して、使徒はあっさりと消えていった……

「……!? ーっ!! ーっーっ!!!」

後には脱力する面々と……消えた空に向かって地団駄を踏みながらキレ散らかすペンギンデスマッチさんが残った。

* * *

「……って感じで終わった」

「そっかー、お疲れー」

フランゴ戦の、大結晶の現場とモロキュウ村、そしてピリオノート。全部の戦闘が終了して……俺達はジャック達を回収し拠点に帰還した。

「なんというか……スッキリしない終わりだったな」

「そうだねぇ。こう……『決着!!』って感じじゃなかったよね。あの新しい使徒が全部持って行った感じ」

「それな」

満を持しての決戦イベントだったのに、フランゴがこう……噛ませすぎるまま終わった感じがする。

プレイヤーがグッズ作ってたりしてるし、それなりに人気あるのにな。あんな扱いしたら苦情が入るんじゃないか?

そう言うと、キーナは宙を見上げて何か考えている顔をした。

「どうした?」

「んー……そういえばさ、ワールドアナウンス入った?」

「ん?」

「フランゴ君倒した時とか、あの使徒が帰った時とか」

「……いや?」

入ってない、な……うん、入ってない。

前に、フランゴが初めて登場した時は入ったのに。

「って事はさ、まだ終わってないんじゃない?」

「……何が?」

「ん〜、何がだろ? フランゴ君、死んじゃったしなぁ……でも、ワールドクエスト進行のアナウンスが出てないって事は、ひと区切りしてないって事なのかなって」

……まぁ、そういう事なのか?

とはいえ、その日はリアルの就寝時間まで特に何も起こらず、俺達は首を傾げながらログアウトしたのだった。